第11話 『伝道』も必要ない⁇

文字数 1,028文字

「はい、違います。あなたが伝道しなければ救われなかったとしたら、その人が救われたのはあなたの伝道のおかげ、ということになります。これは『私がこの人を救った』という考えと、さほど遠くありません。実際、『私がこの人たちを救い、私がこの教会をたてあげた』と思っている伝道者もいますからね」

「私はそれほど高ぶってはいません」

「そう願いたいものです。だから、人が救われるのはただ、神のみわざなのです。あなたがどんなに頑張っても救いに導けない人がいることからも、それはわかるでしょう。極端な話をすれば、たとえあなたが少しも伝道しなかったとしても、救いに定められている人たちのためには、神さまは別の方法を用意なさいます」

「なんですって! あなたは私のことをお調べになったようですから、わたしがひとりでも多くの人を救いに導こうと、どんなに一生懸命伝道しているかをご存知でしょう? それなのにそんな言い方をなさいますか。それでは、どうして私は苦労して伝道しなければならないのですか?」

「それがあなたの使命だからです。あなたは伝道者として召されたのでしょう? ということは、伝道することはあなたの好き嫌いやあなたの都合に関係なく『どうしてもしなければならないこと』なのです。伝道した相手が救われようが救われまいが、直接あなたには関係ありません。
ですから、あなたの伝道の動機は『人が救われるため』ではなく、『神さまから与えられた自分の仕事だから』であるはずなのです。ですからあなたは、この使命を全うするために全力を尽くすべきなのです」

「う~ん、なるほど。そう言われてみると私はいつのまにか勘違いをしていたようです。人を救うのは神さまなのですから」

「そうです。人は他人はおろか、自分自身さえ救うことができないということを、はっきり知っておかなければなりません。天国に入れるかどうかは神さまがお決めになることなのですから。
死んでみると、あなたは地獄にいて苦しみもだえ、ふと目をあげると、あなたが”未信者”と呼んで見下していた人や、救いの確信がないと悩んでいた生徒たちが天国でイエスさまといっしょにいる、ということになるかもしれないのです」

「え? あの金持ちとラザロの譬えのようにですか。なるほど。それで救いの確信はむしろ持つ必要がないとおっしゃったのですね。人をランク分けするようなものですから」

「そうです。先のものがあとになり、あとのものが先になるというのが神さまのやりかたです」
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