第1話

文字数 1,588文字

俺は一ヶ月を永遠とループしている。

眠い目を擦り、一瞬で移り変わる外の景色を眺める。
俺は無人の電車に乗り、ループの原初について今一度考えていた。

……とは言うものの正直言って昔の事はあまり思い出したくない。
「……でも暇だしなぁ~どっちみち考ちゃうのが人間の(さが)か」





高3のある夏の日、ここからが終わりのない始まりだった。
初めてループしたときは混乱しすぎて『夢オチ』なんて浅はかな考えが出たっけ。

でもそんな浅はかな考えは時間と共に恐怖へと書き換えられ
俺じゃ抗えないような地獄へと直感的に理解させられた。

『このループした世界からは永遠に出れない』と。

当時の俺は相当狂ったか、嫌になってふて寝してただろうな。

おかげでループしてからの記憶がまばらだ。
ろくな思い出がない。





『?周目 特に好きじゃないがクラスの女子と付き合う。』

『?周目 暇すぎてバンドを組む。』

『?周目 同じループした人間がいないか探す小旅行をする。』

『?周目 入水自殺。』

過去唯一残っているループ達だ。

俺はループに目的を定めて行動している。
じゃないと今まで以上に余計な事を考えて嫌になってしまうからだ。

……しっかしこれ程までにどんな一ヶ月を送ったか覚えていとは驚きだ。
それに順番もピンと来ていない。

当時覚える気のなかった自分を軽くはたきたい気分だ。

最近だと『隣県に一ヶ月放浪する』を目的に放浪していたが
それも結局目的がないから観光名所を周るだけでグダってしまった。

「あぁ~なんか面白い事……いやもう限界なのかもなぁ~」





電車は目的の駅に着いた。
そこは海が綺麗な田舎だ。

この海に来たのには並々ならぬ目的があるから……いや違うな。
今回は目的ではなく後始末だ。

(あぁー……行くか)

俺は一直線で浜辺に向かい仰向けに寝転がった。
熱い太陽、それにさざ波の音、平日の昼間ってのも相まって心地いい。



(……いや流石に熱いな)

俺は後始末のため容赦なく海へと入る。


今回のループは目的を達成できなかった。
俺が海に来たのはその余った時間の後始末のためだ。

俺なりに勇気を出した……
でもループなんてSFの産物を友達に伝えることは難しかった。

きっとアイツら目線では俺が馬鹿言ってるくらいなのだろう。

ただただ無駄に恥をかいただけだ。顔を合わせたくない。
それにスマホと財布。……マジどこ行ったんだよ。

今回はツイてない周だ。きっと続けた所でグダグダのまま次に行く。



俺は海の底へと足を運ぶ。

(……どうせまた最初からなんだろ?)

ループをこなしていくうちに死への境界線が薄くなった。
今はもう、あまり恐怖を感じていない。

(……)


「お~い、何やってんの~! 君学校とかあるんじゃないの~?」

「……え?」

防波堤からウルフカットで金髪のチャラそうな女性が俺に向かって叫んでいた。
田舎だからか下着のままだ……ないな、ただの痴女だ。

というかこの人……前に会ったような……ループ前か?

「え、えーっとー今日休みで~す」

「え? 今日平日だよな? ちょいこっち来~い! ……お菓子あげるから!」

お菓子を掲げ、来いと言わんばかりに腕をこちらに向かって振っている。
傍から見なくても痴女だ。

それに高校生をお菓子で釣ろうなんて見誤りすぎだ。ってボンタンアメ……。 

最近の高校生をお菓子どころか駄菓子で釣ろうとするなんて普通にないだろ。

無視を決め込み浜辺を歩く。

あの人邪魔だな~死ににく……次の予定でもたてとくか?

……っても何も案が出てこない。

「あぁ~ここからが勝負どころかー……海外でも行ってみるか?」

「おい待てよっ!」

脳内会話に耽っているといつの間にか例のボンタンアメの女性は俺の背後におり、
俺の肩に腕を巻きつけ、思い切り抱き着いてきた。後ろから成人女性の胸が!

「ちょっ! なんすか!」

「単純に心配になったんだよ! おら食え!」

後ろから無理やりボンタンアメを口に入れる。

「……意外とうめぇな」
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