第1話

文字数 449文字

照りつける夏の陽射し。舞い上がる土煙。
この戦い、絶対に勝つ。
そのために僕は命懸けで投げなければならない。サイレンが鳴り響く中、僕は運命の一球を投じた。


小学4年で野球を始めた僕は、中学からリトルリーグのチームに入り、僕はチームの絶対的エースにまで成長した。
高校は県内屈指の強豪校に入学し甲子園出場を目指して野球に取り組んだ。高校生活最後の夏、僕らは県大会決勝まで駒を進めた。
あと一つで夢の舞台。
緊張と興奮が入り混じる。
試合開始のサイレンが響く中で投じた僕の渾身の第一球は、完璧に弾き返されバックスクリーンに突き刺さった。
それが決勝点であり唯一の失点だった。敗れ去った戦友のことを想うと申し訳なさでいっぱいで後悔の尽きない一球だった。

僕は今、10年前のあの一球を異国の荒野で思い出した。
照りつける夏の陽射し。舞い上がる土煙。
ふと空を見上げると遠くから爆弾を積んだ飛行機が飛んできている。
正真正銘、運命のかかった一球。
無惨にも敗れ去った戦友のためにも、
僕は思い切り腕を振り、
強く握りしめた手榴弾を放った。
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