第1話

文字数 2,080文字

 ほんの些細な喧嘩だった。
 きっと、彼女は俺の事を許せなく思っているんだろう。
 俺にとっては単なる女友達のSNSメッセージ。
 趣味とか境遇が一緒で意気投合しただけ。
 俺には友達以上には感じない存在ではあった。
 もちろん、その友達にも俺の素性を話していて、それを承知の付き合いだ。
 決して浮気なんかではない。
 俺は彼女に対して一途だ。
 でも、こんな俺だから……女の子にはなつかれる性格のようだから……。
 彼女には信用されていないんだろう。
 SNSメッセージを見たとたんに、彼女は激昂した。
 これは浮気だと……。俺にはそんなつもりはないのに……。
 彼女は束縛の癖がある。
 実際には重苦しく感じる。
 付き合う前にスマホを見せ、彼女がみて怪しいと思われたアドレスは全部消された。
 そして、そのスマホを壊して風呂場に沈めろと迫ってきた。
 正直わからない。
 なんでそこまで俺を束縛したがるのか……。
 女の子と言うものはこれほどまでに束縛したがるのだろうか?
 何度でもいう。俺は彼女一筋だ。なんでこれを浮気と言うのかわからなくなった。
 過去の交友関係もしつこく聞いてくる。
 長年生きていれば、そりゃ交際だってしたことだってある。
 それに対しても彼女は嫉妬した。家と言われて話したまでなのに……それが気に食わなかったらしい。
 そうこうしていると、俺は彼女の言う通りになっていた。
 男友達と遊ぶのさえも、許せないとの目で見られた。
 だから、俺は男友達との縁も切っていった。
 そして、残ったのは彼女一人。
 でも、彼女の束縛が辛くて、ついSNSに苦しさをぶちかまけてしまった。
 そんなことをしていた時、SNSの女の子と知り合った……そんな経緯だった。
 彼女もまた束縛彼氏に苦しんでいたようだった。
 俺は男として彼女にアドバイスをしていた。ただそれだけだった。
 顔も知らない相手……俺にとってはその程度にしか過ぎなかった。
 でも、彼女は違った。このSNSのやり取りを見て、激昂してわかられ話を持ち掛けてきたのだった。
 俺は……もう彼女しか残っていないというのに……。
 ただ……相談をしていただけなのに……。
 彼女が去ってしまうと、俺にはもう何も残され無いというのに……。
 すべてを奪っていった彼女。
 俺は絶対に許しをもらって、何とか復縁したいと考えていた。
 復縁が出来ないのであれは……それは……。


 私は彼のスマホが鳴る音を聞いた。
 彼にも後ろめたいことが無いなら、私がスマホを見ても問題ない。
 そう思っていた。
 けど、その通知は私を激昂させるものだった。
 女からだった。
 私は許せなかった。
 私と言うものがありながら、なぜほかの女と会話するなんて……。

 「これは何?」
 「え……えっと……」
 「なに!? 言えない関係なの!?」
 「そんなんじゃ……」
 「だったら言ってよ!! なんで私が居るのにほかの女と会話なんてしてるの!?」
 「それは……恋愛相談に乗ってただけで……」
 「へぇ~、なんかメッセージはかわいらしい子ね。私と違って!」
 「いや、そんなんじゃないから……」
 「私なんかより、この子の方がいいんじゃないの!?」
 「いや、俺は一途だ! 信用してくれ!」
 「いや! だって私の約束破って、誰かと……しかも女の子となんて話してるなんて気持ち悪い!」
 「だって、もう相談する友達だって、お前の言う通り整理したんだよ? 俺にはもう何も残されてないんだから……」
 「じゃあ、この女は違うの!?」
 「いや、それは……」
 「はっきりして!」
 「俺にとっては、お前一人で他なんて何も考えてはいない!」
 「嘘よ! こんな女なんて作って! 私は許せない!」
 「いや、だから、相談しただけだって……」
 「え? 何を? こんなに仲良くやってるくせに?」
 「じゃあ、お前はどうなんだよ?」
 「私のスマホは見せないよ? だって気持ち悪いもん」
 「そんな……人にはいろいろ言って、お前は自由なのか?」
 「私の勝手でしょ! 私が好きなら私の言う通りにして」
 「わかったよ……」
 「いや、もう信じない! 別れましょ!」
 「嫌だ! 俺にはもうお前しか……」
 「嘘! もう信じない! 私以外の女と交友したなんてもう許せない!」
 「だから、どうすれば許してくれるんだよ……」
 「だ・か・ら! 別れましょ。もうそれでおしまい。そしてもうあなたは自由にすればいいじゃない?」
 「いや、違うって……」
 「……」
 「なあ?」
 「……」
 「おい!」
 「……」
 「なんで話してくれないんだよ!」
 「私の方はもう話す必要無いから」
 「なぁ……どうすれば……」
 「別れてよ」
 「……」

 もう、知らない……。
 こんなことされて、私傷ついた。
 絶対に私を裏切ったことを許さないんだから……。
 私はもっと素直な人の所に行く。
 そう決めたんだから。
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