第1話
文字数 1,464文字
これは数年前にある会社員が体験した出来事。
それはやたら静かな夜だった。
薄暗い霧が辺りを覆っている。
会社員の山下は山道で車を走らせていた。
「まだ9時前だぞ?」
普段ならこの道はもう少し人気があるのだが、今夜は山下の車以外は見当たらない。
月は完全に霧に隠れて見ることができない。山道脇の木々がゆらゆらと揺れている。
なんとも不気味な夜道に心細さがじわりと襲う。
「しかし暑いな」
車の窓を開けると生暖かい風が車内に入ってくる。
汗が滲み肌にまとわりつくような感覚を覚えた。
「なんだかいやな風だな」
そういうと山下は汗を拭おうと首に手を伸ばした。
ふと人の手のようなものに触れた。
「うわっなんだこれ」
首にまとわりついていた汗だと思っていたものは細い腕のようなものだった。
山下はつい車のミラーを見てしまった。
「わああーー!」
そこに映っていたのは自信の首に絡まった細く白い女の腕だった。
そして彼の背後に濡れた長い髪のようなものが見える。それはじわじわと山下の背後から這い出そうとしていた。
「待て待て待って!」
山下は恐怖から咄嗟にミラーから目を逸らし前方を凝視した。
耳元に女の濡れた髪と息がかかる。
「、、て」
「えっ」
「きを、、つけ、、、て」
「何⁈」
山下はパニックになりかけていた。
「そこの、、、トンネルを、、」
「ト、トンネル⁈」
「トンネルを、、、通ってはだめよ、、」
女がそう言うと前方にトンネルの入り口が見えた。
「トンネル!あれか!?と、通るなって言われたって……急には止まれないっ!」
「きをつけ、、て」
「気をつけろってなにに⁈いつも通ってる道だぞ。あれを通らないと帰れない!」
だが少し妙であった。普段目にしているトンネルの入り口とは似ても似つかない。まるでそこだけタイムスリップしたかのように随分と苔が生え古びて見えた。
「いつものトンネルじゃ……ない⁈」
「ああ、、警告は、、、したわよ」
女の残念そうな言葉と同時に山下の車はトンネルに吸い込まれた。
「う、うあああ」
しばらく真っ暗な道をまっすぐ走った後、眩い光が見えてきた。
「で、出口だ」
トンネルを抜けた途端にどんどんがやがやと騒々しい音が聞こえてきた。
音とともに食欲をそそる食べ物の匂いが車内に入ってくる。
「らっしゃいらっしゃい」
「な、なんだこれ……」
よく見ると車は白い細い道をぐねぐねと走っている。その道は縦にも横にも複雑に入り組んでいるようだ。
「うわわ危ない」
車は逆さになろうが斜めを走ろうが道にから離れることはなかった。
道という道の間には屋台や店が並んでいて、店の者らしきものが声をかけてくる。よく見るとその店員よく本やテレビなどで見聞きした妖怪のような姿をしている。
「お兄さんお兄さん。何か買ってって。ドライブスルーでもいいし、車止めて店内入ってもいいよ」
「か、河童が胡瓜を売っている……コスプレか??」
あちこちから活気のある声が聞こえてくる。 山下は思惑車を駐輪場に停めた。
そしてふと上空を見上げて息をのんだ。
「な、なんだこれはあああ‼︎‼︎」
見上げた先には大きな頭蓋骨があった。白い道だと思っていたものは巨大な骸骨の骨だったのだ。
「だから、警告したのよ」
「あ、あんたは!」
先程の髪の長い女がわたあめを手に持って立っていた。
「食べすぎ注意よ!」
山下の腹からぐうぅという音が鳴り、喉を鳴らした。
「腹、減ってたんだよな、、」
その後のことはあまり記憶にないがあの日食べたであろう冷えた胡瓜の味を時々ふと思いだすのであった。
それはやたら静かな夜だった。
薄暗い霧が辺りを覆っている。
会社員の山下は山道で車を走らせていた。
「まだ9時前だぞ?」
普段ならこの道はもう少し人気があるのだが、今夜は山下の車以外は見当たらない。
月は完全に霧に隠れて見ることができない。山道脇の木々がゆらゆらと揺れている。
なんとも不気味な夜道に心細さがじわりと襲う。
「しかし暑いな」
車の窓を開けると生暖かい風が車内に入ってくる。
汗が滲み肌にまとわりつくような感覚を覚えた。
「なんだかいやな風だな」
そういうと山下は汗を拭おうと首に手を伸ばした。
ふと人の手のようなものに触れた。
「うわっなんだこれ」
首にまとわりついていた汗だと思っていたものは細い腕のようなものだった。
山下はつい車のミラーを見てしまった。
「わああーー!」
そこに映っていたのは自信の首に絡まった細く白い女の腕だった。
そして彼の背後に濡れた長い髪のようなものが見える。それはじわじわと山下の背後から這い出そうとしていた。
「待て待て待って!」
山下は恐怖から咄嗟にミラーから目を逸らし前方を凝視した。
耳元に女の濡れた髪と息がかかる。
「、、て」
「えっ」
「きを、、つけ、、、て」
「何⁈」
山下はパニックになりかけていた。
「そこの、、、トンネルを、、」
「ト、トンネル⁈」
「トンネルを、、、通ってはだめよ、、」
女がそう言うと前方にトンネルの入り口が見えた。
「トンネル!あれか!?と、通るなって言われたって……急には止まれないっ!」
「きをつけ、、て」
「気をつけろってなにに⁈いつも通ってる道だぞ。あれを通らないと帰れない!」
だが少し妙であった。普段目にしているトンネルの入り口とは似ても似つかない。まるでそこだけタイムスリップしたかのように随分と苔が生え古びて見えた。
「いつものトンネルじゃ……ない⁈」
「ああ、、警告は、、、したわよ」
女の残念そうな言葉と同時に山下の車はトンネルに吸い込まれた。
「う、うあああ」
しばらく真っ暗な道をまっすぐ走った後、眩い光が見えてきた。
「で、出口だ」
トンネルを抜けた途端にどんどんがやがやと騒々しい音が聞こえてきた。
音とともに食欲をそそる食べ物の匂いが車内に入ってくる。
「らっしゃいらっしゃい」
「な、なんだこれ……」
よく見ると車は白い細い道をぐねぐねと走っている。その道は縦にも横にも複雑に入り組んでいるようだ。
「うわわ危ない」
車は逆さになろうが斜めを走ろうが道にから離れることはなかった。
道という道の間には屋台や店が並んでいて、店の者らしきものが声をかけてくる。よく見るとその店員よく本やテレビなどで見聞きした妖怪のような姿をしている。
「お兄さんお兄さん。何か買ってって。ドライブスルーでもいいし、車止めて店内入ってもいいよ」
「か、河童が胡瓜を売っている……コスプレか??」
あちこちから活気のある声が聞こえてくる。 山下は思惑車を駐輪場に停めた。
そしてふと上空を見上げて息をのんだ。
「な、なんだこれはあああ‼︎‼︎」
見上げた先には大きな頭蓋骨があった。白い道だと思っていたものは巨大な骸骨の骨だったのだ。
「だから、警告したのよ」
「あ、あんたは!」
先程の髪の長い女がわたあめを手に持って立っていた。
「食べすぎ注意よ!」
山下の腹からぐうぅという音が鳴り、喉を鳴らした。
「腹、減ってたんだよな、、」
その後のことはあまり記憶にないがあの日食べたであろう冷えた胡瓜の味を時々ふと思いだすのであった。