第3話 ぺろぺろキャンディーず。

文字数 1,166文字

     ☆

 2匹の名前は、ペルとペロ。
 母は、『娘の憧れの国ペルーと、大好きな童話作家ペローから採った、…らしい。』
 と、ひとに説明しているが。
 事実は、ちょっと違う。

     ☆

 2匹をジョアンが拾ってきた当初、
 一家は、ひとつの大きな古い屋敷に、
 祖父母夫婦と、
 その子である兄妹それぞれの夫婦が二組、
 まだまだ騒々しい、子育ての最中で。
 さらには年長の孫が、双子連れで出戻ってきたり…
 で、
 どったんばったん! ひしめいていて。

「うちでは動物まで、とてもムリよ!
 もといた場所に返してきなさい!」と、

 叱られたのだが。

     ☆

 途方に暮れたジョアンが。
 3軒離れた小さい家に避難して、穏やかに一人暮らしをしている、画家で写真家の曽祖父に、泣きついたら。
 よしよしと笑いながら、ひきとってくれて。

     ☆

 翌朝、様子を観に行ったら…

「ぺろっとゆっくり舐めるのがペロで、
 ぺろぺろ忙しく嘗めるほうがペロペロ。」

 と、祖父は、にこにこしながら、
 二匹はけっこう性格が違うようだと、
 自分の手や顔を嘗める時の仕草を観察した結果からの、
 命名の由来と、日本のギタイ語を説明してくれて。
「日本ではこれを『ぺろぺろキャンディー』って呼ぶんだよ~」と、
 棒付きの大きな飴までくれたのだが。

          ☆

 あいにく、二匹は、この名前を、識別しなかった…。

「ペロ~!」と呼べば、当然のように
 ペロペロも一緒に走って来るし。
「ペロペロ!」と呼べば、
 ペロは『自分が2回呼ばれた』と思って、
 律儀に「あん!あん!」と2回鳴いて返事をしながら(ペロペロのほうを追い越して)
突進してくるし…

          ☆

 曽祖父の惣太は、苦笑した。
 散歩は2匹一緒でいいが。
 シャワーやブラッシングは、一匹ずつ呼びたい。
「ちょっと待て!」と一方に言っても、
「え、呼んだでしょ?」と、まつわりついてきて…
「待て!」と言うと、両方同時に固まるし…。

 あと、いたずらを叱る時にも。
 呼び名を認識してもらわないと…
 しつけに困る。

     ☆

 それで、試行錯誤の結果。
 ペロは、そのままで…
 ペロペロのほうは、縮めて?
『ペル』と呼ぶことに、なったのだ。

     ☆

 曽祖父と二匹の。
 短いが、賑やかで幸せそうだった、
 数年間の思い出を…

     ☆

 後に、ジョアンが書いた文章が。
 愛犬雑誌の、小さいが、賞をとって。
 少額だが、賞金も出たので。
 ジョアンは大喜びで。
 曽祖父亡きあと、ひきとって、一緒に暮らしている二匹のために…
 『老犬用』と書かれた、すこし高いドッグフードを、山ほど買い込んだ。

          ☆



(ジョアン・スミスと、
 アジテイタ・スミス(『FFF』参照)が、
 同居で育った従姉弟どうしだよ~、
 という、どうでもいい裏設定付きw)
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