ゆとりの赤魔道士くん。

文字数 1,183文字

早朝。

勇者の俺と仲間たちは世界を滅ぼそうとしている魔王を倒す為に魔王がいるマカダミア帝国に向かっていた。

「勇者さん、今日はこのクルミの森でレベル上げしていきましょう」

赤魔道士くんが俺にそう提案する。
赤魔道士くんは他のパーティーがレベル50以上で、自分だけがレベル20以下である事に劣等感と焦りを感じていた。

「赤魔道士くん、その提案……アリだ。 クルミの森を出たら強敵がわんさかいるって通りすがりの妖精が言っていたからな。 だから、今のうちにレベルをあげて強敵を数分くらいで倒せるようにしとこう」

すると赤魔道士くんが「っしゃあ!」とガッツポーズをとった。

しかし俺は思った。
レベル上げするのはいいけど、結局のところ赤魔道士くんがレベル上げをするのと同時に、勇者の俺や白魔道士ちゃんや黒魔道士さんもレベル上げするワケだから、仮に赤魔道士くんがレベル50になっても俺らもレベル70とかになる。

つまり、赤魔道士くんが抱えている劣等感や焦りを無くす事はできないんだよな。

……まぁでも、俺らの目的はマカダミア帝国の魔王を倒す事だからなぁ。
赤魔道士くんの心のケアはしてあげたいけど、優先順位的に一番上ではない。
それに、赤魔道士くんの行動にも大いに問題はあった。

俺らがゴブリンとかスライムとかと戦っている時に普通にスマホでアプリやってたり、「お腹痛いので今日は見学しときます」とか言いながら草むらの隅っこの所でアイスクリーム食べてたからな。

仕方ない、ちょっと赤魔道士くんと話すか。

「赤魔道士くん、ちょっといいかな?」

「何でしょうか? 説教はやめて下さいよ。 僕かなりメンタル弱いんで」

あー、無理。
いつもこのパターンですよ。

ってか……ホントきっついわ、赤魔道士くん。
確かに赤魔道士くんはゆとり世代の子だけど、あまりにもゆとりぶり炸裂しすぎだわ。

パーティーに入った時は、

「僕、絶対に魔王倒すために頑張りますよ! たぶんエース的なポジションになり得ると思います! モチベ高いタイプなんで! マジで即戦力です!」

って張り切ってたのに、パーティーに入って二日経ったくらいで

「ちょっと進むペース早くないですか?」
「宿で1ヶ月くらいゆっくりしませんか?」
「休むのも大切な事だと思いません?」

とか言ってくる始末。

もう本当に無理、赤魔道士くん。
どうしてパーティーに入れちゃったんだろう。

技も【たたく】しか覚えてないし、すぐ「白魔道士ちゃん、HPの回復は僕を優先的にお願いしますね」とか言うしな。

限界だ。
赤魔道士くんをパーティーから外そう。
そうしよう。

「赤魔道士くん、本当に悪いんだけどさ……パーティーから外れてもらえないかな? なんて言うか、おれ達も本気でやってるとこあるし、赤魔道士くんにはそういう姿勢が見えないんだよね」

「嫌です! 続けたいです! 頑張ります! モチベアゲアゲ~っす」


だめだこりゃ。



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