プロットとあらすじ

文字数 2,984文字

【起】
 中学一年生の木島春帆は学校に通いながら、実家が経営する町の小さな電気屋さん「キジマ電機」でお手伝いをしていた。今年で西暦2060年になり、最近では新製品が次々と発売される中で、真面目な春帆はこれまでの経験と知識により、その機械の仕様書や説明書があれば、大体の製品は修復できた。小さいころから機械が大好きな父親の下でいつも何かしらの機械を取り扱っていたからである。いつも遊んでくれる父親だったが、2年前に春帆に何も言わずにどこかへと行ってしまう。すでに母親も亡くなっており、お店は祖父母と春帆で経営を維持しながら、いつも元気で機械について詳しい春帆は桑原町商店街の人気者だった。

【承】
 「衣類選別機」は事前に服を内蔵のクローゼットに預けておくことで、出かける際にその人にあった服をトレンドから勝手に選んでくれて、自動で服を着させてくれるアイテムである。中々高価なもので春帆は見たことなかったが、ある一人のおじいさんが修理をして欲しいと婦人服を着て来店してくる。
「どうしてか、機械がわしの服ではなく、亡くなったばあさんの服をわしに着させるんだよ」
 春帆は持ち前の腕で機械の構造を把握し、自前のパソコンによってデータ分析も行うが、機械はどこも故障をしていない。それもそのはずで、ただおばあさんの衣類のみしか着用できない設定に書き換えられていたのである。調査していく中で、実はおばあさんは過去にここのキジマ電機に来店しており、その時お父さんがその設定をしていたのだった。
 おばあさんが亡くなった後、人見知りだが寂しがりのおじいさんがおばあさんの服を着て出かけたら、周りの人が面白がって話しかけるだろうとおばあさんとお父さんで考えての行動だったのである。そして、その思惑通り、ここの電気屋に来るまでに町のいろんな人からおじいさんは話しかけられており、おばあさんが亡くなってから家にこもりがちだったおじいさんは友人とよく出かけるようになったという。
 
 「ペルソナ」は海外から流通してきたアプリケーションであり、最近の若者の間で流行っていた。周囲の人物の性格や行動を記録することによって、これから先その人物がどのような選択をするかを予想する機能が備えられている。特に好きな人などの情報を読み込ませることによって、デートや告白の際に適切な選択ができるという。
 春帆が通う中学校でも使う人はいて、友達の鈴も愛用していた。
「これのおかげで、デートも上手くいって、本当に良いアプリだよ」
 春帆はあまりする気はなく、いつも遠目からみんなが使っているのを見ていた。そんなある日、アプリを活用していた鈴から相談を受ける。
 ペルソナは模擬人格形成により、その人物の前での適した行動も示してくれる。行動は選択肢で誘導されるが、最近の選択肢が何故かおかしいらしい。
 最近、彼氏とのデートを断るべきだと指示してくれるというのだ。
 春帆はネットなどから情報を集め、これまでの鈴の行動から分かったが、恐らくそれらの選択肢は正しく、しかし何故そのような選択肢が提示されるのかは分からない。だが、その理由はすぐに分かる。常に彼氏に対し、最善の選択を取っていた鈴だったたが、その分友人らの関係をおざなりにしており、このままでは友人との縁が切れるという警告だったのである。
 一度は、鈴の周りから友達はいなくなったが、春帆の助言により、ペルソナを使うことなく、友達に謝り、また元の関係に戻るのであった。
 
【転】
 「クラウド型統合管理システム」はキジマ電機が属する桑原町を統括するAIの呼称であり、桑原町住民の安全を保つため、使用するすべての機械にはAIが導入され、管理されていた。機械といっても、最近は使用するペンや電子タブレット、眼鏡などにも導入されており、住人の位置情報や生体情報もモニタリングされている。ただし、これの生データは国直属の管理機関しか扱うことはできず、当人らはそのデータを知る由もない。
 いつものように春帆はキジマ電機で故障した機械の修理を行っていたところ、突然、周囲の機械が暴走し、多くの機械には片付けなどが簡単にできるように自走機能があったため、キジマ電機を含む商店街の中を様々な機械が走り回り始めるという事態が起きる。
 商店街の窓や扉、照明、陳列棚なども異常事態をきたし、春帆や祖父母らでは取り扱うことができなかったが、ついに春帆はクラウド統合型管理システムに原因があると気が付く。
 商店街の出入り口も全て、AIの暴走により、閉ざされていて買い物客や店員は逃げ場がなく、あちこちで隠れている状況にあった。そして、次第に機械をよく扱っていた春帆含め、キジマ電機に疑いの目が向けられ、懸命に否定するも一部のお客からは信用されない状況となった。

【結】
 買い物に来ていた親友の鈴や他の友達によって、春帆は疑いの目から逃れるも、状況は中々好転しない。そんな時に春帆のデバイスに一つの通知が入る。それは、突然いなくなってから一度も連絡のなかった父親からだった。
「時々、AIは人のためを思い、人の想像を超える働きをする。もしかしたら、誰かが原因を知っているかもしれない」
 父親自身の居場所でも、春帆に対する謝罪でもなく、それは今の状況についてのみの内容だった。ただ、春帆にとっては父親が連絡してくれたことが少し嬉しく、そして打開する情報を手に入れたことにより、春帆は落ち込んでいたものの、前向きになる。
 春帆たちは暴走する機械を避けながら、ついにこの状況の原因だと思われる少女を発見する。少女は泣いており、そしてこれは私のせいだと告げる。少女は商店街でいつも万引きを強制させられ、いじめられていたのだという。そしていつもトイレで泣きながら、併設されているAIと一方的に話していたが、今日だけはいつもと様子が違ったそうだ。
「私が、もう物は盗みたくない。私をいじめる人なんか、いなくなればいいって言ったら、急に周りのモノが動き始めたの」
 機械が暴走した原因は、AIが監視カメラや少女の周囲にいつもいた人物の位置情報からイジメていた犯人を特定し、この商店街で追跡していたのだった。
 それを知り、春帆たちはシステムをクラッキングし、いじめの主犯格たちの居場所を突き止める。間一髪、イジメていた犯人を追い詰めていた機械たちの動きを停止させ、AIとはこの騒動を終わらせるように話を付ける。
 トイレのAIはいつもその少女と会話をしながら、どうにか彼女を助けてあげたいと考えていた。そのため、春帆は絶対にいじめはなくすことを誓い、AIに人々の暴言や暴力を感知するシステムを付与し、安全を誓う。
 再び、いつもの商店街に戻り、父親が帰ってくることを願いながら、春帆はまた機械を修理し続けるのであった。

【あらすじ】
 祖父母と一緒にいつも元気な春帆は、キジマ電機でお手伝いをしていた。彼女は機械の修理を得意とし、様々な依頼人からの機械の悩みを解決していく。ある日、商店街の機械が暴走し始め、これまでにない困難に陥る。春帆は原因を探り当て、そして一人の少女に辿り着く。少女をイジメていた犯人をAIは追いかけていたのだ。春帆はいじめをアプリでなくすと誓い、AIの説得を成功させる。そして、いつもの桑原町商店街に戻るのであった。
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