「小さな親切、余計な御世話」あるいは「自分で復讐を成さず、神の怒りに任せよ」

文字数 1,182文字

 人間界を、ふと、見てみると、目に入ったのは、1人の男の突然かつ理不尽な死じゃった。
 自動車にはねられた上に、その自動車は、その場から逃走。
 可哀想になったのと、たまには神らしい事もやってみるか……と思って、その男の魂を「あの世」への正規ルートからつまみ上げてやった。

「そなたは理不尽な死を遂げたので、生き返らせてやろう。あと、生き返るに当って、望みが有るなら聞いてやろう」
「えっ……と神様ですか?」
「そうじゃ」
「でしたら、私をこんな目に遭わせたヤツに天罰を……」

 で、儂は、その男の望み通り、男を甦らせてやると同時に、轢き逃げ犯を即座に殺したんじゃ。
 轢き逃げ犯の車は……運転手が突然死したため、迷走し……別の誰かを轢き殺してしまいおった。

「あ〜、どうやら、そなたは儂の手違いで死んだようなので、生き返らせてやろう。あと、生き返るに当って、望みが有るなら……」
「では、神様。犯人に天罰を……」
 う〜む……。犯人と云うのは……最初に生き返らせた男になるのかのぉ?
 まぁ、折角、生き返らせたのに気の毒じゃが……。
 儂は2人目の男を甦らせてやると同時に、1人目の男の命を奪った。

 どうやら、1人目の男は、どこかの工場の技師で……失敗が許されぬ重大な作業をしておったようじゃ。
 その最中に1人目の男が死んでしまった為、その工場ではとんでもない事故が起き……。
「あ〜、どうやら、そなたは儂の手違いで死んだようなので、生き返らせてやろう。あと、生き返るに当って、望みが有るなら……」
「えっと……あんた、神様? なら、俺をこんな目に遭わせた奴に……」
 えっと……2人目の男を殺せば良いのかの?
 儂は3人目の男の望みを叶えてやり……。

 2人目の男は、救急隊員で、1人目の男の工場で起きた事故による怪我人を病院に搬送しておった救急車を運転しておったのじゃが……。
 運転中に急死してしまい……。
 更に、その救急車は……。

 人間界の時間で数時間後、儂の手違いで死んでしまった人間は、千人以上になっておった。

「そなたらは、儂の手違いで死んだので生き返らせてやる。その時に、一つだけ願いを叶えてやるが……そなたらを死なせたヤツへの復讐だけは……」
「あのさぁ……神様、ここに居る連中は、あんたのせいで死んだような気がすんだけど……」
 ええっと……言われてみりゃ、そうじゃな……。
「『俺達を死なせたヤツへの復讐は禁止』って、神様(あんた)の責任は追及すんな、って事?」
「あ……それは……その……何じゃっ……。判った。そなたらを、全員、生き返らせ終ったら、儂も責任を取ろう」
「ああ、それでいいよ。どんな形でもいいから、責任取ってくれ」

 そして、儂は、この不始末の責任を取って存在する事をやめた。
 次の瞬間、儂が司っておった全ての世界と、そこの存在する全てのモノが消えた。あの世もこの世も全部ひっくるめて。
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