第1話

文字数 8,265文字



Kは人生に退屈しており、生きていることの意味をもっていなかった。
そんなKにとって数少ない楽しみが酒を浴びるように飲むことであった。日払いの工場の仕事から帰ってきた日には疲れた体を癒すため、並々にグラスに注がれた日本酒や、ウイスキーなどを一気飲みすることもよくあった。彼は酒を飲むことによって、人生という現実から逃れようとしていたのかもしれない。

彼は本棚の上に置かれた1976年もののウイスキーを物思いに見つめていた。
そこにはメタノールが混ぜられている。通常、酒に混ぜられているエタノールと違いメタノールには一定の量があれば容易に人を死に至らしめることができる毒がある。彼はこのボトルを見ることによって、望めばいつでも生を終えられるという安心感を得たのだった。

そういったKのもとにある厳しい寒さの冬の晩、心当たりのない大きな段ボールが、届いた。差し出し人は記載されていなかった。どうしたものかと、彼は段ボール箱を抱えたままジッとそれを見つめていた。
しかし、滅多に宅配物など届かないKの住処に、こうした大きな段ボールが届いたことは喜びとも言えるものだったらしかった。Kは好奇心も背中を押し、ダンボールの中身を確認しようと丁寧に貼られたガムテープを無造作に剥がしていった。すると中から出て来たのは、仰向けになった男と女の日本人形だった。二人は恋仲であるのだろうか。そっと触れるか触れまいかの微妙な距離で二人の手は重ねられている。親密そうに仲良くしている二体であった。ただの人形であったことにKは安心する一方、もっと良いもの、自分を楽しませてくれるものを心の底では欲していたことは確かであった。おそらく母親か何かが自宅で処分に困った人形を自分に押し付けてきたのだろうと推測した。彼はスーッとため息を一つばかりついた後に、乱雑に脱ぎ捨てられた靴を整理してできた玄関の空きに段ボールを置いておいた。その段ボール箱を次の可燃ゴミの日に捨てる心持ちで彼は布団を被るようにして眠りについた。

翌日、Kは人形を捨てるためゴミ集積場へと足を運んだ。人形は大きく一度に二体運べる大きさではなかったため、まず女の人形だけを抱えるようにしてアパートを出た。彼は、生来憂鬱である一方で比肩のない面倒くさがり屋であったので、一度ゴミ捨て場に行ってからまたゴミ捨て場にいく心意気が湧いてくるはずはなく、今日は男の人形の方は捨てることはせずまた別の日に捨てる心持ちでいた。定職にもつかず仕送りと日払いのバイトで生活をしている彼にとって一週間ぶりにに浴びる日差しはとて眩しいものに感ぜられた。Kは人形をコンクリートの煉瓦を使って作られた簡素なゴミ捨て場に置いた。Kはそのままアパートに戻ろうとしたが不意に捨てた人形の方を見て見ると、冬の白い光に照らされた女人形の頬が青白く光り、まさしく江戸だか、室町の女といった感じが伝わってきて、これが人外の物であるとは粉塵も思われなかった。Kは伝統工芸や、人形が特別好きといった趣向は持っていなかったが、何やら妙に心がザワザワするような可憐さをそこに見出したのであった。Kはこれを捨てては人道に反するような心持ちがし、そそくさと女人形を両手に抱えアパートへ踵を返すことにした。屋内に戻ると日射を受けることもなくなったせいか、若干先ほどよりは女人形の顔色が良くなった気がする。
「ああなんと言うことだ、私はなんと言う愚かなことをしたものか。」

Kは美しいものをよしとする耽美性やルッキズム的性質を持ち合わせては居なかった。それは、Kがおよそ一般の日本人女性の容貌に淡い憧憬の情を抱かされたことがなかったのが何よりの証拠であった。
「これほどまでに美しかっただろうか」
Kは、人形の奥にじっと宿る和の心のようなものを確かに認めた。

Kはそれから日本人形というものに対する興味が泉のように際限なく湧き出て、定職についていない身でありながら高価な人形を身銭を切り買い増やし続けたのである。人形の専門のサイトで彼は自分が気に入った人形を何体も買い続け、その都度その人形が自宅に届くことを今や今やと待ち望んでいた。また、彼の趣向は日本人形に限定されるものではなく、外国のフランス人形なものにも関心を持った。


それから何日も経ち、気がつくと部屋のフローリングには日本人形が散乱している。おそらくこの部屋を見た人はアッと飛び上がってしまい、人形の中に何か生理的な恐怖感を与えてくる資質を認めざるを得ないだろう。といっても、当人のKにとっては人形に埋め尽くされた部屋は彼の生来からの退屈を忘れさせてくれるほどのものであったことは間違いなかった。
彼は人形を集めては、
「素晴らしい、美しい」
「肌のつやが感じられない、美しい瞳だ」
というように、
この人形はここがよく、ここが悪いなど批評を重ねてその都度人形にうっとりし、とろんとした目で一日中人形を眺めて終わるという日もしばしば見受けられた。
中でも彼を一番楽しませたのは、人形たちに順位をつけひな壇のように彼に最も愛された人形を棚の上から順に飾ることであった。一番上位に君臨するのは、果たしてせっせと人形を集めた甲斐があったのか疑ってしまうように、はじめに差出人不明の人物から届いた日本人形であったのである。彼を人形狂いにさせたのもこの人形の容貌の美しさに起因するものであったから自然とも言えるかもしれない。

彼は人形を並べることによって、現実では地がひっくり返っても果たせない女性をはべらかすといったことと重ね合わせていた。彼はそのことにまだまだ人生には楽しいことが残されているものだと、しんみりと日本酒を口に含みながらその彼にとっての絶景に見惚れるのでああった。自分に対し従順な日本人形たちに対しKは愛情と同時に密かな感謝を抱いていた。それは人形たちがKの鬱蒼とした日々に差し込んだ光のようなものであったからであった。

そんな生活を長い間送る中で、彼はいつからか会話を繰り広げていた。あくまで気が違った彼が生み出した空想上の会話ではあるが、人形の絹糸ような綺麗な黒髪や金髪を指で添い撫でながら行うそれは妙な現実感を持って行われた。
「今日は一段と美しい」
「結納はいつにしようか」
などの甘い言葉が彼の口からは発せられた。恐らく冗談であろうが、いや冗談であってほしいが、もし冗談でなければ猫が威嚇の時に全身の毛が総立つように私たちの全身の毛も何千本と飛び上がるのに相違なかった。

「響子今晩は何にしようか」
Kは何を思ったか、度々、夕食時にも自分の人形たちをテーブルに置き、一緒に食事を楽しんだのである。その食事を見ている人形の顔は眉ひとつ動かす気配なく静かに澄んだ瞳で彼の方一点だけを見つめている。お気に入りは、日本人形の春子、着せ替え人形の宗子、フランスから取り寄せたブロンド髪のフランス人形のアンナ、
「うん。そうかアンナは祖国のフランス料理が食べたいのか。でもダメだな。私の作れるメニューにはカップ麺や、簡単な卵料理しかないんだ・・・」
「なんだって?こんな家嫌だ?そんな聞き分けの悪いことを言うんじゃないぞ。いいか?そんなことを言っていると追い出すからな。・・・・・・・・・・・
分かればいんだ・・・」
などと空想上での夫婦喧嘩のようなシチュエーションを想定しながら彼は唾を吐き散らし、無駄な迫真性を持ってペチャクチャ喋り続けたのである。それは世を疎んでいた彼が、密かに焦がれていた新婚生活のような風景を体験させてくれ、果実酒のような甘さを胸いっぱいに与えてくれた。しかし人形と同じように人間が、気難しい彼との結婚生活を営んでいくことは甚だ不可能に近いことであった。そんな不可能と思われた共同生活をこの人形たちは自身たちを犠牲にするとによってKに提供していた。
Kにとって一種の花園に類した空間が六畳一間のアパートに作り上げられたのである。



安いアパートであるため隣室とは砂壁一枚を隔てるのみで、あたりが静まった深夜などに行われるKと人形たちの会話は隣室のMにはほとんど素通しのように聞こえていた。
Mは、
「なんだ。隣のやつ、女ができたのか。恰好もみすぼらしいしあんなやつに女ができるなんて到底信じられん。夜な夜な聞こえてくるKの歯が浮くような台詞は聞いてるこっちが恥ずかしくなるようなものだ。どれ、明日にでも、理由をでっちあげて、部屋にいる女の様子でも見にいってやろうか。」
Mはそんな思いを抱きながら寝入った。
開けたままにされている窓からはザアザアと風に揺られた葉擦れの音だけが聞こえていた。

翌朝、昨晩の計画通りに、MはKの部屋の呼び鈴を鳴らした。しかし、Kが中から出てくる様子は見られない。
「留守か・・・?いや定職についていなさそうだし、あいつが外に出かけるのも滅多にないことだ。第一今朝も物音がしたから中にいるのは間違い無いと思うんだが・・・居留守か・・・?」
ガチャリ・・・ゆっくりとドアが開かれた。
(おや?何やら以前に見かけたときよりも若々しくなっているのは気のせいだろうか。血色も良しと見える。やはり女ができ、身だしなみにも気を使うようになったからそう見えるのかしらん。)
「・・・なんでしょうか?」
(おや?見た目は変わったように見えたが話し方はまるで変わっていないぞ。一体どうやって夜中に甘言を囁くような、夢中になれるいい女を見つけたのかしらん?)
Mは女の姿よりももむしろKの女の籠絡の仕方を教えて欲しい、それが叶わなければKの生活の様子を盗み見てその仕方を密かに学んでやろうと、考えた。

「あのですね。K氏の部屋が改装工事が行われるのでK氏には一階の空き部屋に工事が終わるまで移って欲しいと管理人から伝言を預かって参りました。・・・そうそう、最近夜な夜な女性との交友がある様子が伝わってきますけども、なるべく静かにお願いできますかね。すみませんが。」
と言いながらMはKの肩越しから奥の部屋を大蛇のような鋭い眼光で盗み見たが、女の気配はなかった。
(おや?おかしいぞ。女の気配はない。朝早くに出かけたのかしらん?)
「それはそれは、お恥ずかしい限りで。ご迷惑をおかけし申し訳在りません。
移動の件は初めて聞きましたが、了承しました。ではすぐ移れるように荷物をまとめておきます。管理人にもそう伝えておいてください。では失礼しますよ。」KはMの盗み見る視線を咎めるかのように冷ややかな一瞥をし、ドアをバタンと閉めた。


Kは自分と人形たちとの会話が外に漏れていたことを聞かされた瞬間冷や汗が
でたかと思われた。それは自分が人形との恋路という異端なものであることを恥じるものではなく、自分の女、人形たちが隣室のKに卑しい視線を向けられることを恐れたものである。空き部屋に移動するときは絶対に人形たちのことがMや他の住人たちに知られてはならない。他の住人たちに知られることは、人形たちが貞操の危機にさらされることにつながると思い、心底震えたのである。人形に貞操の危機などあるはずはなく、彼は病気と言っても差し支えないほど人形に囚われていた

ドアを閉めるとすぐさま。Kは人形たちの飾られている棚に駆け寄って複数の人形たちを取り抱きかかえるようにして寝床へ倒れた。
「お前たちは全員私の愛おしい子だよ・・・私のそばを決して離れようなどと馬鹿なことはしないでおくれよ。よよよ。」人形たちの艶のある髪の毛を頬にすり寄せた男は自分の人形が私の物であるという満足感に抱かれながらグイッと、布団を被った。そこにはまるで蜜月の夜のような空気が流れていた。

まどろみから目覚めたKの顔は青ざめていた。
「嗚呼、私はなんてことをしてしまったんだ・・・!」
Kの細い腕に抱かれている人形の髪や衣装は乱れて元の原型には戻れそうにも到底なかった。そのとき、Kは自分の全愛を注いでいる人形たちとの生活にビリビリと亀裂が入ったように感ぜられた。暗い濁った海の底に沈んでいたような彼が人形と出会い、海面上に希望の光のような上澄みを底から見出したにも関わらず、Kには、その上澄みが徐々に無くなっていく気がした・
「私はどうすればいいんだ。」
途方に暮れていたKの頭にあるアイデアが浮かんだ。
「そうだ。確か人形を修理してくれる店が隣町へあったのではないか?そこなら彼女を救ってくださるかもしれない。こうしてはいられない。すぐさま行こう。」
Kは自動車など持っているはずはなく、愛車のホームセンターで破格値で買った自転車を飛ぶような速さで漕ぎ隣町へ向かった。


(おや?何やら大急ぎで出かけたみたいだぞ?何か一大事でも起こったのだろうか。)
Mは砂壁にぴったりと耳をくっつけながら呟いた。そんな中Mはある疑問を抱いていた。というのも、彼が甘い言葉を誰かに囁いていることは聞こえてきても、その誰かの声は耳を砂壁にぴったりとつけても一向に聞こえてはこないのである。Mは悪巧みにしか良い働きをしない自分の脳を回転させた結果、ペットか何かを、Kが恋人のように扱っているのではないかと考えた。このアパートではペットを飼うことが禁止させられているので、それを理人に告げ口すればまずKはアパートを出ていくことになるだろう。しかし、MにはKがアパートを出て行ったとしても、嬉しくも悲しくもなかった。それはMにとってKが、ただの隣人に過ぎないので自然なことではあった。
しかしMは江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」という男が他の部屋の住人の様子を盗み見るという小説を愛読していて、他人の生活を覗いてみることに関心があったKに女ができたのか、はたまたただのペットなのか突き止めたい欲がMの心の底から沸々と湧き上がってくるのを感じた。

Mはベッドから飛び上がるように起き上がると、玄関口まで走り、ゆっくりとドアを開け、周囲に人がいないことを確認すると、隣室のKの部屋のドアを、夏場冷蔵庫が効き目を失わないように開けてはすぐ閉じると言った具合に開閉させ部屋に闖入した。


「ここか・・・御免ください。見てもらいたい人形がいるんですけど。」
「はいはい。ではここに置いてください。あーこれは中々時間がかかりそうだね。まあなんとかなりはしそうだからとりあえずここに電話番号だけ書いてもらって、直りましたら連絡させてもらいますんでね。」
「ほっ・・・そうですか。本当に良かった。僕はこの人なしじゃ生きられないんだ。じゃあまた改めて。」
Kはその後店を出て家までの数キロの道を自転車で漕いだ。



「なんだか薄気味悪い部屋ですな。はて、それにしても、あの男は一体誰と話してたんだ。ペットらしきものも見当たらないが・・・やもすると、あの甘言はあの男の空想上の恋人に対するものであったのではないだろうか。と、Mは部屋に忍び込み物色していることが途端に馬鹿馬鹿しくなってくるのであった。
Kもいつ部屋に戻ってくるかわからないので、あまり長居しているわけにもいかずそろそろお暇しようかと考えていると不意に段ボール箱が数箱キッチンの方に置かれているのに気づいた。
「おや、こんなところに段ボール箱が。やや、これは恐らく階下に移動するために荷物を整理していたんだな。どれ少し見てみよう。」
適当に一つ段ボール箱の中をのぞいてみると、中からはウイスキーやワインなどの大量の酒瓶がひょっこり姿を現した。
「ほお。どうやらあいつは酒好きと見た。それにしても、こんなに酒があるんじゃあ、ああいう人間が出来上がってしまうのも頷けるといったものかな。しっかし、安い酒ばっかしやな。おっでもこのウイスキーは中々いいもんじゃねえか。どれ少し飲んでやろう。」
男は1976年生のウイスキーを口に含んだ。
「ぐびっぐびっ。」
すると、
「うっ・・・!」
どすん!と大きな音を立ててMはフローリングの上に倒れた。彼を起点として、瓶からこぼれたウイスキーがじわじわと部屋全体に広がり始めていた。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

Kは自部屋に戻ってくると、何やら男が俯せにするようにしてぐったりしているのを発見した。Kは自部屋に他人がいることと、それが倒れていることの二重的な意味で当惑していた。
「死んでいるんだろうか。」
Kは男の方に忍び足で近づくと、俯せに片方の頬をフローリングにつけている男の顔をみた。
「あ!これはお隣のMさんじゃないか!一体どうしたというんだろう。
そしてKはMのようにぐったりと倒れているウイスキーの瓶に気づきギョッとした。
「やや!これは私の毒薬の入ったウイスキーではないか・・・これは悪いことになったぞ。もしかすると警官に私がわざとこのウイスキーを彼に飲ませたと思われてしまうのではないだろうか。やや・・・これは困ったぞ。」
Kは自分と人形との安寧な生活が崩れてしまうことを何より恐れていたため、
頭を回転させ、自分に矛先が向けられないような方法を必死に考えた。

近くを通る国鉄の轟音が静寂な部屋に響く。郵便局員がアパートのポストに投函する。光化学スモックの発生を注意する耳障りな市内放送が流れる。・・・
そんな普段なら何気ない日常の音が今の彼にとって妙に自分を急かすもののように捉えられた。

考えた結果、
私はKの遺体をバラバラに解体させ、死体が腐り悪臭を放つのを防ぐためホームセンターで購入したホルムアルデヒド水溶液に浸し入れに隠しておくことにした。
人形が私の行いを戒めるような視線を送っている気がしたがKは、

「うるさい。仕方がないじゃないか。私はお前たちのためを想ったが故にしたことだぞ!厚かましい視線だ!私の世話に預かっておきながら親であり恋人である私にそんな反抗的な視線を向けるのは!恥を知れ!」と大きな声を張り上げた。人形にそんなことを言っても仕方がないのは分かっていたが、Kはそうやって周りに当たることでしか自らの不安を解消することができなかった。

その晩眠りも浅く、Kは久しぶりに夢を見た。何やら自分が人形と遊んでいると、自分が買ったことのないような人形を目にしたのである。その男の人形の顔を見るとKはギョッとした。なんでも、その人形の顔がMの顔を写したかのような顔だったのである。Kはその瞬間夢から覚め飛び上がった。Kの首にはじんわりと冬であるのに汗がタラタラ垂れていた。

「ああ、苦しい、だがお前たちはこんな私のそばにいてくれる。ありがとう心からそう思う。」彼は、棚の人形たちを見つめながら独り言ち、浅い眠りに入った。


一週間後、Kの部屋の呼び出しベルが鳴った。
ドアの覗き穴から果て誰だろうと伺うと、警察が前に立っていた。
「警察だ!嗚呼等々バレてしまったのだろうか。」
Kはガチャリと、わずかに開けたドアの隙間から警官の方を見て自然を装い、
「何の用ですか?」と、Kは自分の声が震えないように自分の心臓を落ち着けるようにゆっくりと言った。
「博物館より盗まれた日本人形がこちらのお宅に配達されたそうで、なんでも犯人が盗んだ証拠を隠蔽するために通りかかったアパートに盗んだ人形を入れた段ボールを置いたんです。とりあえず人形を渡していただけますかな?」
Kは大きなアッという声をあげ驚きを隠せなかった。
「盗品?そんなわけない。」
「いや、確かにそうなんです。犯人が示してくれましたから。」
「春子は私の妻です。あなたたちには絶対に渡さない!」Kは必死に反抗した。しかし、警官はドカドカと部屋に押し入り、人形を探し始めた。そして不意に警官が押入れを開けると中からはホルマリン漬けにされたMの解体された遺体が見えた。
「・・・これはどういうことです?人形云々の問題どころではなくなってきましたよ。」警官は驚きを隠せない表情をしながら警官としての威厳を含むような声でゆっくりと告げた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・私は本当に殺してないんです。」
「まあ。話は署の方でゆっくり聞きますから。とにかく来てください。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。(終)


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