レビヤタンの物語

文字数 2,369文字

ぶっちゃけたところ、こんな会議になんて来たくなかった。
だって、他の七罪の魔王がワタシよりも魅力的で自分の意思というものを持っているから。
ワタシにはそれが無いから。

「というわけで今日は天使の中で誰が最も愛されているのかの投票を始めるわよー!!!」

この薄紅色の髪ををした見るからに強そうなのは、憤怒の魔王サタンである。

今日は、サタン主催の天使の中で誰が一番愛されているのか。
その次の日、投票で決めると言う、ただの人気投票だ。
まぁ、本当のこと言うとワタシにとってはまったく関係なく無視して良いものである。

だけど、それぐらいならどうだって良い、だけど明日、投票の前に各天使に関する良いところをスピーチをすると言うことだ。
もしできなかった場合、冥府軍の見学に行かないといけなくなる。

サタンやルシファーやベルゼブブは構わなそうだけど、ワタシは絶対に彼らに会うと、仲間同士で楽しそうにやっているのを見てしまい、七罪を見ているようで嫌になるからだ。

そんなことを考えていると、ベルゼブブや私と同じ女性の魔王がやってきた。
彼女の名前はベルフェゴール、怠惰の魔王である。
彼女も冥府軍に行くのは嫌なはずだ、だって怠惰の魔王なのだからめんどくさいが優先されるから。

「レビヤタン、アナタは天使の誰を紹介するの」

「べ、べ、ベルフェゴールいやワタシ。
天軍の天使なんてそんな知らないし、そのまんま深淵の海に逃げようかなと思っている」

「ふぅん、そうなんだね。
確かに私とアナタじゃあ、天軍の天使なんかと関わることは無いからね。
ベルゼブブは元天使だったルシファー様のこと言うし、サタンはゼルエルとかそこら辺をかじりそうだしね」

「やっぱり勝てないよワタシ、深淵の海に逃げるから、皆んなにはそう伝えててよ」

「じゃあこれでも読んで、明日にでも発表しなさい」

「こ、こ、これは?」
彼女から手渡された紙は、四大天使ラファエルの情報についてびっしりと書かれていた。

「まぁラファエルのものだね。
あなたと似ていて、小さくてかわいいからね」

「いいやそうじゃない、なんでワタシにこれを渡したの」

「うーん、まぁ平等に戦わないとね。
サタンにばっかりズルをさせるのも嫌だからね」
そう、微笑むようにイタズラするように舌をペロリと出した彼女はどこかに自慢の羽根を使って窓を開いて飛び去ってしまった。

「ベルフェゴール……」

それから夜、練習したよ。
だってベルフェゴールがせっかく準備してくれたから。

それからその次の日。

「さぁてと、お待ちかねの七罪の中でどの天使が人気なのかを始めまーす。
先に言っておきますが、ルシファーちゃんは自分が負けるように不正をしそうなので投票だけをすることになりました」

「別に行っても構わないが」

「ルシファーちゃんは黙ってて」

サタンの高らかな宣言が聞こえた、うぅ勝てるのかな横にいたベルゼブブは自信満々の表情でベルフェゴールはアクビをしてて余裕そうだった。

✳︎✳︎✳︎

「皆さんルシファー様の投票をお願いします」

あっという間にサタンやベルゼブブが終わって次はワタシの番だ。
「うぅっ」

「頑張りなさいよレビヤタン、サタンにガツンと言ってやるのよ」

「分かった、頑張るからワタシ、頑張るから」
緊張で震えていた私だったがベルフェゴールに励まされながら、やっと前に立つことができた。

それから話し始めると、自分でも驚くぐらいスラスラと言えたのである。
そして最後の一言まで言って、ワタシはやっと乗り越えることができたのである。

ワタシでもこんなことをできるんだ、そんなことを思いながら、次のベルフェゴールの発表を聞くことになった。

「次は怠惰の魔王ベルフェゴールが発表しますと言うよりも私、怠惰の魔王ですので面倒臭いので負けにしてくださーい」

「えっ」

一同、目が点になった。
彼女は話すことがないと言うことで、スピーチすらもしなかった。
結果として、ベルフェゴールが負けて、冥府軍の見学に行くことになった。

まさかあの面倒くさがりのベルフェゴールが自ら負けるなんて、元からワタシに勝たせるようにしてくれたの。

それから数日後……

「じゃあ、行ってくるから」

他の七罪のメンバーは忙しくて誰もいなくて、ワタシだけが彼女を見送った。

「ベルフェゴール、待って。
なんであんなことしたの、自分で調べていた天使の発表のものをわざわざ何もしなかったワタシに渡すなんて。
怠惰の魔王として考えられないけど……」

「それはね、必死に頑張るあなたを見たかったから、だって私よりも怠けたことするなんて、怠惰の魔王の名が廃るからね」

そう言われて、私はとっさに体が動き、彼女を押し倒した。
怒りでは無いとは分かっていた。
「本当に嫌、アナタ、本当はワタシのことをバカにしているんでしょう。
でもね、今そんなことをしてくれたアナタが本当に妬ましい。
ワタシも誰かに妬まれたい、だからさベルフェゴール、ワタシも冥府軍に連れて行って。
違う世界に行けば、ワタシを妬む人が現れると思うから」

彼女は恥ずかしそうに顔を背けて、こう言った。

「アナタ、結構強情なところもあったのね、私も何かに全力で頑張ってみたいものよね」

「それって」
ワタシがそう尋ねると、彼女は立ち上がりこう言った。

「嫉妬の始まりは憧れから来るものよ、私もさっそくアナタのことを少し憧れたって言うこと」

そうなんだワタシに憧れたって言うの怠惰の魔王がこの何もできないワタシに、そう思うと今にも笑いそうだった。

「クヒヒィ、ありがとうベルフェゴール。
ワタシも少し自信がついたよ、今よりもまだアナタに妬まれたい」

「頑張りなさいよ」

そう微笑んだ彼女の髪は、窓から開けた風によって短いけど少したなびいていた。

嫉妬にも似た感情、いいやこれは嫉妬では無いのかも誰かを大切に思う気持ち、ワタシにも少しそれが芽生えたのかもしれない。




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