別件逮捕の理由

文字数 1,055文字

「あそこに車が有りますよね」
 天気予報で、この夏、最高気温になると言われた日の朝、出勤の為に大通りを駅まで歩いている途中で、何故か、黒スーツの2人組に話かけられた。
「え……ええ……」
 良く見ると、道路脇に違法駐車しているようだ。
「貴方の車ですよね?」
「はぁ?」
「貴方の車ですよね? 証拠は上がっています」
 2人組の男が俺に見せたのは……警察手帳と……冒頭に「逮捕状」と書かれた書類。
「車庫飛ばしの容疑で逮捕します」

 俺が乗せられたのは、「貴方の車ですよね」と言われた当のその車だった。
 こんな茶番有るかッ‼
 しかも、目隠しをされ……おい、どこに連れて行く気だ?
 最寄りの警察署にしては時間が……うん? ETCがどうのこうのって、声が……。高速道路に入ったのか? どうなってんだ?

 俺は裸にされ、椅子に縛り付けられ、講堂か何からしい部屋に運び込まれた。
 そこには、俺と同じように裸にされて椅子に縛り付けられた男達が何人も居た。
 そして、俺を含めて、この部屋に居る連中には1人につき1人の警官が側に居て……何故か、俺達の股間を注視していた。

「あ〜、皆さんは、○○大学で研究されていた『エロ画像判定AI』の研究に協力された方々ですよね?」
 どうやら、他の警官より、階級が上らしい警官が、そう説明を始めた。
 あ、そう言や、ネット上で、そんな研究への協力者を募集してたんで、たしかに「協力」した事が有るが……。
「○○大学の研究者さんから、そのAIが、これを『エロ画像』と判定したとの連絡が有りました。AIに、これを『エロ画像』だと教えたのは誰ですか?」
 一番偉いらしい警官が、そう言うと……プロジェクターがスクリーンにある画像を映し出した……。
 若い女性が無惨に殺されている……そう……内臓……いや、これ以上の描写は無理だ。見てるだけで吐きそうになる。
「18番、勃ちました」
「33番、勃ちました」
「05番、若干ですが勃ちました」
「80番、元が小さいので判別困難ですが、勃っている可能性が有ります」
 この部屋に連行された男達の股間を注視していた警官達が次々と声を上げた。
 最後の「80番」がどうのこうのと言う声を上げたのは……。
 ふと、自分の股間を見る……。
 だが、俺が気付いたのは、俺のナニが勃っているかどうかでは無かった……俺の胸には……マジックで「80」と云う数字が書かれていたのだ。
「よし、勃ったヤツは、全員取調べ室に御案内だ。何かやらかして無いか、しっかり吐かせろ」
 そして、俺は、椅子ごと、どこかへ運ばれ……。
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