プロット

文字数 2,175文字

起)想像力豊かな小学5年生、ユウキは小説を書くのが大好き。自分を主人公にした自作のファンタジー小説「竜の子ユウキ」をノート3冊も使って書くほどであった。友達の熱血な剣道少年カケル、真面目でクラス一の秀才トモキ、活発でスポーツが得意なユキ達から面白いと言われていたが、好きすぎて授業中に授業そっちのけで小説を書いてしまい、先生に怒られ母親にノートを取り上げられて落ち込んでしまう。取り上げられてからはしばらく、友達に直接続きを話したり、一人でぬいぐるみなどを使って妄想していたが、小説が書けなくなった今、自分がなぜ小説を書いていたのか考えるようになる。しかし、答えは思い出せないままその日は寝てしまう。その夜、取り上げられたノートからいくつかのページが飛び出し、町へと飛び散っていった。


承)その翌日、ユウキが目を覚ました時、自分の体に異変が起きていた。なんと、自分が小説のラスボス竜魔王ドラゴニスになってしまっていたのだ。それだけではなく、妹や母親、父親も小説のキャラになっていた。それを見て、ユキが怖い口調で語った「小説のキャラクターには魂があって、現実の人とつながるようにすると、小説のキャラが混乱して現実に出てきてしまう」という言葉を思い出し、恐怖してしまう。すると、妹の背中に自分が書いた小説のページが張り付いていたのが見えて、それを剥がすと元に戻った。剥がしたページの内容から、小説のキャラに変身してしまった人は、現実でモデルになった人間がいることがわかり、背中のページを剥がせば元に戻ることもわかった。それを期に、同じく主人公の仲間に変身してしまったユキ、カケル、トモキと一緒に、変身してしまった人々を元に戻すために町中を駆け巡ることになった。


転)大きなトカゲになった担任の先生や、ドラゴン兵に変身して暴れ回っていた不良たちなど、変身してしまったいろいろな人たちの背中にあったページを剥がして元に戻し、一通り集めた後友達三人も元に戻ったが、ユウキだけはなぜか背中にページが無く、元に戻れなかった。みんなは元に戻ったのに、自分だけが戻れないことに絶望するユウキ。その時トモキが、「そもそも竜の子ユウキはユウキ自身が主人公なのに、なんでユウキは主人公のユウキじゃなくてラスボスのドラゴニスになったのか」と語る。それを聞いて、友達と一緒に自分と竜魔王のルーツを考える。だが友達からは情報を得られず、その日は結局家に帰ろうとした四人の前に現れたのは、なんと小説のユウキ。現実のユウキを竜魔王にしたページを持っていたのは、彼だった。ページを返して欲しいとお願いするも、自分は現実のユウキの願いを叶えてあげたのに、どうしてそんなことを言うのかと語る。自分は現実のユウキの理想を映した存在であり、ユウキがしてほしいこと、望んでいることを全部叶える存在だから、それを忠実に行っただけだと主張し、自分が起こした事件は、全てユウキが望んだことだと語る。


結)現実のユウキがなぜ小説を書き始めたのか語り始めた小説のユウキ。幼い頃から空想癖のあったユウキは、一人でぬいぐるみで想像したキャラのごっこ遊びをしたり、本を読みながら本のキャラで空想の独り言を言うような子であり、それを見た学校の他の子達から変なヤツだと言われて寂しい思いをしたらしい。だがある時、ノートにいろいろな空想を書き連ねていたのを今の友達三人に小説を書いていると思われたのをきっかけに小説を書くようになり、友達になった。小説を書くことが、三人に自分を友達としてつなぎ止めてくれる、そして小説なら、現実でモデルにした人と良い関係になれるし、自分は理想の人間になれる。それが現実ユウキが小説を書き始めた理由だと語った。だが、それだけが理由ではないとも小説のユウキは言う。それを聞き、現実のユウキは自分がなぜ竜魔王になったのかを自覚し、心の奥に閉まって忘れていた本心を語り出す。小説を書くことで変なヤツだと言われたくない思い、みんなが認めてくれる強い存在になりたいという思い、友達の三人みたいに誰にでも誇れるモノを持ちたいという思い、そして……それを実行できず、小説の自分に押しつけていた自分こそが、一番倒したかった人間だと、三人に打ち明けた。こんな自分など、醜くて悪い竜魔王でいるのにぴったりだと自嘲する現実のユウキ。それを見た友達三人は、ユウキをぎゅっと抱きしめ語る。自分達がユウキを好きなのは、小説だけが全てじゃない。自分たちには無い想像力を持っていること、自分たちも同じような思いを抱えていること、そんなユウキが大好きだとユウキに語る。その言葉によって、現実のユウキは涙を流し、ページが背中に張り付いて、それを剥がすと人間に戻った。そうして全てのページがノートに戻ると、小説のユウキは徐々に消えていく。消え際に、「なれもしない理想の自分よりも、自分を思ってくれる友達のことを考えてほしい」と言い残して。こうして、小説と現実が混じる騒動は終わり、みんなが何事も無かったかのように忘れたが、ユウキ、トモキ、カケル、ユキはしっかり覚えていた。そしてそれを元に、今度はみんなで小説を書こうとユウキは言い出し、みんなもそれに賛成して家へ帰って行く。ユウキが名付けたその小説の題名は「小説クライシス」だった。
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