第1話

文字数 736文字

自粛自粛の毎日、テレビではコロナ禍でも開店しているパチンコ店やその店に並ぶ人々のニュースが流れたりしていた。
私はパチンコをしないが、パチンコと言えば少し前(コロナ流行前です)に見かけたご老人を思い出す。

昼食のため、私は国道沿いの中華屋に入り、レバニラ炒め定食を注文した。
その中華屋は昔テレビ撮影で来店した若乃花の写真をたくさん飾っていた。

間もなく届いたレバニラ炒めを食べていると、隣のテーブルに二人組のご老人が座った。
帽子の方と白髪の方。年齢は70代くらいだろうか。
ご老人たちはエビチリ定食のご飯少なめと回鍋肉定食を頼んでいた。

「あの店、全然出ねぇって、今度文句言ってやろうと思ってよ」
「ハハッ」
「今日、あのオバサン店来てた?」
「いや、見てねえな」
どうやらお二人は、向かいのパチンコ店から来たようだった。

「これ(エビチリ定食)ご飯多いな~。ご飯少なめって言ったのに、もっと少なくて良いな」
「いや、食えるだろう」
二人の遠慮の無いやり取りが何だか良い感じだ。

嗄れた声。少しクチャクチャと咀嚼する音。
草臥れた様子。
仕事を引退してパチンコ店で会った友達と昼食。そんな生活を少し羨む。

お二人の会話がパチンコの話を深めていく。
「エヴァがよ、全然出ねえんだわ」
「リーチで綾波レイがよ」
「初号機が」
「昨日、北斗で出てよ」

パチンコのことは全然分からないが、ご高齢の二人の口から漫画やアニメに関連する単語がポンポン出てくるのが・・・

何だろう、これは。
この感覚は。
これが、萌えってヤツなのか。

「シンジ君が」
「まどマギがよぉ」
「やっぱ海だわ」

レバニラ炒めを食べ終えた私は、最後の杏仁豆腐をするりと腹におさめると、だいぶ爽やかになった。
ご老人たちのパチンコトークは続いている。
COOL JAPAN.
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