第1話

文字数 1,122文字

りんともりのまもの

「さいきんは、ことりのうたがきこえなくてな」
 りんのだいすきなおじいちゃんが、さみしそうにいいました。おばあちゃんもうなずいています。
 なつやすみのりんは、もりのそばにある、おじいちゃんとおばあちゃんのいえにとまりにきていました。そういえば、にわにあそびにきていたことりもみかけません。
 よくはれた、つぎのひのことです。りんは、おじいちゃん、おばあちゃんのためにことりをさがそうとおもいました。
「おじいちゃん、わたし、もりにいってくる」
「もりのおくには、まものがいるというから、とおくにはいかないようにな」
 りんはピピピッとことりをよびながら、もりにはいっていきました。きをみあげたり、くさむらをのぞきこんだりして、ことりをさがします。もりは、とてもしずかでした。きぎがおひさまをかくし、だんだんとあたりはくらくなってきました。
「たいへん! もりのおくまできちゃった」
 きときのあいだから、ながれるかわがみえてきました。そのときです。
 シュッとおとがして、おおきなへびがあらわれました。
「うまそうなこどもだなあ。まるのみして、いしにしてやろう」
 ながいしたをふりながら、へびはりんにちかづいてきます。きっとおじいちゃんがいっていた、もりのまものです。りんはこわくて、うごけなくなりました。まるで、へびにねらわれたことりのようです。りんははっとしました。
「おまえのせいね、ことりがいなくなったのは!」
「そうだ。うるさいことりは、みんなのみこんで、いしにしてやったぞ!」
 りんがあしもとをみると、あちらこちらにおおきないしやちいさないしが、ころがっていました。
 りんはいそいできのえだをひろうと、へびにむかってかまえました。へびをおどすように、えだをおおきくふって、じめんをたたきます。
 タンタタタンタ、ドンドコドン、リズムをつけて、チチチッとことりのようにうたいました。
「うるさい! やめろ、やめてくれ!」
 そうさけんだへびは、きゅうにまるまって、かおをかくしました。ガタガタとからだがふるえています。
「おれは、うたがきらいなんだ」
「やめてほしいなら、ことりたちをもとにもどして!」
 へびがふうっといきをふきかけると、いしはつぎからつぎへとことりにもどっていきます。へびはくやしそうにかわへにげていきました。
 ことりは、りんのまわりをとびまわり、たのしそうにうたいます。りんはことりたちといっしょにうたいながら、おじいちゃんとおばあちゃんのいえへかえりました。
 おじいちゃんとおばあちゃんは、りんとことりたちのあかるいうたごえをききながら、にっこりとわらいました。
 
 
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