その国の夜明け

文字数 671文字

「え〜、例の伝染病による二回目の非常事態宣言の際に、何故、学校の閉鎖をしない事を()総理に進言されたのでしょうか?」
 国会では、厚生官僚を参考人として招いた質問が行なわれていた。
「は……は……。あの病気は、老人は重症化しますが、子供や若者は発症・重症化の可能性が極めて低かったので……」
「『子供や若者は発症・重症化の可能性が極めて低い』とは『子供や若者は感染する確率が低い』と云う意味では無いですよね?」
「は……はい……」
「では『感染はするが発症・重症化の可能性が低い』人達を感染リスクのある環境に置いた結果、何が起きましたか?」
「は……はい……その……」
「正直に答えて下さい。ここでの貴方の発言は、万が一、貴方が刑事または民事裁判の被告人と成った際に証拠としては使えない事は事前に説明している筈です」
「は……はい……。子供や若者が……健康なままウイルスを撒き散らし続けました」
「更にその結果、どうなりましたか?」
「え……っと……前政権の閣僚の大半を含め、五十代以上の人々が多数……」
「死んだんですね」
「はい……」
「では、この場に()られる全議員の皆さん。私としては、この方が我が国を生れ変らせてくれた功績を評価し、特別ボーナスの支給を提案するものであります」
「えっ?」
 その時、議場の議員の大半が賛同の拍手を行なった。
 その国では、前政権が、よりにもよって、自分達が老人を皆殺しにしかねない伝染病対策を行なっている事を気付かなかったせいで、国会議員の平均年齢は四十前半、国会議員の半分以上が二・三十代となり、更に年金の破綻も避けられたのだった。
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