第1話

文字数 1,532文字

あるところに、リリックというおんなのこがいました。
リリックは、とてもはずかしがりやでした。
がっこうのみんながはなしかけても、いつももじもじ、まっかになってしまいます。
「リリック、へんなの。しゃべらないし、まっかっか」
みんな、リリックをからかいます。
リリックは、いつもひとりぼっち。
さびしくて、なみだがぽろぽろこぼれます。
「わたし、だめなこね」
かみさまが、リリックをおつくりになったとき、「ゆうき」をもたせることをおわすれになったにちがいない。
リリックは、かなしくおもいました。

「リリック、おまえはいいこよ」
おばあさんが、いいました。
「でもおばあさん。わたし、きちんとおしゃべりできるこになりたい」
おばあさんは、リリックがとてもやさしいおんなのこだとしっていました。だって、リリックはいつも、おばあさんのおてつだいをするのですから。
「じゃあ、おまえが「ゆうき」をもてるよう、おばあさんが、まほうをかけてあげる」

おばあさんはひみつのとだなから、まっしろでやわらかいきれをさがしてきました。
それから、しんじゅのようにきらきらする、にじいろのいともだしました。
おばあさんは、おおきなはさみと、ぎんいろのちいさなはりで、あっというまにちいさなマスクをつくりあげました。
マスクのまんなかに、にじいろのうさぎがいっぴき、たのしそうにはねています。
「わあ、すてき!」
リリックは、めをまるくしました。
「リリック、このうさぎがおまえの「ゆうき」よ」
おばあさんがマスクをつけてくれると、リリックのちいさなかおにぴったりでした。
「ありがとう、おばあさん」

つぎのひ。
リリックがマスクをしてがっこうにいきますと、みんながからかいにきました。
「おはよう、まっかっか」
そのときです。
「まっかじゃないわ、にじいろよ」
ふしぎなことに、リリックはいいかえしていました。
みんな、びっくりしています。
リリックだって、びっくりです。おもったことが、かってにくちからでましたから。
それから、ふしぎなことはつづきました。
リリックは、みんなとのおしゃべりも、せんせいのあてるむずかしいもんだいにも、こたえることができました。
「リリック、すごいのね!」
みんながリリックを、みなおします。
「うさぎさん、これはあなたのおかげね」
リリックはおばあさんのマスクを、ありがとうのきもちをこめて、だきしめました。

きせつがひとつかわるころ。
マスクのうさぎは、すこしづついとがほころんで、しっぽがとれてしまいました。
「おばあさん、うさぎさんをなおして。わたし、まただめなこになっちゃう」
リリックはおばあさんに、なきつきました。
おばあさんは、いいました。
「うさぎさんは、なおせるわ。でもねリリック、うさぎさんがいなくても、あなたはもうだいじょうぶよ」
リリックは、びっくりしました。
「そんなことないわ、みんなうさぎさんのおかげだもの」
おばあさんはリリックのむねに、やさしくてをのせます。
「いいえ。あなたがほんとうのリリックをみせたから、みんなリリックをすきになったの。うさぎさんは、てだすけをしただけ」
リリックは、はっとしました。たしかに、うさぎさんがいるとおもえば、「ゆうき」がわいてきたのです。
「リリック、あなたのこころに、いつもうさぎさんはいるわ。あなたはもう、「ゆうき」をもっているんだから」
リリックは、おばあさんのうでのなかで、わんわんなきました。
かなしいなみだでは、ありませんでした。

それから。
リリックは、きょうもげんきにがっこうにかよっています。
おともだちと、けんかをすることもあります。
でも、リリックはまけません。
くじけそうなとき、むねにてをあてれば、ほら!
にじいろの「ゆうき」が、たのしそうにとびはねているのですから。
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