第1話

文字数 880文字

別にこれといって優れていることもなければ、劣っていることもない。
それが僕だ。良い意味でなんでも平均ぐらいはできる。
悪い意味で変わりはいくらでもいる人間ということ。
優れていることがある人間はそれだけで皆んなから尊敬される。
少し性格が曲がっていても。
劣っていることがある人間も、人間味があるなと思う。
劣っているからこそ、苦手なことがあることを自覚しているからこそ、見えてくるものがある。
誰かがそんなことを言っていた。
じゃあなんでも平均な僕はどうだ。
別に苦手なこともなく、熱中するようなこともなく、目の前にある課題をある程度こなしてそれで終わり。自分らしさ、自分にしかできないこと、自分にしか表現できないこと、そんなもの僕の作品にはない。
これまで習い事だったり、部活動だったり、友達、家族に勧められてやってきたけど誰からも
「上手い」とか「すごい」とかそんな言葉、言われた事がない。
大学も実家から通える地方国立大学を受けて合格したから行っているだけ。
僕より勉強ができない友達からは凄いと言われたけど、僕が通う高校から毎年何十人と行く1番普通の道だ。

「普通」「平均的」その言葉を聞くとなんだか自分が恥ずかしくなる。
そう大学の頃までは思っていた。実際に学校の先生からも、家族からもそういう言葉をかけられ、言い方も少し小馬鹿にした感じを受けていたから、そう感じたのかもしれない。
しかし、就職をして会社で働くことになり少しずつ考え方が変わってきた。
なんでもそつなくこなす事ができる人が少ないと分かったのだ。パソコンに強いが人当たりが悪い人。学生の頃、スポーツマンで体力と礼儀があるが言葉を知らなかったり、相手の話を理解できない人。愛嬌があり誰からも可愛がられるけど仕事が遅い人。みんな周囲より良いとこがある分、悪いとこもある。
それに比べ僕は周りと比べ良いとこがないけど劣っているとこもない。
これはある人からすると、とても大きなプラスの点になるらしい。
大学まではこれを僕の悪い事だと思っていた。
だけど、環境や人間関係、自分の考え方を変えれば世界はなんと生きやすい庭なのだろうか。

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