第1話

文字数 1,603文字

 もりのちかくのおしろに、あかるくてげんきなおひめさまがすんでいました。
 でも、このおひめさまのおとうさんであるおうさまも、おかあさんであるおきさきさまも、はやくになくなってしまい、ひとりぼっちで、とてもまずしいくらしをしていました。
おしろはボロボロで、おかねがないので、けらいたちにきゅうりょうをはらうこともできません。
 おひめさまはなくなったおうさまのかんむりをうったり、じぶんのドレスをうったりしておかねにかえていましたが、ひゃくにんいたけらいは、とうとうたったひとりになってしまいました。
「おひめさま、このままではたべるものもなくなって、おひめさまもしんでしまいます」
 さいごのけらいがないていいました。
 けれど、おひめさまは、
「だいじょうぶよ。こまったときはどうしたらいいか、いっしょうけいめい、あかるくたのしいみらいをかんがえればいいのよ。わたし、ずっとかんがえてるの。そのうち、いいかんがえがみつかるわ」
といいました。そして、のはらからとってきたのいちごのみをどっさりとテーブルのうえにおきました。
「ほら、とってもあまいのよ。あなたもたべるといいわ」
 そういって、のいちごのみをつまむおひめさまのてには、きずやまめがたくさんできていました。

 あるひ、おひめさまがもりにいったときのことでした。
 おひめさまがたきぎにするきのえだをひろっていると、くらいどうくつのなかから、ヒュルーリ、でてきたのは、なんとゆうれい。
「おまえはこんなところでなにをしているー」
 ゆうれいはおそろしいこえでいいました。
 でも、おひめさまはぜんぜんこわくありません。
「たきぎにするかれえだをさがしにきたのよ」
 ゆうれいにもあかるくへんじをします。
「ゆうれいをこわがらぬとはめずらしいむすめだ。それによくみれば、わしににておる」
 ゆうれいがびっくりしていいました。
 ゆうれいのはなしをよくよくきくと、なんと、このゆうれいはおひめさまのごせんぞのゆうれいでした。
 そこで、おひめさまはとてもびんぼうになってこまっていること、どうしたらいいかずっとかんがえていることを、このごせんぞのおうさまゆうれいにつたえました。
「それはこまったのう」
 ごせんぞのおうさまゆうれいがそういったとき、かぜがびゅうううっとふいて、いちまいのはっぱがおうさまゆうれいのからだをとおりぬけました。
「あっ、いいこと、おもいついたわ!」
 おひめさまがおおきなこえをあげました。
「おしろでゆうれいツアーをやるの。ごせんぞのおうさまがゆうれいになってでるの。こわいものがすきっていうひとってけっこういるのよ。それでにゅうじょうりょうをもらうのよ」
 おひめさまはめをかがやかせています。
「おお、それはいいかんがえだ」
 おうさまゆうれいがよろこんでいいました。

おひめさまのおしろのまえにたくさんのひとがならんでいます。
「さあ、みなさん、ちゃんとならんで、ならんで。おしろにはいるまで、あとにじかんまちです」
 おひめさまのけらいがいっています。
 おしろのゆうれいツアーはいまやだいにんき。
 かいがいからもたくさんのひとがやってきます。
 ひゃくにんのけらいたちももとどおり、このしろではたらくことができるようになりました。ツアーにきたおきゃくさんに、のいちごのケーキをうったり、しろをあんないしたり、おおいそがしです。
「もりのどうくつにいるより、うんとたのしいわい」
 ごせんぞのおうさまゆうれいがいいました。
「わたしもたのしいわ。ごせんぞさまのゆうれいもだいにんきだし、このおしろのボロボロさがこわいってひょうばんなのよ」
 おひめさまがのいちごのケーキをつくりながらいいました。
「ボロボロのおしろがやくにたちましたなあ」
 けらいのひとりがいって、みんなでおおわらい。
 そして、おひめさまは、ごせんぞのおうさまゆうれいと、けらいたちとあかるくたのしくくらしました。
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