ダイヤモンド

文字数 619文字

24時50分、私はキッチンで缶チューハイを飲みながら泣いていた。子供はもう寝かしつけた。あとは、大量の洗い物をするだけ。夫とは昨年、死別した。乳飲み子を二人抱え、やっと最近働きだした。保育園の先生は親切だ、勤め先の仲間にも恵まれている。でも、一人になるといつも涙が出る。まだ、あなたを思い出すから。ギリギリで回している家計簿、育ち盛りの子供たち、この先のことを考えると、血の気が引く。

ふと、友人からのLineが届く、『今度は奈美もおいでよ』メッセージとともに写真におしゃれなカクテルが並ぶ。私はとっさに携帯電話をベッドに投げつけていた。
神様は不公平だと思う。どうして私にだけ?そんなことばかりが、頭に浮かんだ。
現実から逃げたくても逃げられない、だってこの子たちの親は私しかいないでしょ。でも親をするのにも限界がきている。

助けてほしい、救ってほしい、そんな思いとともにお酒を飲む。涙があふれると、キッチンに座り込んだ。明日も早々に保育園に子供を預け、仕事に出かけなきゃいけない。寝なきゃ、もう、洗い物はいいや。涙で歪んだ月を見た。ふと、ダイヤモンドのように星が輝いている。あなたが、『もう少しだけ、頑張ろうよ』と、言ってくれているような気がした。
頑張れる。あと少しなら。

ね、そうやって人生って紡いでいくものでしょ。一日、一日が繋がって人生っていう長い道のりになるんでしょ。あと少しだけ、の毎日が繋がって。
私はベランダに出ると、ふと微笑んだ。
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