第1話 ヤギの小学校

文字数 1,220文字

PTAからお手紙ついた。

ママヤギさんたら読まずに・・・

委任状にハンコぽーん!



ヤギタローちゃん

「ねーねー、

ちゃんとお手紙読んでよね。

先生に文句言われるのボクなんだからね。

今度のPTA総会Z○○mだってよ。」



「えっ、うそっ。」

(あわてて読み返す。

そろそろ細かい文字がしんどいヤギママさん

じっくり読むと無意識に食べそうになるから、

プリントを極力顔から離し薄目を開けて

プリントの中にZ○○mの文字がないか拾い読みサーチ。)

「ないじゃん。

こないだのZ○○m保護者会、

ヤギタローちゃんが

IDとかパスワードのプリント

ランドセルから出し忘れてて

ママこそカッコ悪かったわ。」



どっちもどっちのエエ加減親子。

付き合わされる担任の先生のご苦労がしのばれる。



「メエエ。

おはようございます。

PTA総会の出欠確認委任状のプリント

出してくださいね。

ヤギタローくん、

今度こそランドセルの底でしわしわにせずに

お母さんに渡しましたか。」



「はい、先生。

でもプリントっておいしそうで、

きれいにピンとしたまま眺めていると

食べそうになっちゃうんです。

なるべく見ないようにして

ランドセルの底に突っ込むのは

プリントの安全確保の一環です。

いつの間にかしわしわになっちゃうんですよお。」



「食べない工夫ができるのがお兄さんお姉さんの条件です。

ささっとクリアファイルに挟めばおいしそうじゃなくなります。」



「はい、先生。」



ヤギノ先生も紙が食べたいクチ。

一枚一枚テスト解答を読んで採点するときに

目の前のテスト用紙を口に突っ込んでしまいそうになる。

代わりのわら半紙を横において

口に放り込んでもぐもぐ。



わら半紙が底をついたら

禁断症状が・・・。

しかたがないから

テスト用紙から顔を離して

何か書いてあったら丸を付けるという荒技発動。

にわかに満点続出で

子供たちもニッコニコ。



右肩にでっかく「100」と大書してある紙は

なぜかランドセルの底でしわにならず食べられもせず

ひさびさにウッキウキのヤギママさんとヤギパパさんにほめられて

わが世の春なヤギタローちゃんの笑顔があふれ

世界はこれで平和になるんじゃないかってぐらいの効果があった。



え、大丈夫大丈夫。

ヤギパパさんも

100点満点のテスト用紙をうっかり食べてはいけないから、

採点内容があってるかなんてこまかいこと調べませんから。



ヤギママさん、

いつものずぼらはどこへやら。

「みてみて~。

クリアファイル買ってきちゃった。

テストもはさんで飾っときましょうよ。」

ささっとはさむ。

「うむ。

これなら食べたくならないから

落ち着いて読めるぞ・・・。」とヤギパパさん



この夜、

ヤギの小学校はクレーム電話でごった返し、

ヤギノ先生は校長先生に怒られて・・・。



数年後



「今は電子取り込みしてパソコン画面で読めばいいから楽になったな。」

「ほんとほんと時代がやっとヤギに追いついたって感じ。」

「最初から全部電子版にすればいいのに。」



ヤギの小学校では

全国に先駆けてIT導入が進むのでありました。

ちゃんちゃん!






















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