第2話「たどり着いたよイワフネノ」

文字数 692文字

しばらく経って。
青年……改め、汐原キノコは、ふたりの仲間を連れてやってきた。


「う、うわー!!

彼女は驚愕した。
その仲間は、2mをゆうに超える巨漢だった。

「なんですか!その人ら!」
「なんだ、ゴーレムを見るのは、はじめてか?」
「ご、ごーれむ?」
「そう。鋼鉄に魔力を吹き込んで作られた巨人。害は無い」

筋骨、いや

隆々の彼らは、クマを持ち上げて運んだ。
彼女は、恐怖で固まっていた。鉄より硬かったかもしれない。


巨人の腕は、鉄とは思えぬ温もりがあって、案外心地良かった。
舟に揺られるように、担ぎ上げられたまま、雲の流れを目で追う。
思えば、空を眺めるのは久しぶりだった。

(ふるさとのみんなは、元気してるやろか……)

村が近づいてきた。
もっとも、彼女は持ち上げられているので見えているわけではない。
にぎやかな声、人の匂い……つまり、村の気配を感じているのだ。

村の入口には石造りの門がそびえている。
そこで一度、巨人たちは止まった。

「……ああ、旅人だ……大丈夫、怪しくは……」

キノコが、誰かと話をしている。おそらく門番だろう。
彼女は、石門のクオリティが、自分の村のモノより優れていることに気づいていた。


「着いたよ」
キノコが、旅の案内人のように、目的地の到着を知らせる。

「ゴーレムさん、ありがとう」
礼を言われた巨人は、無表情だったが、どこか照れくさそうだった。

村の景色を見る。彼女の故郷より、畑も、家も、少しだけ大きかった。

「ここは、イワフネノ村という」
「イワフネノ……ですか。聞いたことないなあ」

村人たちが、来訪者の顔を興味深そうに見ていた。

「とりあえず、この先に、村の医師がいるから、()てもらうといい」
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登場人物紹介

高嶺クマ

 主人公。ヌタリノ村の剣士。

 剣の修行中で、旅をしている。

 しかし方向音痴。

汐原キノコ

 巨大都市からイワフネノ村に派遣された役人。

 神経質で、いつも薬をかみ砕いている。

 都会の事情に詳しい。


 ウェルチという通信端末を持っている。


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