第1話

文字数 1,354文字

今あなたは、一体何を目的として生きている?
そんな質問に、この僕、
旭 茜(あさひ あかね)は絶対的な自信を持って一つの考えを持っていた。
「何をもってしてもいない。生きることの目標など存在しない。」という回答を。
ちなみに、これを他の人に言うと、問題から逃げているだの、それはなしじゃんなどと言って、
全くもって共感されたことがない。


いや、1人だけ居たか。あの少女が。
まあ、今はもう悲しいことにその少女はこの世にいないので、いないというのに結局は陥るのだ。

それを含めたとしても、人生で1人にしか共感されなかったことに僕は正直困惑している。
僕だってなにも考えなしに言っているわけでは
ないのである。
散々思考した挙句この回答なのだ。
僕も最初は、「目的は楽しむことだ。」とか考えていたものだけれど、どんどん考えてみると、
楽しんだところで何なのだろう、というのに
たどり着いた。
楽しんだ、からなんだ?「人生は楽しんだもん勝ちだ!」といったりもするけれど、なら楽しめないものは敗者なのか?苦しんで生きている者は
その時点で負けているのか?
楽しんだ者が勝つという意見は、楽をして生きてきたやつの言い分ではないか。


この考えに着いたとき、僕から楽しんで生きる
という目的は死んだ。


なら、「幸せに生きることだ。」という考えも
でた。これは中々良い回答ではないか!
これかもしれない!と思ったこともあった。
では、幸せになるには?
この疑問がでた瞬間、考えを止めれば良かったんだ。ここら辺で満足して、これを生きる目的として確立してしまえばよかったのだ。
しかし僕は考えずにはいられなかった。
いや、考えなければならなかったんだ。
幸せになるには、どうやら不幸と苦労、悲しみがつきものらしかった。
それは、先程もでた、あの少女で痛い程
感じたことだ。
ああ、あの少女といっても、勿論名前を忘れた
わけではない。ただ、あの子を思い出すと、
心の痛みが強くなるので、控えたいだけだ。
ここで少し紹介しよう。
その少女は、八宮 幸(はちみや さち)という。
黒髪で、艶のある長髪が美しい子だった。病弱な
子どもだったが不思議な子でもあって、生物の生き死にに敏感な子どもだった。
例を挙げるとすれば、病院の外に見えた猫を、
八宮は指差して
「あの子、危ない。助けてあげて。」
といったことがあったのだが、その猫は実は
病を患っていて、気づくのが遅れると危ない病気
だったのだそうだ。

そのようなことが何回かあった。

「どうして分かったの?」と聞いても、
八宮にも分からないようだった。なんとなく、
動きを見た感じ、危なそうだったとしか
言っていなかった。

と、いうような感じで、あの子は不思議で可憐な
子どもだったのだ。

話は逸れたが、その子とのある一件で幸せも
人生の目標から死んだ。

そこから悩んで悩んで悩み続けた結果、
何もないというのに落ち着いたという訳だ。

全く、気づいたらもう僕も高校2年生になって
しまっていた。あの子との別れは中学1年生の
秋頃である。

これまでを聞いて分かるように、この僕は
学校には勿論馴染めなかった。
人と人の輪という輪に入ることはできなかった。
そもそもしなかった。僕の男子高校生生活は
スタートダッシュで退場してもおかしくないレベルだった。

そして僕は、高2の6月後半から、学校へは


来なくなった。
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登場人物紹介

旭 茜 あさひ あかね

高校2年生

なにもやる気がない。

けだるげ

八宮 幸 はちみや さち

可憐な少女。

不思議な子ども。

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