第3話

文字数 1,490文字


「私はいつもクラスで1番の成績だった。授業でやったことはほとんど復習せずとも覚えていたし、塾なんて行かずとも受験だって自分で勉強して1番の学校に行くことができた。何か難しい問題に出会った時にも、自分で考えて対処できた。だから、私はほとんどミスをしていない。受験のミスも、バイトでも、授業中の発表も、事前に予想を立てて、ミスを無くした。ミスしそうだと分かったら、やらないか他の人に任せた。そう。私はある程度予測して、物事を見ることができる。頭がいいからね。」

すっぽん
「僕はバカだ。勉強は一生懸命、先生の板書をノートに取り、分からないことは先生に聞いて、テスト前に詰め込まないように、コツコツ勉強をしていた。だけど、いつも下から数える方が早かった。先生からも、“真面目なのにね。勉強が苦手なのかな。”と言われた。特に暗記が出来なかった。また、バイトでもいつもミスをしてしまう。お皿を割ったり、計算をミスしたり・・・それでも真面目にやっていた。色々なことにもどんどん挑戦した。僕はバカだから、先のことを考えても分からない。だからこそ、何も考えずに、まずやってみた。バカだからね。」

月は頭がよく、要領も良かったので、修飾後、すぐに管理職に抜擢された。
もちろん外資系の大企業であり、第一志望の会社である。
堅実に実績を積み、取締役にまでなったが、外資系とはいえ給料は大方の企業よりも少し高いくらいである。また、社長や取締役からの決定には逆らえず、会社の言いなりとなって、何十年も働くだけであった。つまり、他の企業の管理職と変わらない生活、フツーの生活を送っていた。新しいことにチャレンジすることは、ほとんどない。なぜなら、先に損得勘定を考えたり、頭が良いため、ある程度の成功率を計算してしまい、一歩を踏み出すのが遅れ、気づいたら元の生活をそのまま続けているだけだったからである。

すっぽんはバカであり、就職もうまく行かなかった。結局、20社ほど受けた中で、1社だけ内定を貰った会社に勤めた。しかし、上司のパワハラや暴力など、いわゆるブラック企業だったため、程なくして辞めた。その後バカではあるが、その分フットワークが軽いため、様々なアルバイトを経験したり、色々な場所へ出かけ、肌で感じる経験値を積むことで、他の誰にも劣らない経験、知識を積むことに成功した。その中で、多くの人と出会い、それらの出会いが縁を結び、すっぽんを含む数人で会社を経営することになった。しかし、軌道に乗るまでには失敗や裏切りなどがあり、一筋縄では行かないこともたくさんあった。しかし、学生の頃から失敗をたくさん経験しい、打たれ強いすっぽんはそれでも前に進み続け、いつしか誰も登ったことのない山の頂に来ていた。

頭が良い人が敬われる時代、どこの大学をでた?どういう資格を持っている?などももちろん重要な相手を判断する要素であり、レベルの高い大学は、入るのが難しいため、そこに入ったということは、かなりの努力を受験に費やしたということである。
そこは評価しないといけない。しかし、それだけではない。
バカだといわれている人間にも強みはある。もちろん何もしない、その割に周りの環境や人のせいにするどうしようもないバカもいる。
しかし、バカな人間の中には、どんな状況でも諦めない心を持つ人、どんな環境にも飛び込む人、様々な素晴らしい特質を持つ人がいることも忘れてはならないのではないか?
勉強だけでは測れない能力などいくらでもある。2、3回の面接だけでは測れない能力もたくさんある。その人を本当に評価するためには、どうすれば良いだろうか?
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