第5話

文字数 330文字

 「あ、いや。なんでもない」
 蔵人はスマホのタイマーがもう五分すぎたことを知らせるアラームが鳴っていたことに気が付いた。

 覚悟は決まった。
 どうなってもいい、電話を切って。すべきことが一つに、ああ、選択肢がそれだけだと思われた。
 ごくりと唾を飲み込んだ。
 はさみで先ほどよりいっそう増えた、ピンクの蛇を切り取るんだ。

 大きな叫び声をあげながら、蔵人は自分の髪にはさみを入れた。いや、違う、無数の蛇にの間違いだ。気が狂いそうな痛みを伴いながら、蔵人ははさみを使う。落ちるピンクの蛇はフローリングの上でまだ動いている。蠢く、細かい痙攣なのだろうか。いいようのない不気味な元自分の髪だったらしい、モノ。
 蔵人はあまりの痛みと気持ち悪さに、目を閉じるとその場に倒れた。
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