プロット

文字数 1,311文字

起)「カッコつけ」と思われたくはないけれど、モテたいからちょっとおしゃれもしたい。そんな悩みを持つ普通の小六男子、八汰ミライ。水泳の授業の後、人の来ない校舎裏で母親から借りた手鏡を見て髪型を整えていると、どこからともなく声がした。「鏡よ鏡、世界で一番カッコいいのは誰?」それは、鏡の中の自分が喋った声だった。
なんと鏡の向こうには、もう一人の自分が生きるもう一つの世界があったのだ。驚きながらも、ミライは鏡の中の自分に咄嗟に答える。「隣のクラスのチャマトだろう。」チャマトというのは、チャラくて人気者の大河内(おおこうち)ヤマトのあだ名だ。自分がカッコイイと言われなかった鏡の中のミライはすねて、姿をどこかに隠してしまう。

承)鏡の中の自分が姿を隠してしまったことで、ミライは困った。どの鏡を見ても、映るはずの自分の姿が映らないのだ。これではおしゃれも難しい。彼は鏡の中の自分の機嫌を直すため、鏡の中の世界のことを調べ始めた。勿論、誰もそんな世界のことはわからない。しかしおばあちゃんの言葉が、妙に彼の記憶に残る。「鏡は、自分の生き映し。その人の本当の姿が顕れるものなんだよ。」
そんな中、学校で二つの事件が同時に起きる。一つ目は、チャマトが給食に毒を盛られて倒れた事件。二つ目は、クラスのマドンナ、稲田ヒメナが校庭の真ん中で突如姿を消した事件。
ミライは妙な胸騒ぎがした。人気者のチャマトは、誰かに恨まれて毒を盛られるようなタイプではないのだ。動機のありそうな人間は、チャマトに拗ねて姿を消した鏡の中のミライだけ。鏡の中の自分が自分の生き映しなのだとしたら、ミライはチャマトを嫌っているのか?そのことを確かめるために、ミライは調査を開始する。

転)チャマトの給食を盛りつけた人物はマスクと三角巾で顔がわからなかったというが、それが左利きだったという話から、ミライはチャマトに毒を盛ったのが鏡の中のミライであると特定する。なんとか捕まえることに成功し、事件は解決したかに思われた。
だが、鏡の中のミライの口からどんでもない事実が明かされる。「ヒメナを助けようとしただけだ。鏡の中のチャマトが、現実の世界からヒメナを誘拐して来たから、それを止めようとしただけなんだ。それが間違って、現実の方のチャマトの皿に毒を入れてしまった。」ヒメナ消失事件の犯人は、鏡の中のチャマトだったのだ。
二人のミライと、回復したチャマトはヒメナを助けに鏡の中へ入り込む。そこは、一見いつもと同じだが、なんだか少しだけ違う不思議な世界。彼らは困惑しながらも、鏡の中のチャマトを追い詰めた。

結)鏡の中のチャマトは、運動場の水たまりにできた鏡面からヒメナを誘拐したのだった。「ヒメナのことが好きすぎて、やってしまったことなんだ。」彼は誘拐こそしたがヒメナを傷つけてはいなかった。「俺がヒメナを好きって気持ちを無理して隠していたから、鏡の中の俺が暴走しちまったのかもしれないな。」鏡は自分の生き映し。その言葉は真実かもしれない。
そうして事件は終わり、それぞれがそれぞれの世界に帰った。彼らの日常は戻ったが気は抜けない。鏡の中の自分勝手な誰かがまた、騒ぎを起こさないとも限らないから。
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