1)起承転結を含んだプロット

文字数 1,770文字

起)
“なっち”こと那智茉莉花(なち・まりか)は、好奇心旺盛な小学五年生。クラス替えで、しっかり者でクールな綾乃(あやの)、おっとりしていて食いしん坊の結衣(ゆい)の二人と友達になる。綾乃は二人に、かつてこの小学校には「おかけん」というクラブがあったことを話す。お菓子研究クラブ、通称「おかけん」は、「お菓子で人を笑顔にする活動」をしていた。ところがその存在は秘密であり、更に家庭科の佐藤先生に合言葉を伝えないと入れないという決まりがあったため、その活動は途絶えていた。年の離れた姉がおかけんに悩みを解決してもらったという綾乃は、おかけんのことを一緒に調べてほしいと持ち掛ける。

承)
皆で家庭科室の貼り紙や学校の歴史を調べても、それらしい合言葉は見つからない。ところが、「お腹が減ったからお菓子のレシピを見たい」という結衣の手によって、遂に正しい合言葉を見つける。ひとりひとりの悩みにあったレシピを研究してお菓子を作る、という活動内容を佐藤先生から聞いた三人は、おかけんに入ることを決意。表向きは三人だけの手芸クラブを装いながら、ダマにならない生地の混ぜ方、ケーキを綺麗な山形に焼く方法などを学んで、こっそりとお菓子作りの練習に励む。そんなある日、三人は同級生の仁菜(にいな)の「友達ともう一度仲良くしたい」という悩みを知る。なっちの機転により、思い出のショコラパウンドケーキの味を再現し、二人に作ってもらうことで解決。これをきっかけに、「お菓子で悩みを解決してくれるクラブがあるらしい」と、おかけんの存在が校内で噂されるように。次第に色々なお悩みがケーキ型のポストに投函されるようになる。

転)
なっち達おかけんは、修学旅行に来られなかった子に「ふわふわ丸ごと、夢みたいなシフォンケーキ」を届けたり、分数が苦手な子に「割り割りガトーショコラ」のレシピを教えたり、素直になれない綾乃の告白を「焦がれないでアーモンドタルト」で応援したりと大活躍。ところが、おかけんは校内に勝手にお菓子を持ち込んで、生徒に売っているというデマが広がってしまう。そこで、生活指導の渡辺先生が、おかけんのメンバーを探してやめさせようと動き出す。その頃、なっち達は小学校の卒業が迫っていた。卒業前に、これまでお悩みを解決してきた人も、そうじゃない人も、皆を笑顔にするお菓子を作りたいと考えたなっち達。三人は「皆が大賞! 思い届くクッキー」のレシピを完成させたが、渡辺先生におかけんの正体がバレてしまう。渡辺先生は「大々的に問題にはしないが、おかけんは今日限りで活動停止だ!」と言い渡す。なっち達はこれまでの活動を説明し、佐藤先生もとりなそうとするが、渡辺先生は頑として聞き入れてくれない。長年学校にいて生活指導を担当している渡辺先生の力によって、おかけんは活動できなくなってしまった。

結)
渡辺先生に隠れて家でお菓子を作ることも考えたなっち達だったが、正面から向き合おうと考えを改め、渡辺先生が頑なに反対する理由を探る。すると、なっち達の前のおかけんが活動している最中に、湯煎用のお湯で腕をやけどした生徒がいたことがわかった。渡辺先生は、自分がおかけんの活動を黙認していたからこんなことになったのだと今でも自分を責めていた。そのため、おかけんの活動をやめさせようとやっきになっていたのだ。なっち達は当事者の生徒に会いに行き、今は成長した彼女が製菓学校に通っていることを知る。彼女は「やけどをしてしまったけれど、おかけんがあったからこそ今の私がある。あの事故は渡辺先生のせいじゃないし、これからもおかけんは続いてほしい」という思いを渡辺先生に伝え、手作りのパウンドケーキを渡す。渡辺先生もこの言葉に心が動き、なっち達の活動を認めることとなった。卒業式当日、なっち達が卒業生皆の机に置いたクッキーで誰もが笑顔に。おかけん最後の活動を終えた三人は、調理室と佐藤先生に別れを告げる。「二年間だけだったけど、お菓子の力って本当にすごいんだね」「絶対に笑顔になるもんね」と話す三人。そこでなっちは、佐藤先生に伝えた合言葉を思い出す――「お菓子は人を笑顔にして、世界を平和にする」。桜咲く春の空気を胸いっぱいに吸い込みながら、なっちは二人に訊いた。「ねえ、次は何を作って、誰を笑顔にする?」
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