1 微睡み

文字数 577文字

今でもまざまざと思い出すことができます。あの日は銀河のお祭でした。授業で教わった後に広がる空はいつもより特別に思えてぼくは走り出していました。舟の上ではずぅっと川面に揺れる天の川が面白くってたまらなくて眺めていました。烏瓜を流すとき今思えばおかしなことですが、天の川の流れにどうしても烏瓜を乗せたくて少し強めに押しやりました。一瞬、視界の端に見た銀河は、今まで見た銀河の中で一番美しい姿をしていました。銀河の光を頼りに水面に向かいましたが、もはや上下も分からずただ暴れているだけでした。もがいているうちにふわりと体が軽くなった気がしました。精一杯水を蹴って腕を伸ばしました。ようやく鉛のような水から出られたのです。もう、少しずつ冷える頃合いでしたので体はぶるぶると震えていました。マルソが
「カムパネルラがね、水に飛び込んだのよ」と言っていおりましたので、皆息を飲んで銀河の揺れる川面を見つめていました。

カムパネルラは二度と上がってきませんでした。


ザネリは目を見開きました。目には変に熱い涙が溜まっていました。ザネリは昨日珍しく風邪をひいたことを思い出しました。こんなにも体が熱くなるのはあの日以来だなと思いました。蝉の声はまだ夏を彩っているというのに、体はこんなにも熱いのに、寒気が止まりませんでした。ザネリはもう一度毛布をかぶり直し目を強く瞑りました。
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