あ、あの声は?

文字数 601文字



とてもとても、静かな夜だ。

邪魔なモノは何もない、
煩わしさも感じない。

一日中で、一番好きな時間だ。

雨音がしても、風が吹いても、
この空気は負けていない。

陽が沈んで、暗くなっただけなのにな。

心の隅まで、足の指先まで、
暗い空気が染み渡る。

目を閉じても、夜空を見上げても、
髪の毛の先までもがそう言っている。

ココは故郷ではないけれど、
場所なんて選ばないんだ。

田んぼの畦道を走り回っていたあの頃、
テレビばかり観て居たから、
こんな夜の感覚なんて、
わかりはしなかったのさ。

初めて出逢った人の事や、
悪友とたわいも無い話をしてた頃、
幼馴染を気遣う時、
いつもこの空気、この時間だ。

回想と瞑想が入り混じる、
幸せも悲しみも、
喜びも不安も搔き消す様に、
夜鳴きの虫たちが話しだす。

あの頃は……
それは何年か前の事だろ?……
まだ幼かったんだな?君も……
いやいやつい最近も同じだよ〜……
そうだったか?……
うん、確かにね……

なんか楽しそうだから、
ぼくも虫たちの仲間入り。

たまに電車が通る音、
虫たちは負けてない。

ぼくの回想してる頭の中も、
だいぶ賑やかになってきた。

疲れたな、少し横になろうか。

毎日が忙しなく、
当たり前の夜にも気が付かず、
こうして今まで生きてきた。

生きている事の自然な事は、
自然の中で生きてきた事を
教えてくれる師だ。

学んでは居ない、今を感じて居る。
これからも何度も何度も
この空気を生きてゆく。

いや、
ずっとずっと今を感じて居たい……
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