第1話

文字数 1,333文字

「最近観たアニメで一番好きなのは何?」
「『花びらの最期』かな。ストーリーの展開とキャラクターの強さが好き。」

二人はアニメフォーラムで出会い、共通の趣味を通じて親しくなった。毎日のようにチャットを交わし、次第にお互いの性格や価値観を知るようになる。

「あ、あなたが園くん?」
「うん、君が韻花さん?」

初めてオフ会で顔を合わせた二人。初対面の緊張と興奮の中、すぐに打ち解け、リアルな友情を築き始める。

「実は僕の両親が、君の両親を…」
「何を言ってるの?それ、本当なの?」

ある日、園は古い新聞記事を見つけ、自分の両親が韻花の両親を含む多くの人々を殺したことに気づく。園はその事実を韻花に告げる。

「なんでそんな冷静でいられるの?あんたの親、私の親を殺したんでしょ?」

オフ会の後、カフェで二人の話は続く。

「え、あんたの両親、私の親を殺してんだよ。なんで正面切ってそんな事伝えてくるの、しかもこんな時に」

「いや、特にそんなもったいぶる話でもないし、二人に共通する話題だから、今度会ったら話そうと思ってただけだけど」

「え、もったいぶる話じゃないって、あんたの親が私の親を殺してんだよ。それに何も思わないの?」

「いや、韻花のご両親が亡くなってる事は悲しいよ。でもそれは元々知っていた事だし。」

「そうじゃなくて、自分の親が目の前にいる私の親を殺してるんだよ?その事を何とも思わないの?」

「ん、親と僕は関係ないよ。他人と僕の関係ぐらい無関係だ。他人だから親がどうしてそんな事をしたのか理解できないぐらい」

「なんで、そんな淡々と喋れるの?」

「え?」

「園はいつもあんまり感情でないけどさ、流石におかしいよ。やっぱり殺人者の子供っておかしいんだ。何であんたの親があいつらなのよ。私はどうすれば、あんたをどうすれば…こんなに嫌な気持ち、はぁ、か、はぁはぁ…嫌だ嫌だ、なんでまた…」

韻花は過呼吸を起こし、救急車に連れ込まれた。

いつも物腰柔らかく、優しげな態度でどこか遠くを見据えて、冷静に見える園。
こんな時でもいつも通りな園にイライラし、憎しみを覚える。

自分はこんなにも親の事で苦しんできたのに、園は親が殺人者にも関わらず周囲に恵まれ、こんなに善い人間に育っている。周りに人も寄ってくる。

反して自分はいつもひとりぼっち。

そりゃあ、私だって親と自分たちが関係ない事は理解しているけど、普通の人間や、私のような恵まれなかった人間だったら、そんな事知らされたら冷静じゃいられない。

園が冷静でいられるのは、恵まれてるからだ。こんな状況でも穏やかでいられる強い心があるのは今までの生き方、生きてくるのを支えてくれた人たちが良かったのだ。

羨ましい、妬ましい、何で園の親は殺人者なのに、こんなに善くいきられるんだ。何で、私はこんな汚いんだ。

園の美しく残酷で無垢な心は、両親の過去を韻花に告げた。その冷静な反応が韻花を激しく動揺させる。韻花は自分だけが動揺している事に劣等感、園に対する嫉妬・増悪を募らせた。
彼女の心は再び孤独に戻る。2人の心は違いすぎた。それは決して親のせいではない。親から離れた人間がその後何に触れ、何を学び、何を得てきたか。

二人の間には大きな溝が生まれ、今後の関係性に深い影響を及ぼすことになる。
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