第1話

文字数 1,771文字

あるちいさなくにの おひめさまは、
いつもえほんをよんで すごしています。

おひめさまには、とてもすきないろがあります。
それは みずいろ です。
おへやのかべは みずいろ。
ベッドもじゅうたんも みずいろ。
すわっているいすも テーブルも もちろんみずいろです。

しかし さいきんは、
「めしつかいたちの ふくをみずいろにして」
「おしろのかべも やねも みずいろにして」
「くにぢゅうの はっぱや はなを すべてみずいろにして」
と だんだんと わがままがすぎてきました。

こまったおうさまと おうひさまは、
おひめさまに ごうかな しろいドレスや、
あおいほうせき、きんいろのティアラをあたえました。
ところがおひめさまは、それらを
「いらない」
といって、いつものように
みずいろのドレスをきて、
みずいろのほうせきをみにつけ、
あたまにみずいろのティアラをのせました。

あるひ べつのくにから おうじさまがあそびにきていました。
そこで みずいろに かこまれている
おひめさまをふしぎにおもい、どうしてなのかと きいてみました。

おひめさまによると、
えほんにでてくるせかいには
はくちょうが およいでいる うつくしいみずうみがあり、
どうぶつたちが はしを わたる にぎやかな かわがあり、
にんぎょのでてくる しんぴてきな うみがあるのだといいます。

しかし おひめさまのすむくにには みずうみはなく、
かわもあまりながれておらず、うみもありません。
そのため おひめさまは じぶんのまわりにも
みずのいろ をおこうとおもうようになったそうです。

おひめさまは、おうじさまにいいました。
「あなたのくにはいいわね。
 みずうみも かわも うみもあって。
 さぞ すてきなせかいでしょう。
 わたしのくに には それらがなくて とてもつまらないわ。」
ところがおうじさまは
「なにをいっているんだい おひめさま。
 きみのおしろの にわの はなは あかやピンク、むらさきと
 とてもうつくしく さいているじゃないか。
 きみのくには、くさきが とてもおおく、さまざまなしゅるいの
 しょくぶつが にぎやかに おいしげっている。
 むぎばたけも こがねいろにかがやき、うみの みなも のように
 しんぴてきに かがやいていた。」

おひめさまは、とてもおどろきました。
いままで じぶんのくにに そんなすてきないろが
そんざいしていたとは、おもいもよりませんでした。

そして おうじさまは、このせかいでいちばんうつくしい
みずいろをおしえてくれました。

それからというもの おひめさまは
へやに しんくのあかいいろのカーテンをとりいれたり、
せんさいなそうしょくのはいった 、ちゃいろいほんだなを
そなえるようになりました。

また ドレスの しろい きぬの こうたくかんを
めでるようになりました。
ふかく、あおく、ときににじいろをうつしだす
ほうせきに みせられるようになりました。
きんいろのティアラの おごそかなひかりを
とうとぶようになりました。

さらに そとにでることが たのしくなりました。
みなれているとおもっていた はなはどれも、
こせいゆたかないろで さきほこってみえます。
むきばたけの ながれるような かがやきは、
しょくもつへの かんしゃの しょうちょうにおもわれました。
つまらないとおもっていた みどりのもりは、
きいろやオレンジに ダイナミックにうつりかわり、
ふゆにむかってはくぎんのせかいにそまります。
そしてまたあらたに いろづきはじめるさまは、
じぶんというもののそんざいが それらへの けいいと
おなじものであることにきづかせてくれるものでした。

おひめさまはもうすぐ
あのときのおうじさまと けっこんをします。
それはつまり
うつくしいみずうみと、
にぎやかなかわと、
しんぴてきなうみのあるくにに
すめることをいみします。

しかし すでに あるものの すばらしさに
きづいたおひめさまは
もう みずいろ ばかりに
こだわることはなくなりました。

ただ ゆいいつ たいせつにしている みずいろがあります。
それはおうじさまが おしえてくれたものでした。
おうじさまは、あのときいったのです。

「このせかいでいちばんうつくしいみずいろは、
 きみのその みずいろにきらめくひとみだよ。
 きみのその うつくしいひとみに
 えいえんにぼくをうつしてくれないか。」

(おわり)
 




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