いたずらなキャンディ

文字数 687文字

 今日は10月31日。そうハロウィン。

 放課後の教室ではお菓子の大交換会が開催されている。
 市販のお菓子が大半だけど、中には手作りのお菓子を持ってきている人もいる。お菓子を作れるのってすごいなあ。
 参加してるのはほとんど女の子だけど、男子もいる。
 お菓子をもらってるだけの男子もいるけど、僕にはそんなフランクさはない。
 学校ってこともあって、仮装してる人はいない。そりゃそうだよね。先生に怒られちゃうし。

 僕は鞄を持って教室を出る。僕にはあまり関係ないからさっさと帰ろう。

「やっほー涼治! ハロウィンしてるー?」

 後ろから元気いっぱいな声で話しかけられる。

「唯奈は相変わらず元気だね。っていうかハロウィンしてるってなに?」

 唯奈はお菓子いっぱいの袋を抱えて嬉しそう。にっこにこな笑顔が眩しい。

「ハロウィンしてるはハロウィンしてるだよー!」

 唯奈が顔をぐっと近づけてくる。あ、カボチャのヘアピンしてる。こういう仮装もありなんだ。

「カボチャのヘアピン似合ってるね」
「そうでしょー。ありがと。えへへ」
「それはそうと。トリックオアトリートっ!」

 唯奈は空いているほうの手を僕につきだす。

「そんなにもらったのにまだいるの?」
「涼治からはもらってないもん!」

 唯奈は頬を膨らませる。

「そう言われたってお菓子持ってきてないし」
「じゃあイタズラだねー。ふっふっふ…」

 唯奈の顔がさらに近づく。近すぎない?

「!?」

 唯奈の唇が僕の唇に重なる。
 不意に僕の舌に固いものが触れる。これは……。

「これじゃトリック()()()トリートだね~」

 唯奈がにっと笑う。
 そのキャンディはとろけるような甘さだった。
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