第1話

文字数 635文字

今も昔も、人には大切にしているモノが、少なからずあって
多ければ多いほど、幸せだとか、少ないから不幸だとか、色んな考えがある
わたしはモノが少なくても不便はないし、ただ、大事に使えばいいだけの話で。

帰りは毎日遅いから、明日の天気が知りたくて、ラジオをつけた
人の声を聴いていると、心地よくてすうっと眠りにつける
一人暮らしで、生活音がしないわたしのアパートはとても静かなんだ
だから家事をするとき、ちょっとナーバスな時は、大抵音楽を聴いている
週末にしかしない料理を作るときは、鼻歌を歌いながらキッチンに立つ
窓から日差しが差し込んで、時間がたっぷりあるような気がして、気持ちが昂る
さあ、今日の夕飯はうまく作れたから、記録しよう

なんだか最近、調子が悪いみたいだ
機械はいつか壊れてしまう。そんなことはわかってる
でも、ぷつりと糸が切れるように、突然キミが動かなくなったらと思うと、不安でたまらなくなる
ロボットも、アンドロイドも、そうなのだろうか
電池切れになった瞬間、わたしはひとり取り残されてしまうのだろうか
いつも片手にキミを連れて、色んな風景を記録して、沢山話もしたね
代わりなんていくらでもいる、悪く言えばそうなんだけど
キミが、もし突然真っ暗になってしまったら…
なにも、写さなくなって、音も聞こえなくなってしまったら
わたしは突然の別れに気落ちしてしまう
今日も音楽を聴いて眠りたい。キミから発せられる音を聞いて、ふかふかの枕に埋もれて
ぎゅっと大事なスマートフォン握りしめながら、今日も眠る


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