告白

文字数 1,278文字

 次の日の朝。燦々(さんさん)と照らされる太陽の光を浴びながら、アイと散歩することにした。

 デートといえば、定番の遊園地とか女の子が好きそうなカフェやケーキ店などだろうが相手はロボットだ。人間のものを口にできないだろうし、遊園地に行けば大勢の人の注目の的になってこっちが恥ずかしい。だから、メジャーではない散歩をしている。これだったら、あまり周りを気にせずにできると思った。

 彼女と歩くのはとても楽しい。はしゃいだりはしないけど、初めてのものに指をさしては「これ何?」と聞いてくる。

 例えば近くに生えている木を指さされて、「桜の木だよ。今は夏だから緑の葉っぱが覆っているけど、春になると桜の花が咲いてね。ピンク色に染まるんだ」と説明。すると彼女は頭からアンテナを出して、またインプットしていた。彼女曰く、「いろんなことが学びたい」とのこと。

 彼女と話していると自分も色々と学べるところがあって、とても楽しい。


 初めて出会ってから時間が経ち、いろいろな場所へ行った。仕事であまり時間は取れなかったが、近くの海を見に行ったり神社へ行って神様に願い事を唱えたり。

 いろいろな話をして盛り上がりすごく楽しかった。こんなの高校生以来、ひさしぶりだ。上京した友達は、元気にしているのかな?


 仕事から帰ってきた僕は彼女と家でくつろいでいた。初期の頃より人間味に溢れている。

 表情も少しづつ変えられるようになったし、自分の意思を発するようにも。AIの技術はすごいなと思う反面、少し怖くなってきた。

 人間と同じものを食べて、人間のようにコミュニケーションが取れるものが開発されたらもう人間はいらなくなるのでは?そう思えてしまい、彼女のことを投げ捨てたくなってしまった。捨てられた理由も分かった気がする。

「どうしたの?暗い顔してるわよ」

 口に笑みをこぼしてこちらを見てくる。それが怖くて、彼女の顔を見れなくなってしまった。

 僕が目線を逸らしていると、彼女の灰色の手が僕の頬にあたる。そしてキスをしてきた。何が起こったのかわからず、戸惑いを覚える。

 アイは唇から離れて、おでこをつけてきた。冷たくて、ひんやりとした触感。

「人間はこうやって愛情表現をするって調べたら出てきたの。どうだった?」
「愛されている感じがしていいね」
「よかった!私、タケシのこと好きだよ。あなたは?」
「僕も好きだよ」

 ロボットの身体を抱きしめ、僕は泣いていた。なぜ涙が出ているのかわからない。
 多分初めて恋愛というものをして、嬉しかったからだろう。正直なところ、よく理解できない。

「泣かないで。タケシはいい子よ」
「ありがとう、アイ」

 励まされて、余計に自分が惨めに感じてしまった。AIを搭載したロボットにこんなこと言わせて、何をしているんだ。僕は!

 次第に怒りが込み上げ、涙が吹っ飛んだ。

 彼女のことが憎くてしょうがない。壊したくなってきた。でも壊さないさ。そんなことしたら、今までの思い出が全部水の泡。自分の嫉妬心を無闇やたら、物にぶつけてはいけない。

 知っているさ。物は大切にしないと、バチが当たるってことくらい。
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