第1話

文字数 523文字

コロナが理由で仕事が無くなってから早数日。
明日は、ハロワの初の認定日だ。
このあと、どうなっていくのだろうという不安と、とりあえず解雇という形を取ってもらえたという事で、少しの期間のお金の心配がない事への安堵が入り混じった不思議な気持ちだった。
気を紛らわそうと、久しぶりに開いたSNSのページ。
医療従事者の友人がマスクが手に入らないと嘆いている事を見つけた。
視界が少し広がった。
自分の事しか見えていないことに気づいた瞬間だった。
年末に花粉症のことを考えて先に買いだめていたマスクがあることを思い出した。
解雇に伴い、有給を消化したから1日1枚は使っていたマスクが、予定よりも使わずに残っていた。
今、巷で逼迫しているマスク不足。でも、少なくてもあと数週間は殆ど家から出ないだろうと予測される自分。
最前線で働いているその勇者達が、2日で1枚とかそんな事実だけで簡単に天秤はその友人に傾いた。
迷いはなかった。
手元に、10数枚のマスクだけを残して、それ以外を寄せ集めてその友人に送ることを決めた。
自分にはできない場所で働いてくれているそんな友人がものすごく眩しくて、そして誇らしかった。
外に出る回数をなるべく減らすべく、認定日の帰り道に、郵便局へと向かった。

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