第1話

文字数 809文字

静まり返った公園で僕は一人缶ビールを飲む。コンビニで買ったばかりの缶ビールはきんきんに冷えていて静かな空気も冷やしてくれる。

「今からエステの人が来るから外出してくれる?」
今から?あと数十分で日付が変わるけど?ここ僕の家なんだけど?と瞬時に質問が湧き上がったが、出てきた言葉は
「わかった。今からだね。何分くらい出ればいいのかな?」
だった。2時間くらいと言われ、こうして今公園で缶ビールを飲んでいる。こんな夜からエステをするなんて芸能人は大変だ。夜空を見上げてそう思った。
どうして彼女が僕と付き合おうと思ったのかそれは僕もわからない。表向きの僕は社交的で仕事の出来る男かもしれないが、実際は出来るだけ家から出ないで漫画や本を読んでのんびりしたい。夜の会食なんてまっぴらごめんだ。彼女は僕と真逆で、家でだらだらすることはなく常に自分をアップデートしている。彼女の向上心の高さは僕ももちろん尊敬してる。でも、夜コンビニ行ってアイス買って食べてきゃっきゃする付き合いが本当はしたいのに出来そうもない。答えはもちろんNOだから。
彼女と付き合って、会社としてはプラスになった。あの女優さんと付き合っていると話題になり宣伝効果が抜群にあったからだ。周りはみんな喜び付き合いを長く続けて欲しそうだが、いつか終わりがくるだろうと僕は思っている。僕は事なかれ主義だから彼女と問題が起きていない。彼女はいつだって自分が優先だ。だから僕はこうして外にいる。

「なんでこうなっちゃったかなぁ。」
思わず大きめな一人事がもれてしまう。ふぅと一息ついて、手元の缶ビールが空になってしまったことに気がつく。時間はまだ24時50分。自宅に戻れるまであと一時間弱。まぁ、束の間の自由ということで満喫しますか、そう思いコンビニに向かうために立ち上がった。今楽しいしいいか。この気持ちの持ち方が付き合いを長く持たせているコツなんだなと感じながらコンビニに向かった。
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