菜穂子の珈琲時間
文字数 968文字
朝起きて、ぼさぼさ髪にパジャマ姿でカーテンを開ける。
太陽の光が、菜穂子の体にぐんぐん吸収されていく。
「今日はどれにしよう」
お湯を沸かしながら、菜穂子は〈本日の珈琲〉を楽しそうに選ぶ。
おうち時間が増えてから始めた、菜穂子の楽しみのひとつ。
コーヒータイム。
菜穂子は去年の春から在宅ワークをしている。
もともとは、そのころ「生活リズムを崩さないように」と、始めたことだった。
今ではすっかり趣味のような、楽しみの時間になっている。
菜穂子がこの試みをあちらこちらで発信するから、去年の誕生日やお中元。クリスマスプレゼントにお歳暮は、コーヒー関連が多かった。
菜穂子は誰もいない部屋でバンザイして喜んだ。
菜穂子の部屋の白いカラーボックスには、常に何種類かのドリップパックがストックされていて、そこから気分で好きなものを選ぶ。
頂き物の、豆を挽いてもらってパッキングしたいい香りのものは、丁寧にハンドドリップする。
サイフォンがない代わりに、ハンドドリップする紙とプラスチックの三角のやつがあるから大丈夫。
ちょっと贅沢したいときは、それらを使う。
コーヒーを淹れたときに立つ、いい香り。
部屋中がそのなんともふくよかな香りで満たされ、生活感も仕事もごっちゃになった日常が、時別な時間に変わる。
「ああ、しあわせ……」
菜穂子は、お気に入りのカップに淹れたコーヒーの写真をSNSに投稿する。
コーヒー好きな人たちが反応してくれると、一緒にコーヒータイムしている気になったりする。
写真を撮る気力のない日には、他の人たちの写真を見る。
そしてやっぱり、いっしょにコーヒータイムを過ごしているんだなあ、という気になって、ほんわかする。
――ピコン♪
通知音が届けたメッセージに、菜穂子は顔をほころばせる。
(Kanさんだ!)
「Kanさん」とは、SNSで知り合った、コーヒー仲間。
『俺も今コーヒー飲んでます。よかったら、いっしょにどうですか?』
オンラインコーヒータイムのお誘いだ。
そう、あることではないけれど、たまにこうして〈オンラインコーヒータイム〉が開かれる。
菜穂子は喜んですぐに返信した。
この極 たまに声のかかるオンラインコーヒータイムも、菜穂子が1年かけて、たしかに作り上げた大好きな時間だ。
太陽の光が、菜穂子の体にぐんぐん吸収されていく。
「今日はどれにしよう」
お湯を沸かしながら、菜穂子は〈本日の珈琲〉を楽しそうに選ぶ。
おうち時間が増えてから始めた、菜穂子の楽しみのひとつ。
コーヒータイム。
菜穂子は去年の春から在宅ワークをしている。
もともとは、そのころ「生活リズムを崩さないように」と、始めたことだった。
今ではすっかり趣味のような、楽しみの時間になっている。
菜穂子がこの試みをあちらこちらで発信するから、去年の誕生日やお中元。クリスマスプレゼントにお歳暮は、コーヒー関連が多かった。
菜穂子は誰もいない部屋でバンザイして喜んだ。
菜穂子の部屋の白いカラーボックスには、常に何種類かのドリップパックがストックされていて、そこから気分で好きなものを選ぶ。
頂き物の、豆を挽いてもらってパッキングしたいい香りのものは、丁寧にハンドドリップする。
サイフォンがない代わりに、ハンドドリップする紙とプラスチックの三角のやつがあるから大丈夫。
ちょっと贅沢したいときは、それらを使う。
コーヒーを淹れたときに立つ、いい香り。
部屋中がそのなんともふくよかな香りで満たされ、生活感も仕事もごっちゃになった日常が、時別な時間に変わる。
「ああ、しあわせ……」
菜穂子は、お気に入りのカップに淹れたコーヒーの写真をSNSに投稿する。
コーヒー好きな人たちが反応してくれると、一緒にコーヒータイムしている気になったりする。
写真を撮る気力のない日には、他の人たちの写真を見る。
そしてやっぱり、いっしょにコーヒータイムを過ごしているんだなあ、という気になって、ほんわかする。
――ピコン♪
通知音が届けたメッセージに、菜穂子は顔をほころばせる。
(Kanさんだ!)
「Kanさん」とは、SNSで知り合った、コーヒー仲間。
『俺も今コーヒー飲んでます。よかったら、いっしょにどうですか?』
オンラインコーヒータイムのお誘いだ。
そう、あることではないけれど、たまにこうして〈オンラインコーヒータイム〉が開かれる。
菜穂子は喜んですぐに返信した。
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