第1話

文字数 1,010文字

 とあるもりのちいさなむらにすむふうふには、こどもがいませんでしたが、こどものかわりにカナリアをたいせつにそだてていました。
 ふうふは、もりのかみさまに、まいあさおいのりをささげました。
「どうか、わたしたちにこどもをおさずけください」
 あるはれたひのあさ、もりのかみさまがふうふのまえにあらわれました。
「まじめなあなたたちのねがいをかなえてあげましょう」
 すると、カナリアは、なんとうつくしいにんげんのむすめへとへんしんしたのです。
 しかし、もりのかみさまは、ちゅうこくしました。
「いちどでもカナリアにもどったら、にどとにんげんには、もどれないからきをつけなさい」
 ふうふは、そのこにヘレネとなづけ、たいせつにそだてました。
 ヘレネは、うたがうまく、いつもむらのみんなをたのしませました。
 ある、あらしがふきあれるよる、あらしにまぎれて、とうぞくがむらをおそいました。
 むらのみんなはとうぞくにつかまってしまい、ヘレネもみんなとおなじように、てをしばられてしまいました。
「カナリアにもどれば、みんなをたすけられるかも……」
 でも、いちどでもカナリアにもどってしまえば、もうにどとにんげんにはもどれません。
 ヘレネは、なやみましたが、みんなをたすけるため、ゆうきをだして、カナリアにへんしんしました。
「ぴーぴー!」
 カナリアにもどったヘレネは、とくいのうたをうたいました。
「カナリアなんて、どこから入ってきたんだ? それにしても、いいうただ」
 とうぞくたちは、ヘレネのきれいなうたにむちゅうになりました。
 ヘレネは、ゆだんしたとうぞくたちのめを、くちばしでいきおいよくつつきました。
「い、いたい!やめてくれ!」
 かんねんしたとうぞくたちは、いちもくさんににげていきました。
「ぴー!」
 ヘレネは、むらのみんながしばられていたひもを、くちばしでつついて、みんなをかいほうしました。
「ありがとう、ヘレネ。おまえのおかげでみんなたすかったよ」
「でも、もうにんげんにもどれないのか……」
 みんながかなしみにくれていると、もりのかみさまがあらわれ、いいました。
「あなたのゆうきあるこうどうのおかげで、むらのみんながすくわれました。ごほうびとして、あなたをほんもののにんげんにしてあげましょう」
 すると、ヘレネはふたたび、にんげんのすがたへもどることができ、おとうさん、おかあさん、そしてむらのみんなとなかよく、しあわせにくらしました。
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