第1話

文字数 1,255文字

<NOVEL DAYS 課題文学賞:特別編 cluster × NOVEL DAYS NOVEL to WORLDコンテスト開催‼>

『あなたの書いた「物語」が、「世界」として具現化するという夢の企画!』という謳い文句に誘われて、異形の生物たちが闇のトンネルの中で蠢き出した。彼らは文学賞受賞に向けて、何やらヒソヒソと話し合う。面白い物語のアイデアが浮かんだのだろうか? 時折り笑い声が聞こえてくる。余裕綽々な態度と言っていいだろう。締め切りまで時間がないというのに! 早くしないと、間に合わないぞ!

 この声が、届いているのだろうか……トンネルの中にいる者たちに。

お題は「ありえないトンネル」だそうだ。
なんだそりゃ?

・私だけが知っているトンネルの話

・見知らぬトンネルに入ったらこんな経験をした

・ありふれたトンネルを抜けたらこんなことが起きていた

などなど、自由な発想で物語をつむぎ短編小説に仕立ててください、だってよ。

あるぜえ、俺だけが知っているトンネルの話が。とっておきのやつだ。
聞かせてくれ。
冬にな、あったけえところへ行きたくなってよ。南半球へ行こうとしたんだよ。
ふむう、北半球が冬だと、南半球が夏ってことだな。
そうだ。その理屈で、俺は地球儀を回して調べた。日本の真裏は南米だった。それなら、地面を真っすぐに掘れば南米に着く。
真っすぐに掘り進んでいけば、南米を掘り当てることになるだろうな。
そういうことだ。それで俺はツルハシを使って岩を砕き、地面に穴を掘った。
夏へのトンネルを掘ったってわけだ。それで、どうなった?
十メートルくらい掘ったらトンネルの壁が崩れ落ちてきて、死にかけた。
駄目じゃん。
助けて貰わなかったら、あの世へのトンネルをくぐり抜けるところだった。
掘って出た土、どうするんだろうと疑問に思っていたんだ。

そうだ、思い出した。見知らぬトンネルに入ったらこんな経験をしたって話だ。

よくもまあ、見知らぬトンネルなんてものに入ろうと思うよな。
借金取りから隠れようとして、トンネルに入ったんだ。旧日本軍が造った秘密の防空壕への入り口だ。そうしたら、いるわいるわ、蝙蝠や得体のしれない動物それに幽霊。
出たあ、幽霊!
ここだけの話だが、そこの幽霊に憑りつかれて困っている。除霊したいんだけど、どうしたらいいのか?
その話を小説投稿サイトに書いて出すと良いらしい。その話を読んだ人間に、憑き物が憑依するんだって。
それじゃ、早速出すわ。
他に何か話があるかなあ?
ありふれたトンネルを抜けたらこんなことが起きていたってネタなんだけど、言っていいかな。
どうぞどうぞ。
ほんじゃ、お言葉に甘えて。俺ら、暗いトンネルの中に潜んでいるんだけど、このありふれたトンネルを抜けた先に何があるか、誰か知っているか?
誰一人として答えなかった。それを見て、質問者はニヤッと笑った。
トンネルを抜けたら、作品が完成していたんだ。中身はまったくない話だけれど、チャットノベルの練習にはなった。
それは事実だ。しかし、それ以上ではない。その程度の話だった。
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