第11話
文字数 1,196文字
……特に明確な答えを見つけたわけじゃないけれど……。
僕はもう一度ヒカリに演技をみてもらうことにした。
……正直、自分だけでは完全に行き詰っている感じがしたからだ。
それから数時間後……。
突然ニコニコと得意げに、ヒカリは何か書かれた紙を渡そうとしてきた。
僕はヒカリが作曲したという歌を歌ってみることにした。
……ところが……。
ヒカリの方に目を向けると、
ヒカリはニヤニヤとこちらの方をみていた。
何度か歌ってはみたものの、やっぱりうまくノリきれない。
僕は一旦歌うのをやめ、どうして歌いづらいのか考えてみることにした。
もう一度歌ってみる僕。
……そうだ。いままでの僕の歌い方は
ただ、歌っている人の真似をしているだけだったんだ。
……何かを……自分の言葉で伝えたいというこころもないのに、
ただメロディーに合わせて声を出しているだけだった……。
自分の中から出てきたものじゃない
外側だけを借りてきた歌い手のコピー……
そう、僕は”自分の歌”というものを……考えたこともなかったんだ。
だから……歌いづらい……。
ううん……歌い方が分からなかったんだ……。
自分らしさのかけらもない……ただの物まね。
それじゃだめだ……。
そう、僕は僕の歌を……。
自分だけの歌い方を……考えなきゃ……。
……つたないながらも一生懸命書いた詞。
そして僕の中から生まれたもの……。
僕は何度も何度も試行錯誤しながら、
時間を忘れて歌の練習をした。
そう、僕は、僕だけの歌を完成させるために……。
……そんなヒカリの声が、聞こえたような気がした。