第1話
文字数 2,663文字
俺の親父は非行中年だ。いい年こいて非行に走ったのである。
それは突然やってきた。俺はいつも通り学校から帰って、キッチンの横を通り過ぎようとした。だがキッチンから爺ちゃんと親父の言い争う声が聞こえた。俺は気になって、キッチンのドアを開けた。そこにはたばこをくわえながら、爺ちゃんに食って掛かる親父の姿があった。親父は普段たばこを すわない。酒も飲まない。いつも母さんの小言を肩をすくめて聞いている、そんな親父だった。なのに今目の前にいる親父は全く別人のようだった。
「うるせぇ、クソ親父。酒飲んで何がわるいってんだ。もう俺は二十歳はとっくに過ぎてんだよ」
よく見ると親父はリーゼントだった。しかも剃り込みまで入った気合の入れようだ。服も革ジャンに革のズボンだ。親父は爺ちゃんに文句を言うと、片手に持った一升瓶をそのままあおった。
「ば、ばかもん! 何を考えているんだ! ちゃんとコップについで飲みなさい!」
爺ちゃんが真っ赤な顔して怒っている。
「るせえな俺はこの飲み方がすきなの!」
「なにやってんだ親父」
あきれて言うと真っ赤になった顔をこっちに向け
「お、おう、和寿。今日から俺は非行に走るからな」
精一杯メンチを切って言った。普通非行に走るのに宣言はしないと思うが。それにたばこを吸うのも、酒を飲むのもこの年齢では非行でない。
「へ、へえ」
引きつって答える。
「母さんは?」
「ふん、あんな小言ババアしらね」
そういうとそのままドスンと椅子に座った。爺ちゃんは怒り心頭という感じで真っ赤な顔をして震えていた。
今日も親父の非行は続いていた。今日は所属している暴走族の集会で留守だ。家族の反応はというとものすごく冷たかった。母さんは「あっそ」と言い、妹は「へえ」と言った。
「心配じゃないのか? みんな?」
「べつに」
と妹。
「私の稼ぎで十分まかなえるわよ」
と母。ちなみに母親は小さい会社だが一応社長だ。
「そんな心配なら見に行けば」
「やだよ。一応暴走族だぞ。行ったってつるし上げられるのが関の山だよ」
「あっ! そうだ。あの人に買い物頼まなきゃいけないんだった。和寿行ってきて」
「えー」
「お駄賃上げるから」
「いくら?」
母はぴっと人差し指をたてた。
「千円? それじゃあな・・・・・・」
「一万」
「行きます!」
金がない俺は即答した。
俺は暴走族のたまり場にいた。もちろん遠くの茂みに隠れて見ている。親父の姿が見当たらない。すると、人をかき分けジュースを袋いっぱいに持って帰ってきて、みんなに配っている。親父はやはりここでも肩身の狭い思いをしていた。
「親父~」
俺は涙を流した。せっかく非行に走ってまで自分を変えようとしたのにこの姿。なかなか自分を変えるのは難しいらしい。俺は少し近くで様子を伺うことにした。
「おい。おっさん。なんか食いもん買ってこいや」
したっぱと思われる少年が言う。もちろんおっさんとは親父のことだ。
「は、はい。ただいま」
親父は引きつった声で返事をして、走り去った。チャンス。今しかない。
俺は親父の後を追った。
親父はコンビニにいた。俺は出てくるのを待ち、話しかけた。
「親父」
「!」
親父はたいそう驚いている。今にも品物を落としそうだった。
「和寿、何でここに」
「親父。もうやめようぜ。今なら母さんたちも許してくれる」
「う、うるせえ。俺は非行中だ」
なかなか言うことを聞いてくれない親父を説得していると。バイクの重低音が聞こえてきた。
改造バイクから降りてきた少年たちは親父を見つけるとでかい声で話しかけてきた。
「おっめー、おつかいもまともにできねーのかっよ」
少年は俺を押しのけ親父に迫る。
「す、すみません。今帰ろうと・・・・・・」
「いいわっけわいいんだっよ。はやく行くぞぉ」
少年は後ろから蹴り飛ばすと親父は転んだ。それを見た二人の少年はゲラゲラと笑った。
俺はそれを見ていてはらわたが煮えくり返っていた。もう暴走族が怖いとかそんなことは吹き飛んでいた。
「おい」
「あぁ」
「あやまれ」
「なんだこいつ」
「和寿!」
「はっは~ん。お前こいつの子供か」
少年の一人がにやりと笑った。するといきなり殴ったきた。痛みを感じないほどつよく殴ったのか! とよく見ると親父が少年の腕に両腕でしがみ付いていた。
「頼む。息子だけは」
「てめー」
親父がたこ殴りにされている。まずい親父のリミッターを開放しなけければ。普段はうざいので気おつけていたが、今こそ親父のあの姿を・・・・・・。なにかないかとポケットをまさぐる。すると一万円札が出てきた。これだ!
「親父」
俺は一万円札を広げた。
「よく見ろ。ぞろ目だ」
そう。運よく製造番号がぞろ目なのだった。
「いいもん持ってんじゃん」
気がつくと少年たちは標準を俺に合わせていた。
「いや~、これは」
脂汗を滝のようにかき、俺は後ずさった。少年は胸ぐらをつかんできた。
「ちょっと、落ち着こう。お兄さん」
「ああ!」
メンチを切る少年。すると、
「HA HA HA」
間一髪で親父が目覚めた。
「う~ん、ハイテンション」
いっせいに振り向く少年たち。ハイテンションお父さんの降臨だ。
「non non 君たち。そのハイテンションすぎる品物は僕の物だよ」
言葉を失う少年たち。はっと我に返り再び親父いや、ハイテンションお父さんに近づく。
「なんだてめー。とち狂ったか!」
いきなりぶん殴る。
「ぐはっ」
ハイテンションお父さんが。
「non non 年上には敬語が基本だよ HA HA HA!」
「てめー!」
もう一人の少年が殴りかかるのをするりと抜けて、後ろ回し蹴りを放ちその勢いでくるくるコマみたいに回った。そしてぴたっと止まり。
「Complete!! HA HA HA!!」
「すげー。さすがハイテンションお父さん」
俺が感心していると、親父が改造バイクにまたがった。
「さあ のれ! 息子よ!」
「え?」
「ヘッドを倒しに行くぞ!」
ハイテンションになっても非行はやめないのか。少しがっかりしていると。親父はさっさとバイクで集会所へ向かった。俺はため息をつき、仕方なく親父を追った。
俺はハアハア言いながらやっと集会所にたどり着いた。ちょうどその時親父はヘッドを昇○拳でKOしていたところだった。
「く、くそ。こうなりゃあの人を呼ばないと。先生、先生!!」
なんで暴走族のヘッドが先生雇ってんだ、と思ったが、その先生が出てきた。その姿は迷彩服に上半身裸、マシンガンの弾を巻いていた。
「先生、やっちゃってください」
ヘッドが言う。
それは突然やってきた。俺はいつも通り学校から帰って、キッチンの横を通り過ぎようとした。だがキッチンから爺ちゃんと親父の言い争う声が聞こえた。俺は気になって、キッチンのドアを開けた。そこにはたばこをくわえながら、爺ちゃんに食って掛かる親父の姿があった。親父は普段たばこを すわない。酒も飲まない。いつも母さんの小言を肩をすくめて聞いている、そんな親父だった。なのに今目の前にいる親父は全く別人のようだった。
「うるせぇ、クソ親父。酒飲んで何がわるいってんだ。もう俺は二十歳はとっくに過ぎてんだよ」
よく見ると親父はリーゼントだった。しかも剃り込みまで入った気合の入れようだ。服も革ジャンに革のズボンだ。親父は爺ちゃんに文句を言うと、片手に持った一升瓶をそのままあおった。
「ば、ばかもん! 何を考えているんだ! ちゃんとコップについで飲みなさい!」
爺ちゃんが真っ赤な顔して怒っている。
「るせえな俺はこの飲み方がすきなの!」
「なにやってんだ親父」
あきれて言うと真っ赤になった顔をこっちに向け
「お、おう、和寿。今日から俺は非行に走るからな」
精一杯メンチを切って言った。普通非行に走るのに宣言はしないと思うが。それにたばこを吸うのも、酒を飲むのもこの年齢では非行でない。
「へ、へえ」
引きつって答える。
「母さんは?」
「ふん、あんな小言ババアしらね」
そういうとそのままドスンと椅子に座った。爺ちゃんは怒り心頭という感じで真っ赤な顔をして震えていた。
今日も親父の非行は続いていた。今日は所属している暴走族の集会で留守だ。家族の反応はというとものすごく冷たかった。母さんは「あっそ」と言い、妹は「へえ」と言った。
「心配じゃないのか? みんな?」
「べつに」
と妹。
「私の稼ぎで十分まかなえるわよ」
と母。ちなみに母親は小さい会社だが一応社長だ。
「そんな心配なら見に行けば」
「やだよ。一応暴走族だぞ。行ったってつるし上げられるのが関の山だよ」
「あっ! そうだ。あの人に買い物頼まなきゃいけないんだった。和寿行ってきて」
「えー」
「お駄賃上げるから」
「いくら?」
母はぴっと人差し指をたてた。
「千円? それじゃあな・・・・・・」
「一万」
「行きます!」
金がない俺は即答した。
俺は暴走族のたまり場にいた。もちろん遠くの茂みに隠れて見ている。親父の姿が見当たらない。すると、人をかき分けジュースを袋いっぱいに持って帰ってきて、みんなに配っている。親父はやはりここでも肩身の狭い思いをしていた。
「親父~」
俺は涙を流した。せっかく非行に走ってまで自分を変えようとしたのにこの姿。なかなか自分を変えるのは難しいらしい。俺は少し近くで様子を伺うことにした。
「おい。おっさん。なんか食いもん買ってこいや」
したっぱと思われる少年が言う。もちろんおっさんとは親父のことだ。
「は、はい。ただいま」
親父は引きつった声で返事をして、走り去った。チャンス。今しかない。
俺は親父の後を追った。
親父はコンビニにいた。俺は出てくるのを待ち、話しかけた。
「親父」
「!」
親父はたいそう驚いている。今にも品物を落としそうだった。
「和寿、何でここに」
「親父。もうやめようぜ。今なら母さんたちも許してくれる」
「う、うるせえ。俺は非行中だ」
なかなか言うことを聞いてくれない親父を説得していると。バイクの重低音が聞こえてきた。
改造バイクから降りてきた少年たちは親父を見つけるとでかい声で話しかけてきた。
「おっめー、おつかいもまともにできねーのかっよ」
少年は俺を押しのけ親父に迫る。
「す、すみません。今帰ろうと・・・・・・」
「いいわっけわいいんだっよ。はやく行くぞぉ」
少年は後ろから蹴り飛ばすと親父は転んだ。それを見た二人の少年はゲラゲラと笑った。
俺はそれを見ていてはらわたが煮えくり返っていた。もう暴走族が怖いとかそんなことは吹き飛んでいた。
「おい」
「あぁ」
「あやまれ」
「なんだこいつ」
「和寿!」
「はっは~ん。お前こいつの子供か」
少年の一人がにやりと笑った。するといきなり殴ったきた。痛みを感じないほどつよく殴ったのか! とよく見ると親父が少年の腕に両腕でしがみ付いていた。
「頼む。息子だけは」
「てめー」
親父がたこ殴りにされている。まずい親父のリミッターを開放しなけければ。普段はうざいので気おつけていたが、今こそ親父のあの姿を・・・・・・。なにかないかとポケットをまさぐる。すると一万円札が出てきた。これだ!
「親父」
俺は一万円札を広げた。
「よく見ろ。ぞろ目だ」
そう。運よく製造番号がぞろ目なのだった。
「いいもん持ってんじゃん」
気がつくと少年たちは標準を俺に合わせていた。
「いや~、これは」
脂汗を滝のようにかき、俺は後ずさった。少年は胸ぐらをつかんできた。
「ちょっと、落ち着こう。お兄さん」
「ああ!」
メンチを切る少年。すると、
「HA HA HA」
間一髪で親父が目覚めた。
「う~ん、ハイテンション」
いっせいに振り向く少年たち。ハイテンションお父さんの降臨だ。
「non non 君たち。そのハイテンションすぎる品物は僕の物だよ」
言葉を失う少年たち。はっと我に返り再び親父いや、ハイテンションお父さんに近づく。
「なんだてめー。とち狂ったか!」
いきなりぶん殴る。
「ぐはっ」
ハイテンションお父さんが。
「non non 年上には敬語が基本だよ HA HA HA!」
「てめー!」
もう一人の少年が殴りかかるのをするりと抜けて、後ろ回し蹴りを放ちその勢いでくるくるコマみたいに回った。そしてぴたっと止まり。
「Complete!! HA HA HA!!」
「すげー。さすがハイテンションお父さん」
俺が感心していると、親父が改造バイクにまたがった。
「さあ のれ! 息子よ!」
「え?」
「ヘッドを倒しに行くぞ!」
ハイテンションになっても非行はやめないのか。少しがっかりしていると。親父はさっさとバイクで集会所へ向かった。俺はため息をつき、仕方なく親父を追った。
俺はハアハア言いながらやっと集会所にたどり着いた。ちょうどその時親父はヘッドを昇○拳でKOしていたところだった。
「く、くそ。こうなりゃあの人を呼ばないと。先生、先生!!」
なんで暴走族のヘッドが先生雇ってんだ、と思ったが、その先生が出てきた。その姿は迷彩服に上半身裸、マシンガンの弾を巻いていた。
「先生、やっちゃってください」
ヘッドが言う。