第1話 死神と追いかけっこ

文字数 988文字

「待ってくれ!頼むから、待ってくれ!」

ボクは奴を追いかける。もう何年も何十年も追い続けている。見失いかけた事もあったが、絶対つかまえるというボクの執念が奴を追いかけさせている。

「勘弁してくれ、無理だって言ったろう!? 何でわかってくれないんだ!」

奴が振り向きながら怒鳴り散らす。

そうかも知れない。だけど、もうボクにはこれしかないんだ。唯一の希望は、あの”死神”に追いついて殺してもらう事だけなんだ。

向こうの世界で車に轢かれ、神様の温情で転生した時に願ったのは「不老、不死、不死身」。今思えばバカな願いをしたものだ。最初の内は良かったが、千年も生きているといい加減死にたくなる。しかし自分自身でも、こればっかりはどうにもならない。

だけど……。

ボクが事故に遭った時、ちらりと見えた死神の顔。あいつをこっちの世界で見つけた時には小躍りしたね。だけどあいつは「不死、不死身は殺せない」なんて言いやがる。

死神の意地ってもんはないのかよ。チャレンジだよ、チャレンジ精神! 一度はボクを死へと導いたんだから、アフターサービスだと思って試してくれたっていいじゃないか!

「おおい、待ってくれ~。ボクを殺してくれ~」

ボクは懇願しながら、今日もまた死神を追い続ける。

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あぁ、何でこんな事になってしまったんだろう?

俺があいつに追いかけられてから、一体何年、いや何十年が経ったんだ。俺のミスでまだ寿命を迎えていない奴を、間違って交通事故に遭わせちまったのが第一の間違い。

死神にだって罪悪感はある。だから神様のところへ行って、どうか彼の望みを何でも叶えてやって下さいと懇願したのが第二の間違い。

そして千年たって、奴の様子をフト見に来てしまったのが、第三の間違い。運悪く見つかってしまい、延々と追いかけられる羽目になっちまった。いくら死神だって、不死、不死身の奴を殺せるわけないだろうが!

あいつは試すだけ試してくれなんて言ってるが、それで駄目だったら俺は死神界の笑いものだよ。信用を失い、二度とまともな仕事は回ってこないだろうさ。

ほんと、いい加減に諦めてくれよ!

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「あぁ、あの間違いを取り戻したい!」

不死身の男が叫ぶ。

「あぁ、あの間違いを取り戻したい!」

ドクロの死神が叫ぶ。

それを天上から、全てを画策した神がニヤニヤと眺め楽しんでいる。

一番の愚か者は誰?
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