第1話

文字数 1,515文字

ちいちゃんはあめのひがきらいです。さむいから?おそとであそべないから?ちがうんです。ちいちゃんのかさもながぐつも、おさがりだからなんです。
「わたしもじぶんでえらんだものがよかったのに」
くれたおねえちゃんのことはだいすきだけど、おさがりってだけでなんだかいやになっちゃうんだもん。

きょうもあめ。さいきんずっとながぐつばっかりはいています。
げんかんですわりこんで、むくれていると…
「そんなにがっかりされたらかなしいわ」
どこからこえがするのでしょう。
おかあさんは、そとではやくはやくといっていたはずです。
「ここよ、ここ」
こえはあしもとからきこえます。
「まさか?ながくつ?」
「まさか、なんてしつれいしちゃうわ。ものは、ながくつかわれるとふしぎなちからをもつのよ。それに、おさがりはげんきにそだったしょうこ、えんぎものよ。」
「えんぎものって?」
「よいことがあるように、いのりがこめられているってことよ」
そうなんだ…ちいちゃんはながくつにあしをいれてみました。
いつもよりげんきがでるようなきがします。
「もしかして、かさも?」
「もちろん!!わたしをやさしくまわしてみて。」
あめのつぶをはじきながら、かさがこたえます。
ちぃちゃんはかさをゆっくりとまわします。
「みずたまりをよけて、あしをそろえてジャンプジャンプ」
ながくつとかさがうたうようにおしえてくれます。すると…
ちぃちゃんは、ふうわりとうかびはじめたのです。やさしいかぜにのってそらたかくまいあがります。
いつのまにか、くものうえまでやってきました。
「あ、もうあめがふっていない。ひさしぶり」
そういうと、ちいちゃんはくろいくものうえにちいさなおとこのこをみつけました。
ちかづいてみると、あたまにつのがいっぽん。おおきなじゃくちをかかえるようにしてうたっています。ちぃちゃんはみみをすましてみました。
「ザバザバー。ダバダバー。あめよ、もっとふれー。こまったかおはごちそうだー。」
「ちょっとやめなさい」
ちぃちゃんはこおにのまえにズンとたちはだかりました。
いきなりおこられてもはなしをきいてくれないのは、おともだちのおとこのこでしっています。
「あめはひつようよ。でも、きらわれるまでやるのは、もったいないわ。きみのことをすきなひとだっているのだから」
「え?ぼくをすきなひとがいるの?」
いきなりあらわれたおんなのこにとめられてびっくりしたものの、やさしいはなしかたをするちいちゃんのこえを、こおにはちゃんとききいれてくれています。
「そうよ。おはなだってかたつむりだって、あめをまってるわ。わたしも、たまにならきらいじゃない。おねえちゃんがもっていてすてきにみえた、かさとながぐつがつかえるから…」
もらったときはあんなにうれしかったきもちをおもいだしました。
「たくさんつづくと、だれでもあきたりつかれたりしちゃうんだとおもう。」
「そうなんだ。みんなぼくのこときらいなんだとおもってた。ならもっとこまらせてやろうって」 
こおにはしたをむきました。
いまからでもまにあうわ、とちいちゃんはにっこりわらって、こおにえました。
「こんなすごいちからがあるんだから、もっとよろこばれることにつかわなきゃもったいないわ」
こおには、ごめんなさいといいながら、じゃぐちをしめました。
また、ときどきよろしくね、とてをふると、ちいちゃんはくものしたにおりていきました。
うえをみて、とかさがいいました。そらをみあげるといままでみたこともないくらいのおおきなにじがかかっています。
したをみて、とながぐつがいいました。はっぱにたまっていたあめのつぶが、あしもとのみずたまりにおちました。こおにがわらっているようにみえました。(おわり)
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