告白

文字数 618文字

「パパ」
 息子の誠也(せいや)が聞いてきた。
「ん? なんだい?」
「パパはどうして、コソ泥なの?」
 うっ・・・。
 な、なぜ?
 バ、バレてる?
 息子は5歳。
 これまで、ひた隠しにしてきた、父親の職業がすでにバレている?
「ハハハ、なーんででしょう?」
 誤魔化しようがない。
 もう隠せない。
 正直に言うしかない。
「なんで、なんでなの?」
 息子は澄んだ目をして聞いてきた。
「それはね・・・」
 しかし、本当のことが言えなかった。
 口からつい、でまかせが出た。
「うちのご先祖様が忍者だからだよ。パパたちは忍者の子孫なのさ」
「ふーん」
 全く納得していない。
「だから、盗むのが得意なのさ。人様のものをこっそりいただく。しかし、人様に危害を加えてはいけないよ。それは忍者道に反する行為だからね」
 よくもまあ、いけしゃーしゃーとでまかせが出るものだと、自分でも感心した。 
「ふーん」
「けどね、誠也ちゃんはコソ泥になんか、なっちゃいけないよ。うんと勉強して、立派な大人になるんだ」
「コソ泥は立派じゃないの?」
「そうだねえ・・・」
 息子とはいえ、迫ってくるものがあった。
「立派とは言えないね。何せ、人様のものを奪いとる職業だからね。立派ではないよね」
「なら、パパは立派じゃないの?」
「今のところ、パパは立派とは言えないね。だから、パパを見習ってはいけないよ」
「ふーん、わかった」
「わかった? わかってくれた?」
「うん。なら、ボクの本当のパパに会わせてよ」 
 
 終
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み