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文字数 14,742文字

 彼女は逃げていた。
唐突だが、とにかく何かに追われる形で路地裏を走る。
自分でも馬鹿だとは思っているが、ごく自然に、狭い入り組んだ方へと逃げてきた挙句、
行き止まりにぶち当たった。
後ろから追ってきているであろう"それ"は、
姿こそまだ見えないが確実にこちらへ迫ってきている。
彼女は行き止まりにある扉をノブをまわし力任せに引っ張る。
が、施錠されている。
「開けて!誰かいないの!?開けてぇ!!」
力なく膝から崩れ落ち、後ろを振り返る。
奴がいた。
彼女を執拗に追っていた者、全身悪趣味な黒尽くめ、顔が見えないほどの黒い長髪、
気味が悪いほどの長身の痩せた男、その姿はまるで黒いカマキリ、
絵に描いたような"悪者"である。
「女、手間ぁ取りたくないからよ、こっちぃ来い」
長い腕をぬっと前に出し、歩み寄ってくる。
「嫌、嫌嫌嫌ぁぁ!!」
行き止まりの隅に追い詰められる。
もうどうしようもない。
「なぁ何もしねぇからよぉ、おとなしく捕まれよ」
そういった瞬間、男は虫のような速さで距離を詰めてきた。
もう終わりだ、そう思った瞬間、開かなかった扉が開いた。
その中から、金髪の青年が顔を出す。
「あの、うっさいんスけど」
彼女はその姿を見るなり、助けてと叫びながら低い姿勢で駆け寄る。
が、そこを黒尽くめの男は長い腕ですくいとり、肩に抱きかかえて連れ去る。
「嫌ぁ!助けて、助けて!」
叩く蹴る暴れると必死の抵抗を試みるが、
見た目以上に屈強な肉体をしているため歯が立たない。
ふと、彼女が顔を上げると、開いたドアの奥、先ほどの彼の姿が見えない。
次の瞬間、彼女の体が宙に浮いた。
逆さまとなった世界で最後に見たものは、
豪快にバットの一撃を受けている黒尽くめの男だった。

 彼女が目を覚ますとそこはアパートらしきワンルームのベッドの上。
頭を打ったのか包帯が巻かれていた。
「あ、気がついたっスね」
横に目をやるとさきほどの金髪の青年がいた。
歳は20歳前後といったところか。
彼は読んでいた本をパタンと閉じ、彼女の横に座る。
「さっきはスンマセンっした。ああでもしないとあの野郎、君を殺してたっス。
 だからつい力任せにやっちゃったんスよ」
まるで天使のような微笑で笑いかける。
「あの、ありがとう。 なんかあいつ、
 急に私の事追いかけてきて・・・気があったのかな」
少し年上ぶって冗談を飛ばすが不発に終わる。
机の上にある自分の眼鏡をかけると、彼の顔がくっきりと見えた。
金髪に白いブラウス、優しい笑顔、まさに王子様といった風貌だ。
「そういえば自己紹介しないとっスよね。俺は小島泰(コジマ ユタカ)、大学2年の19歳っス」
中性的な格好良さと可愛さを放つ泰に、彼女は髪を整えつつ返す。
「私は直方陽菜(ノオガタ ヒナ)、フリーライターやってる23歳」
「フリーライター!? スッゲェ、めっちゃかっこいいっス!」
子供のようにはしゃぐ泰を他所に、陽菜は深いため息をつく。
「いや、フリーライターなんて、フリーターと何も変わらないわよ。
 実際、書いたものがどっかに通らなきゃご飯も食べれないし、
 だからバイトだって日雇いでやんなきゃだしさ、
 結局のところ、フリーライターって語ってんのも、内定取れなかった言い訳なんだ」
「でも、良い事だってあるっスよ、きっと」
前向きな彼とは裏腹にぐったりとうなだれる陽菜。
「最近は災難続きよ、洗濯物をベランダから落とすし、
 朝起きたらベッドにゴキブリがいたし、
 今日なんてこの有様よ、もう厄日続き」
泰はまぁまぁとなだめながら、そうだと思いついたように立ち上がる。
「サンドウィッチ作ってあげるっスよ、得意なんで」
そういうとそそくさと台所へ向かい、簡単なサンドウィッチを作り始めた。
数分後、テーブルの上に置かれるサンドウィッチとオレンジジュース、
陽菜は小腹が空いていた事もあり、頂きますと一言、それをひとつつまむ。
口に入れた瞬間、燻製された豚肉のパストラミと、香辛料の豊かな香りが鼻腔に広がる。
正直、食べたことの無いような、最高に美味いサンドウィッチであった。
「美味しい、すごく」
「あざっス!俺一人暮らしなんスけど、それのおかげで料理得意なんスよ」
頷きながらサンドウィッチを頬張る陽菜に、少し真面目な顔で泰が問う。
「陽菜さん、やっぱり狙われてた理由って、
 その、フリーライターっての関係してるんスか?」
ギクリと体をひくつかせた陽菜は泰の顔を見る。
その表情は心配そうであり、探るような、
まるで自分の中を見透かしているような目だった。
そんな顔を見せられたら、誰も嘘はつけないだろう。
陽菜はサンドウィッチを飲み込んで答える。
「うん、最近ここいらで流行っている事件、『連続女性行方不明事件』について調べてたの」
泰はやはりという顔で、詳しく聞かせてくださいと椅子に腰掛けた。
「この事件について調べ始めたきっかけは、まずネタとして魅力的だって思ったのと、
 被害者の中にね、いたの、私の後輩が」
陽菜は渋い顔をしながら続ける。
「折角最近さ、いい会社に内定決まって、彼氏とか作っちゃったり、
 今から最高に楽しい人生を過ごすはずだったのに・・・」
僅かに涙ぐむ陽菜の顔を、泰は飼い主を心配する子犬のような顔で覗く。
「それで仇を取る為に調査してたんスか」
強がっていたつもりだが、ぽろぽろと涙の粒が頬を伝った。
真剣に話を聞いてくれる泰に、陽菜は安心すると同時に、少しながら心惹かれていた。
少し落ち着いてから、陽菜は事件の話を進める。
「で、どうも最近この一帯の路地裏で怪しい男の目撃情報が上がったのよ」
「それがあの、黒尽くめっスか」
「そう、噂に上がってた目撃証言とも一致するの」
「噂?」
陽菜は先ほどの事を思い出したのか、少し身震いをして続ける。
「カマキリ男」
そのワードを聞いて、泰は少し納得した感じに頷く。
「確かに、カマキリみたいな男だったっス」
「最初は言葉だけだったのよ、だから鎌が凶器なのかーとか、
 カマキリが好きなのかーとか、色々考えたわ。
 でもある日、雑誌のオカルト欄の記事で『怪人 カマキリ男』っていう記事が出てて、
 そこにあったイラストと酷似した男を発見したわけ」
鞄からその雑誌のコピーを出して泰に見せる。
泰はあーなるほどと頷く。
「あいつにそっくりっスね」
「でしょ?で、探ってたら見つかって・・・あんな感じになったの」
「陽菜さんさっき、急に追われたって言いませんでしたっけ」
陽菜はしまったと半笑いで目を背ける。
「あー、あはは、でもほら、実際狙われたわけだし、気があったのは本当かも」
またも冗談がすべる。
「でも気をつけてくださいよ、マジで危ないっスから」
「うん、でも偶然、あなたみたいな優しい人の元へ逃げ込めてよかった」
そう言うと、泰はすっと目を逸らし返す。
「いや・・・、偶然じゃないっスよ。
多分、姉さんがここに来る事、決まってたと思うっス」
陽菜はその言葉に首をかしげる。
「今"姉さん"って呼んだ?」
泰ははっとして慌てる。
「いや、その、ついうっかり、スンマセンっした」
「いやいや、いいんだけど、もしかしてお姉さん、いたの?」
その言葉に、泰は俯く。
「その、俺の姉も消えたんすよ、最近」
陽菜は察してしまった。
「例の事件、よね」
「っスね、多分。だから俺嬉しいんスよ、さっき陽菜さん助けれたの。
 まるで正義の味方になったみたいで、なんか、姉さんを助けれたみたいで」
胸がきゅっとなる思いだった。
だから彼はここまで私を介抱してくれたのか。
ちょっと恋心を覚えていたが、それよりも。
「あのさ、あなたさえ良ければ、その、"姉さん"って呼んでいいわよ」
「え、いいんスか?」
「その代わりさ、また会えるかな」
ちょっと紅潮しながら陽菜が問うと、泰は満面の笑みで返す。
「もちろんっス!てか、また今日みたいに運命的に会えると思うっスよ!」
純粋無垢ながら恥ずかしい言葉にますます紅潮し、
それを隠すようにバッグを持って立ち上がる。
「あ・・・私帰るね、ありがとう、ごちそうさま」
わたわたとせわしなく動く。
泰もいそいそと玄関までの道をあける。
出るとさっきの路地裏とは違う場所だった。
「あれ?」
目の前の光景は普通のアパートの駐車場だ。
きょとんとした顔の陽菜を見て泰が言う。
「あんな玄関ないっスよぉ、あっちは裏口。
姉さんちょっと天然ぽいっスよね」
陽菜はおちょくられてむっとしたが、それよりも"姉さん"と呼んでくれる事が嬉しかった。
彼女は改めて、彼のためにも絶対に犯人を特定してやると決意した。


 西の空が紅く染まり始める時間、陽菜は家路についていた。
今日あった色々な事を頭の中で整理していた。
「また、会えるかな」
年下ながらしっかりもので優しく、自分を"姉さん"と慕い、
そして大切な人を亡くしたという共通の体験。
密かに運命というものを信じていた。
「あそこに逃げていなかったら、私死んでたのかな」
微笑を湛えながら住宅街の曲がり角を曲がったその瞬間、
陽菜は黒尽くめの集団に取り押さえられ、黒いベンツに詰め込まれた。
必死の抵抗もむなしく、口元に病院にあるような吸引マスク装着させられた。
そこから染み出した麻酔作用のあるガスにより意識が遠のく。
男が何か注射針のようなものを持っていたのが見えたが、
そこからの記憶は飛んでしまった。

目が覚めると牢獄のような場所にいた。
考えてみれば今日は2回も昏倒している。
今日は厄日だ、そう寝ぼけ眼でぼんやりと考えていると、
唐突に泰の顔が浮かんだ。
そういえば彼は無事なのだろうか、彼は私を庇ってこの事件に巻き込まれた。
会いたい、彼が心配、安否を確認したい、会いたい。
陽菜は勢いよく起き上がり檻の鉄格子にしがみつく。
「彼に会わせて!彼は関係ないの!会わせてよぉ!!」
大声で必死に叫ぶ。
牢獄の前には一人の少女が座っていた。
歳は中学、いや高校生ほどだろうか、彼女もまた黒尽くめである。
「ねぇ、出してよ、彼に会わなきゃ、会わないとだめなのぉ!」
けたたましい金属音を響かせながら鉄格子を揺さぶる。
その様子を少女はただただ黙々と見ている。
その姿もあってか、彼女の脳は沸騰するように熱くなっていき、顔が赤く染まる。
「会いたいっ会いたいっ会いたいっ会いたいっ会いたいっ会いたいっ会いたい!!!」
自分でも訳が分からないくらいに脳内が泰の事でいっぱいになる。
私の命の恩人、私を慕ってくれる弟みたいな人、
私が巻き込んでしまった人、私の運命の人。
自分でも何を言っているか分からなくなったその時、強烈な吐き気を催した。
陽菜は勢いよく嘔吐した、と、その中に明らかに異質なものがあった。
紐・・・いや・・・針金・・・?
それは蠢いた。
「・・・・・!!!」
陽菜はむせながら絶叫し、勢いよく後ろに飛び転げた。
自分の口の中から何かが出てきた。
もう一度それに目をやったところで、
またも吐き気に襲われ、今度は牢獄内のトイレに嘔吐する。
おそるおそるトイレの中の嘔吐物に目をやると、
そこには先ほどと同じ黒い針金が勢いよく泳ぎ回っていた。
「イヤ・・・イヤァァァァァァ!!!」
反対側の隅に小さく縮こまる。
すると牢屋の前にいた少女がこちらを見ながら問いかけてきた。
「まだ・・・会いたい?」
会いたい?誰に?
冷静に考えていると、やっと思い出した。
そうだ、泰。
彼女は人が変わったかのように冷静だった。
自分でも、何故ここまで冷静か分からない。
「よかった、虫下し効いたみたい。 もう出てきていいよ、ごめんね」
金属音と共に施錠が解かれて、こっちに来てと手招きをする。
わけも分からず陽菜は恐る恐る牢屋を出て、少女の後をついていく。
階段を上り、扉を開けたその先、やはり予想通りの顔ぶれがいた。
カマキリ男を中心にもう二人、自分横に例の少女、全員で4人の黒尽くめ。
皆一様に黒尽くめだが、決して同じ服ではないようだ。
色を統一しているだけで、各自の個性が現れている。
まさしく"悪の組織"といった感じだ。
「もしかして、私を拷問したりするの」
陽菜がそう言うと、カマキリ男の横に座っている眼帯をした少年らしき者が
ふくむように笑う。
「我等がそんな蛮族に見えるか?くだらないな?くだらないね、ありえないさ」
痛々しい勘違いファッションの少年は仰々しい仕草で陽菜を指差す。
その子の向かいに座っているメガネをかけた初老の男性が続けて言う。
「仕方が無いでしょう、私達の風貌は他所から見れば"悪の組織"なんですから」
身動ぎせずに硬直してしまった陽菜の袖をクイクイと引っ張りながら少女が言う。
「大丈夫だよ、私達は敵じゃないから、"正義の味方"だから」
正義の味方?ありえない。
「私を誘拐して、何か変なもの体に入れておいて、何が正義の味方よ!」
さきほどの嘔吐物を思い出してまた吐き気を催す陽菜。
それを見て、隣の少女が背中をさするが、陽菜はそれを手で撥ね退けた。
「だいたい何者なのよ、何で私を狙うわけ」
皆目見当は付いていた、おそらく事件の核心に至るのを阻止するためだ。
今は優しくしているが後で私は酷い目に遭わされるんだ。
そう思っていた陽菜に対し、予想外の言葉がカマキリ男から返ってきた。
「おめぇ狙っているわけじゃぁない、おめぇは狙われているんだ」
いまいち分からない言葉に怪訝な顔をする。
「あとあれだ、おめぇが吐き出した"ハリガネムシ"を仕込んだのは俺らじゃぁない」
ハリガネムシ、あの気味の悪い紐のような虫。
「ねぇ、それどういう意味よ、私あんなものが入った食べ物なんて食べてないわよ!」
叫ぶとひどい頭痛がして目がくらんだ、陽菜はその場にへたりこむ。
初老の男が何か指示を出すと、隣の少女が陽菜を壁にもたれかけさせた。
「お嬢さん、最近昆虫と接触しておりませんか?」
突然の質問に首をかしげる。
「私、虫とかニョロニョロ系のもの大嫌いだから絶対にありえない」
ふむとアゴを撫でながらその男は続ける。
「ではここ最近、朝起きた際に口腔や耳に違和感を覚えたことはありませんか?」
「いや、別にそんな・・・」
と、言いかけて思い出したことがあった。
「あ、朝起きたときに、ベッドにゴキブリがいたことがあった」
それだと言わんばかりに、彼はカマキリ男にアイコンタクトを送り頷きあう。
陽菜は何がなんだか分からなかったが、嫌な想像ばかりが浮かんだ。
「ねぇ、なんなの、もしかしてあれって、ゴキブリの幼虫なの!?」
「いえ、違います。ですが、恐らくゴキブリを媒介にしてあなたの中に
 ハリガネムシが入ったのでしょう」
それを聞いて阿鼻叫喚する陽菜。
それをよそに、黒尽くめの集団は各自身支度を始めて動き出す。
黒の服の上に黒の上着を着る、執拗に黒にこだわっている。
「あんたら、一体なんなのよ」
横の少女も黒いコートを羽織り、陽菜の手を掴み引っ張る。
「ごめん、それには答えられない。でもあなたを救えてよかったと思う。
 送っていくから、ついてきて」
目隠しをされて、またも強引に車に押し込まれ、そのまま車は出発した。
移動中にも陽菜は、彼らの正体について探ったのだが全てがうやむやに暈された。
しかし『連続女性行方不明事件』には、関与していないと言う。
彼らもまた、その犯人を追っているらしい。
「お嬢さん、確かこの辺が彼氏さんのお住まいでしたかな」
彼氏、と聞いて泰の顔が浮かぶのは図々しい気もしたが、
あそこまで牢獄で取り乱していたのならば仕方ないかもしれない。
「彼氏・・・じゃないけど、うん、この辺で降ろして」
目隠しを外された陽菜が車を降りると助手席の窓が開き、窮屈そうなカマキリ男が顔を出す。
「あれだ、驚かせて悪かったな。 悪気ぁ無かったんだ」
そういうと車は町の闇へと消えていった。


昼間に来たアパートの呼び鈴を鳴らす。
ドアの向こうから返事が返ってきた後、すぐにドアは開いた。
「あ!姉さん、こんな時間にどうしたんスか!?」
「その、急に合いたくなっちゃって・・・」
とりあえずありきたりな言葉を使う。
よく見ると、泰はこれから外出する様子だった。
「これから出かけるところだった?」
「っスね、今からちょっと買出し行くところっス。
 姉さん晩飯まだだったら一緒にどうっスか?」
天使のような笑顔、この顔を見るだけで今日あった嫌な事全てを忘れられる。
そんな事を思いながらぼーっとしていると、泰が何かに気づいた。
「姉さん、頭の包帯取ったんスね」
そういえば、いつのまにか包帯がなくなっていた。
恐らくあの黒尽くめの連中が取ったのだろう。
彼に心配をかけるわけにはいかない。
「あぁ、お風呂入ったから、その時に取っちゃった」
「うそっスね」
即答される、陽菜は少し恐怖を覚え、半歩後ずさりした。
「姉さんの匂い、覚えたっス、女の匂い、
 あの時走って汗かいたっしょ、その時つい嗅いじまったんすよ、
 そん時と同じ匂いするっスから、多分うそ言ってる」
「あ・・・あはは」
少し引いてしまう、確かに風呂には入ってないが、それにしても少し気味が悪かった。
それを察したのか、はっとして泰は弁解する。
「いやその、引かないでほしいっス、つい姉さん可愛くて、その、そういうアレっスから。
 スンマセン、いや包帯、やっぱ恥ずかしかったっスよね?
 あー本当スンマセン、気ぃ遣わせて」
慌てる彼を見て、陽菜もあからさまな態度を取ってしまった事を悔いる。
「私こそごめん、あーほら、ご飯食べに行こ!」
「そっすね、じゃ、行きつけの隠れ家的名店があるんで、ついてきてくださいっス!」
手を引かれるまま、陽菜は泰についていった。


 陽菜は自らの軽率さを噛みしめていた。
完璧に騙されてしまった。それは寄生虫のせいでもなく、ただただ自分の過失。
今、彼女は生肉店の厨房のような場所に拘束されている。
隠れ家的店、その言葉に騙されて何の疑いも無く、彼女は泰につれられ路地裏に入った。
その瞬間、スタンガンによる一撃をもらい昏倒してしまったのだ。
「おはよう、姉さん」
奥のほうで生肉店特有のエプロンを着た泰が座っている。
「何、これ何の冗談なの?」
顔は笑顔を湛えるが、内心まったく笑えない。
恐怖しかない。
両手が頭上にある手錠で拘束されており、下手に動くと手首を脱臼しかねない状態だった。
「冗談、ね。姉さんは冗談で牛や豚を食べるかい?」
意味が分からない。
一体何を言っているのか、意味が分からなかった。
それではまるで自分が、牛や豚と同じだというような口ぶりではないか。
その口ぶり自体、明らかに彼女が知る泰ではない。
「サンドウィッチ、美味しかったよね」
泰は立ち上がりながらゆっくりと陽菜に歩み寄る。
「あれは最高の食材を使ったからね」
泰は陽菜の顔面まで迫り、まるで天使のような笑顔で笑いかける。
「あのサンドウィッチに入ってた燻製、ヒトのお肉なんだよ」
その言葉に、陽菜の足先から脳まで強烈な電撃が走るような感覚を覚えた。
現実を把握しきれない彼女に、泰は冷凍された縦長い袋のようなものを見せる。
その中には、見まごうこと無き、人間の足が納まっていた。
直後、自分でも理解しがたいほどの思考が巡り、吐くものも無いが口から胃液を漏らした。
耐え難い背徳感、人間を食してしまったという背徳感が彼女を容赦なく襲う。
さらに泰は追い討ちをかける。
「あぁ、しかもね、あのお肉、姉さんの後輩ちゃんのお肉なんだよ」
陽菜はそれを聞いて、まるで自分の目や脳がしわくちゃに萎むような錯覚に陥る。
その途端、声にならないようなうめき声と共に、大粒の涙を零す。
後輩が死んでいたこと、しかもそれを食してしまったこと、
そして何よりも泰に裏切られたこと。
「あーいいよいいよー、無駄な体液はバンバン出しちゃって。
 この後は腸内洗浄とかもしちゃうからね。大丈夫、気持ち良いと思うよ」
陽菜の姿を見ながらヘラヘラと笑う泰。
声をぐしゃぐしゃにしながら彼女は彼に問いかけた。
「なんでこんな事するの?」
その言葉を聞いて、泰は一瞬きょとんとした後、狂ったように笑い出す。
「姉さん!君もそんな事を言っちゃう系の人なのかい?
 じゃぁ姉さんは豚肉を買う奥様に「なんでそんな物買うの?」って聞くかい?
 食べるためだろ?イート!イートだよ姉さん!
 まったくそんなだから内定も取れないんだよ!
 だいたい世の中のヒトは何にでも理由を求めすぎ!
 俺が今まで食べてきたヒトも
 みんな一様に「なんでこんな事するの?」って聞いてきたよ!
 鳴き声かよ!牛は「モーモー」豚は「ブーブー」んでヒトは「何でこんな事するの?」、
 なんだよこの鳴き声!可愛くねぇよ!子供ひいちゃうよ!」
くるくると回りながら楽しそうに論ずる泰、陽菜の恐怖は徐々に絶望へと変わっていく。
私はこんな男に一瞬でも恋心を抱いてしまったのか。
涙は枯れ、今は体中から生気が抜けていくような気分だ。
泰は落ち着いたのか、フゥと息をつくと急にボロボロと涙を流し始めた。
「姉さん!なんで死んでしまったんだ!」
急な叫びに我に返る陽菜、急変した彼を見て、全身を戦慄かせる。
「姉さん聞いてよ、僕が最初に寄生虫を植えつけたヒトは姉さんなんだ。
 だけど姉さんは僕が生み出した"ラジコンハリガネムシ"を否定したんだよ。
 それはね、生物学の歴史を大きく揺るがすほどの突然変異種なんだよ。
 凄いんだよ、それはそれは凄いんだよ。だから姉さんは否定したんだ。
 なんたって好きな生物を好きなように誘導できるハリガネムシなんだからね」
「ねぇ、姉さんって、どの姉さんなの?」
ただでさえ混乱しているのに、ますます混乱する。
そんな陽菜を意に介さず、泰は天を仰ぎ、今度はまた発狂したように笑いながら話す。
「そこで僕は姉さんに、このラジコンハリガネムシを寄生させようと思ったんだ!
 まずゴキブリにハリガネムシを植え付けて!
 姉さんが就寝したらそれをケージから放した!
 そしたらゴキブリは面白いように姉さんの部屋めがけて猛ダッシュ!
 あらかじめ開けておいた隙間から様子を覗くとビックリ!
 ゴキブリは姉さんの顔の上でケツからラジコンハリガネムシをひりだしていた!!
 出てきたそれは、自然と水気の多い姉さんの目に進入したんだ!」
陽菜は想像したのか顔をしかめる。
狂っている!どうしようもなく狂っている!
その狂った男は、またもうなだれて泣き出す。
「でもその直後、姉さんは発狂したように苦しみだした。
 うっかりさんなラジコンハリガネムシは姉さんの眼球を掘り堀りしてしまったんだ。
 姉さんは数分で動かなくなって、目から血を噴き出して絶命した」
「ちょっと待ってよ、じゃぁあの朝私の枕元にいたゴキブリって・・・」
「姉さんだけじゃないよ、姉さんの後輩っていう姉さんも、その前の姉さんも、
 最初の姉さん以降の姉さんは全て最初の姉さんの犠牲によって改良された、
 唾液酵素アミラーゼに反応するラジコンハリガネムシMk(マーク)2なのさ!」
分からないという顔の陽菜に気づいた泰は続ける。
「食肉並みの知能しかない姉さんのために噛み砕いて言うと、
 ラジコンハリガネムシMk2は口から進入するように遺伝子を書き換えたんだ。
 そして唾液に触れると行動思念に変化が起きて、脳へ向かう。
 しかも体にほとんど痛みを与えずにね」
「じゃぁ、私が最初に逃げてきたのも偶然じゃなくて・・・」
「あ!そういう所は察しがいいね!
 でもそれ、俺がもう言っちゃってるからノーカウントね!
 だって今日アパートでちゃんと言ったもんね!
 「姉さんがここに来る事、決まってたと思うっス」って。
 いやぁ、やっぱ姉さんたちって、こういう後輩口調に弱いよね!
 ちょろいよね!可愛くて優しい年下に弱いよね!」
金髪をいじりながらあどけない笑顔を見せる。
そこで陽菜は一つ疑問を彼に問いかける。
「何で私なの?」
陽菜は自分の容姿に、不満があるわけでもないが、自信があるわけでもない。
そんな自分が何故選ばれたのか気になったのだ。
それに対して、表情を変えず泰は返す。
「あー友達伝いだよ、ほら、姉さんもそうだけどさ、姉さんの後輩の姉さんも
 手荷物を持ったまま来たんだよ、ま、用心は大事だよね。
 で、そしたらあるでしょ、ケータイ。
 そっから次のターゲット見つけて、住所調べて、家にゴキブリをポイってするわけ。
 ほら、姉さんがうちのアパートで起きた時、俺本を読んでたでしょ?
 あれそういう情報ノートなんだよ、マル秘だよ!」
友達伝い、彼は誰でもいいんだ、ただただ年上の若い女性なら誰だって良かったんだ。
こんな状況にもかかわらず、陽菜は心臓を鷲掴みにされる悔しさを覚えた。
そんな事知る由もない泰は話を戻す。
「僕の姉さん、あ、この姉さんは本当の僕の姉さん、
 姉さん死んじゃった後、僕はやっぱり困ったんだよ。
 姉さんの死体を見ながら、どうしようかなーって。
 ほら、死体ほったらかしもいけないし、
 警察に見つかったら僕のラジコンハリガネムシが奪われちゃう。
 だからね、僕は食べることにしたんだ」
急に話が飛んで、陽菜は驚愕と言うか、呆気に取られる。
「まずはバラして冷凍した。
 親戚の家でイノシシをバラした事があったから、その要領でバラしたんだけど、
 思いのほか量が多くてね、頑張って食べたんだけど、半分以上腐らせちゃった」
淡々と話す泰、異常すぎるそれは、陽菜にフィクションのような感覚を与える。
「でね、姉さん美味しかったんだ。
 豚だね、うん、姉さんは豚じゃないのに、味は豚なんだ。
 だからさ、行き着いた先が、豚肉と同じ保存の利く調理法だった」
故にパストラミ、塩分が含まれ、燻製されたものは冷蔵していれば当分は保存がきく。
一瞬だけなるほどと理解した陽菜だったが、やはり狂っていると思った。
「あとこの場所だけど、潰れた商店街ってこういう場所たくさんあるんだよ。
 便利がいいから使わせてもらってる。思いのほか誰も来ないしね」
机を撫でながら、泰は楽しそうに笑う。
「ねぇ、何で・・・」
そういいかけたとき、苛立ったように泰が遮る。
「また"何で"って聞くのかい!?どうせまた下らない事だろう!?
 さしずめ「どうして姉さんだけで食べるのやめなかったの?」みたいな
 ニュアンスのクエスチョンだろう!?
 あのねぇ、姉さんは何も分かってないよね!
 姉さんは美味しかったんだよ!だったらまた食べたくなるだろう!
 何より実験も同時に出来るんだよ!素晴らしい!美味しい!ヘルシー!」
「どうしてそこまで歪んでるのよ、あなたの過去に一体何があったの・・・」
泰はやれやれといった様子で、藪から棒に陽菜の乳をわしづかむ。
陽菜は体をそらそうとするが拘束により逃れられない。
睨みつける彼女に対し、泰はまたも笑顔で返す。
「過去だの理由だのくだらないんだよ。
 姉さんだって、食べ物を好きになる理由なんて
 "始めて食べたとき美味しかった"くらいなもんでしょ。
 歪んでなんかいないよ、美味しかったからだ。
 それに、警察も一向に僕の元へ来ない、まぁそれもそうか。
 だって姉さん達はそっちから勝手に僕に接触してきて、
 勝手に運命だとか勘違いして、また勝手に僕の元へ来るんだからね。
 もちろんそれはハリガネムシの特性ありきなんだけど。
 今日の姉さんも一緒・・・いや、今日の姉さんは少し違うか」
泰は急に険しい顔をして陽菜を睨む。
「俺のラジコンハリガネムシに気づいたヒトは初めてなんだよね」
「な、何で分かるの」
「いやだって、僕に対して若干ひいたじゃない。
 僕のラジコンハリガネムシが入ってるならありえないよ。
 僕の事で頭がいっぱいになっているはずだからね」
そう言われて思い出した。
そうだ、あの牢獄での出来事、パニックに陥るほど泰の事で頭がいっぱいになった。
だけどその後に虫を吐き出すとそれが落ち着いた。
あの現象こそが、ラジコンハリガネムシの恐ろしい特性だったのだ。
「ま、いいんだけどね、結果的に姉さんうちに来てくれたし」
そういうと泰は陽菜のセーターの中に手を入れ、体をまさぐる。
陽菜は不快感に体を捻らせる。
子供のように彼女の豊満な胸に顔をうずめた泰は、体を少し離して息を吐く。
「さて、いっぱい喋ったらお腹すいちゃった。
 そろそろ解体しようかな、服やぶくね」
セーターから手を抜き、くるりと回れ右をした泰は、机の裁ちばさみを手に取る。
「いや・・・やめて」
「暴れたら刺さっちゃうから、暴れないでね」
泰が陽菜の方を向いた瞬間、彼の背後の影が"動いた"。
眼前、泰の胸が膨らみ、金属質な何かが生える。
マチェット、刃渡りの長いナタの一種だ。
恐らく生肉の解体に使ってたのだろう、それが泰の胸から顔を出していた。
「あ・・・あぁ?」
マリオネットのように四肢をガクガクとさせる泰、
まるで背後で誰かが操っているかのよう。
いや、いる、2mを超えるような、カマキリみたいな男。
そう、まぎれもなく、あの黒尽くめのカマキリ男がいた。
「あぶねぇな、危うくまた救えないところだった」
「あぁぁぁ、嘘、嘘ぉ、痛い痛いイタイイタイイタイイタイイタイ!!」
絶叫しながら血の泡を噴出す泰の首背面をカマキリ男が掴む。
相当な力で掴んでいるらしく、かなり指がめり込んでいる。
「俺だってバットで殴られてすっげぇ痛かったんだよぉ、こいつぁお返しだ」
そう言った次の瞬間、耳障りな音と共に、泰の首が力なく前方にだらんと俯いた。
男はそれを床に乱暴に倒す。
殺した、この黒尽くめの男、いともたやすく殺した。
陽菜は悲鳴すら上げる事も出来ずにいた。
髪の分け目からかろうじて分かる顔面がこちらを向く。
「・・・俺が怖ぇか」
陽菜はただただ震える。
「このサイコパス野郎よりも、怖ぇか」
「うぅ、いや、やめて」
しゃっくりが混ざりながら泣きじゃくる。
「そうか、だよなぁ、それでいいんだ」
男は続けて、前髪を耳に掛け、補聴器のようなもので通信を始める。
やっとあらわになったその顔は、とても悲しそうな顔をしていた。
「終わった、あっけねぇ、やっぱ素人だった」
〈〈なんだ、てっきり虫を操って激闘すると思ったのに〉〉
「ハハッ、んな漫画みてぇな事あらぁしねぇよ」
気さくに話す男を見て、私をどうすると言わんばかりに、陽菜は拘束を鳴らす。
〈〈あ、彼女は無事なの?〉〉
「あぁ、やっと、やっとだよ、やっと救えた」
その顔は悲しさの中に、安堵のようなものを感じさせる笑顔であった。
それは、あの泰の笑顔とは違う、人のぬくもりを感じる笑顔である。
〈〈助け出せるなら助けてあげて、今度こそちゃんと送ってあげないと〉〉
「あぁ、そうだ、今回は強引が過ぎてらぁな」
男は床に転がる泰の死体から小さな鍵を取り、陽菜の手錠をはずす。
陽菜は腰を抜かしてその場にへたりこむ。
「・・・おめぇ、歩けるか」
彼女は首を横に振る。
その様子を見て、男はわざとらしいため息をつきながら言う。
「おい、何もしねぇからよ、俺に掴まれ」
長い腕が差し伸べられる。
「あ・・・あなた達、一体、何なの」
男は面倒くさそうに頭をかきながらガバッと陽菜を抱えて肩に置く。
丁寧にも机の上にあった彼女の上着と鞄も忘れずに持っていく。
「正体は言えねぇが、"正義の味方"だ」
「だったら何でそんな格好・・・」
「黒が好きなだけだ」
適当に返されて、これ以上服装に関しては聞けないと踏んだ陽菜は別の事を聞く。
「私を彼の元に向かわせたのって、囮だったの?」
「次におめぇが狙われるってのぁ、うちのプロファイリングで分かってた。
 そこで、おめぇの愛読書に、
 例の"カマキリ男"のゴシップを知り合いの伝手で雑誌に載せた。
 それでおめぇは、俺を犯人と思って探んだろ。
 で、今朝の状態に持ち込み、奴の元まで誘導してもらったんだ。
 あの後、奴が出てきた部屋を漁ってみた、
 俺に見つかるまではあそこが解体所だったんだ。
 だがよ、やっぱ既にもぬけの空ぁだった。
 つまり俺らは奴のアジトを完全に見失った形になった。
 なもんでよぉ、仕方なく強行手段に出たってわけよ」
少し不服だが、最終手段だったのかもしれない。
確かにその強行手段がなければ、今頃私は食肉にされていただろう。
考えるだけでもぞっとする。
身震いが肩を伝ったのか、男は片手に持っていたコートをそっと陽菜の上に被せた。


 ちょっと歩いた先、抱えられた足のほうからエンジン音が聞こえる、例のベンツだ。
ゆっくりと肩から降ろされて、コートと鞄を渡される。
運転席から初老の男が降りてきた。
「駅まででしたらお送りさせて頂きますが、どうなさいますか?」
陽菜は少し迷って、コートを羽織り返事を返す。
「いえ、大丈夫、ありがと」
後部座席の方から二人が担架を持ち出し先ほど場所に向かい、
カマキリ男は助手席に窮屈そうに座る。
初老の男もタバコをふかし始めた。
「あなた達は、"正義の味方"って、自分達の事を呼んでいるけど、いつもこんな事してるの?」
 カマキリ男は起きているのか寝ているのか分からないが、返事が無い。
 それを見て初老の男は顎をなでながら鼻から煙を噴き出す。
「私達の正体を明かすわけには、いかないのですが。
 このような事をいつもやっているかと問われれば、肯定せざるを得ません。
 私達はこの社会から零れた存在、ざっくり言うと影のようなものです」
哲学的な言い回しで、いまいちよく分からない。
タバコをまたひとふかしして、男は続ける。
「私達の役目は、"救われぬものを救い、裁かれぬものを裁く"。
 まぁこれは、正義を語る大義名分みたいなものですが、
 それでも私達は自らを"正義の味方"と語っております」
話していると先ほどの二人が、膨らんだ担架を持って帰ってきた。
そしてその担架の下の折りたたまれた足を広げ車の横に組み立てて置いた。
それに合わせるように初老の男はタバコを携帯灰皿に捨て、
カマキリ男も助手席から出てきた。
一体何が始まるのかと陽菜が不安を抱いたが、それは予想外の出来事により払拭された。
彼らは死体袋に向かい合掌したのだ。
その光景は黒尽くめという事もあり、まるで葬儀、死者を弔うそれであった。
「さて、それでは私達は影に去ります。この度は申し訳ございませんでした。
 では、失礼いたします」
黒いベンツは闇の中へ溶けていった。
陽菜もまた、人の明かりが照らす、光に向かって帰るのであった。


世の中には未解決事件と言うものが多々ある。
それは犯人が特定されなかった事件や、行方不明のまま消息を絶った者たち、
あらゆるケースが存在する。
だがその社会の影で、そういう形の無いものと戦う者達がいる。
本日ここに記す記事は、私の実体験を元に作ったものである。
非現実的な現実を記すため、信用するかしないかはあなた次第。
黒尽くめの服装に身を包む、彼らは”正義-RIGHT-”の使者。
悪を裁き、弱き者を救う、"正義の味方-RIGHTER-"である。
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