特別な日

文字数 866文字

今、私はスマートフォンの画面と睨めっこ中だ。
もうかれこれ1時間以上経過している。


現在の時刻は24時30分。


別に睨めっこしたくてしているわけじゃない。
ただ私に少しばかりの勇気が足りなくて…


文字を打っては消し、打っては消し…

ずっとあなたとのトーク画面を
開いてしまっているから、
もし今あなたから連絡がきたら
すぐに既読がついてしまうだろう。

だけど、あなたからメッセージが
送られてくることは確実にない、と
言い切る自信がある。

だってあなたはいつも待っているでしょ?

遊びに誘うのも私。
おはようって言うのも私。
ごめんねって謝るのも私。



今日みたいな誕生日なんて特に。



あなたは本当は祝ってほしいけど
自分からアピールは出来なくて

きっと今もすごく待ってる。

ごめんね。30分も過ぎちゃった。


ちゃんといままでみたいに
日付が変わって
すぐ送ろうと思ってたのに。


今年の、いや、今日の私はおかしくて。


なんだかあなたへの気持ちが溢れてしまって
ずっと隠しておこうと思っていた気持ちが
制御できなくなってしまった。


こうなったらもう伝えるしかない。


だけど、鈍感なあなたに この文で
ちゃんと伝わるだろうか?


今まで打った文字を全て消す。
よし、もう一度練り直そう。


まだ少し時間がかかってしまいそうだ。



24時40分。

なんとか文を作り終えた。
あとは送るだけ。
緊張しすぎて口から心臓が飛び出てしまいそう。

やっぱり送るのをやめようか、なんて
一瞬だけ思ったけれど、

後悔はしたくない。
今がチャンスかもしれない。

私はヤケクソになって
ぎゅっと目を瞑って送信ボタンを押した。


今日はもう寝てしまおう。
私が私じゃない。
深夜だから
おかしくなってしまったのかな。
こんな時は早く寝ないと。


そっとスマホを閉じ、私も目を閉じた。




24時50分。



暗闇の中で
私のスマートフォンに
1件のメッセージと着信が入る。

あなたからだ。


どうしよう。手が震えている。
きっと声も震えてしまうだろう。





だって、着信が来るほんの数秒前に来た
メッセージの中身を見てしまった。

あなたのその言葉はどういう意味なの?



『私にも気持ち、伝えさせて』だなんて。
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