第2話

文字数 480文字

 ある時僕は言った。
「一人にして」
心を閉ざしたかったけど彼女がいると心が痛い、嫌だ、閉ざしたくない、僕はぼくだ!って悲鳴を上げ始めるから。彼女は
「一人になりたいからって一人にしていいってことじゃないんだよ。今君を一人にはしたくない、ここにいる」
と言い切った。その時はほとんど自己主張せずに基本は受け身の彼女から発せられた強い言葉に圧倒されてうなずいた。後からどういうことだったのか聞くと「ほおっておいていいことなんてないと思うんだ」と少し恥ずかしそうに教えてくれた。驚いたけれどうれしかったのを覚えている。自分のために言葉を発してくれる、それがうれしかった。

 私は今泣いている。枕に向かって叫んでいる。何もしてあげられないのに軽々しく「大丈夫?」だとか「無理しないで」なんて、言えない。「死なないで」なんて言えない。もちろん生きていてほしいと思う。でも苦しんで心がボロボロになりながらも生きていてほしい、って言うのは残酷だと思う。それでも生きていてほしいと願う自分にいらだって、それを伝えることすらできなくて自分を殺してしまいたくなる。無力な自分が大嫌いだ。

 
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