今日。僕は君の後を追いかける。

文字数 917文字


 なんで…。なんでなんだよ…。
 どうして言ってくれなかったんだよ…。

 僕は昨日大切な彼女を失った。
 彼女は僕に何も言わずに逝ってしまった。

 病気があれば言ってくれたってよかったのに。
 でも…。俺のせいなんだ。
 俺がもっと早く病気に気づいてあげていれば…。
 こんなことにならなかったのに…。

 俺は彼氏として失格だろう。
 今すぐ彼女の元へといかないと…。
 彼女の元へ行って謝らないと…。

 そう自分の中で決めた。
 そしてここに来た。

 マンションの屋上…。
 ここから飛び降りないと彼女の元へ行くことができない。

 彼女と付き合った時…。
 俺は死ぬ時まで一緒という約束をした。

 その約束を守らないといけないのに。

 死ぬのがこんなに怖いことだったのか。
 あいつはこんな恐怖に耐えながらもあんな笑顔で接してきてくれていたのか。

 考えれば考えるほど辛くなる。

 でも決めたことだから…。

 その時だった。

「優希何してるの。」

 突然俺の名前を呼ばれた。
 振り返ると彼女のお姉ちゃんがいた。

「どうしてここに。」
「後を追って死んじゃいそうだなって思ったから。」
「はあ。」
「ここじゃあれだしカフェでもいかない?」
「でも逝かないと。」
「制限時間なんてないんだからいいじゃない。いつ死んだって。」

 結局カフェに行くことになった。

「俺のことを止めにきたんですか。」
「別に。」
「じゃあ何しに。」
「あの子が最後に言った言葉を言いにきたのよ。」
「なんて?」
「あの時の約束…。破っていいから。優希くんらしく私の分まで…。」
「え?」
「あんたたち2人がどんな約束をしたか知らないけれど、あの子を悲しませるようなことだけはしないでね。」

 俺は何も考えられなかった。

 彼女が言った死ぬ時まで一緒という言葉。
 もうすでに守れてないんだよ…。

 俺はもう一度屋上へ向かった。

 芽依…。
 お前のいない人生なんて考えられないんだ。

 でも芽依の約束は破れない。
 お姉ちゃんは俺に生きてほしい。そう思って言ってきたのだろう。

 でも一緒に死ねてないんだもん。
 約束なんてもう破ってるんだよ…。

 芽依…。
 ごめんね…。
 最後まで気付けなくて。

 今そっちに行くから…。

 そうして俺は屋上から静かに降りた…。
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