第4話 おばあちゃんの十か条

文字数 1,973文字

子供の頃からおばあちゃんっ子だった。
両親が農業と工場の兼業農家として忙しく働いていたので、私は畑に行く祖父母に付いて行って遊んでいたり、
実家の敷地内にある祖父母の隠居部屋のある納屋で過ごしたり、そのまま一緒に寝たり、両親より祖父母と過ごした時間が長かった時期があった、

祖母は幼い時に両親を亡くし、彼女の祖父母に育てられ学校には小学校しか行けなかったようで、
教養はあまりなかったけれど、家庭的で優しく可愛い人だった。
頭のいい面白い頼もしい祖父と一緒になり、
子供4人育てあげ、
亭主関白の祖父に3歩下がって仕えた人。


私が結婚する時、

祖母は私に手紙をくれた。
そこには結婚するに当たっての心得の十か条が書いてあった。
祖母らしい内容の十か条だった。

しかし、
ちょっとシワもついてるチラシの裏って!!

「地域の老人クラブの日帰り旅行のご案内」
  行き先 三井寺と紅葉パラダイス

今は無き知る人ぞ知る「紅葉パラダイス!!」
子供の頃、地域の日帰りバス旅行で毎年行った温泉施設。懐かしい!!

チラシの裏、とは祖母らしい。
そのチラシの内容までも。

私は祖母のように、大人しく主人に仕える性格ではなかったし、この十か条を守れなかった。

原因はそれだけではないのだが、(というかほぼそれではないのだが)
その後、私は離婚した。


離婚してから何か始めたいとギターを習い始めた私は、
いつか人前でライブするという夢をなんとか達成し、
そして、初めて自分のお客さんを呼んだライブで
その時流行っていた
植村花菜さんの「トイレの神様」の弾き語りをした。

MCでこの祖母の手紙の存在を話したら、

「そのオリジナル曲作ってみたらどう?」

ライブに来てくれた友人の一言で
次の私の目標はオリジナル曲作りになった。

ギターを習い始めるまで、全く楽器も弾けない、
音符も読めない私に、その後
オリジナル曲が降りてきたのです。


一曲目は自分の子供達への思いから出来た曲。
二曲目は小学校までの通学路のことを描いた曲。

そしてその後、この祖母からの手紙をもとにした

オリジナル曲「おばあちゃんの十か条」が完成した。

2、3か月に一回くらいのペースでライブ活動を続け、沢山の協力者のもと、ついに自主制作のCDも作る事ができた。

昨年
この祖父母が隠居生活していた部屋のあった納屋が、古くなって既に物置と化していたのを
リノベーションする事になった。

納屋には部屋が二つと農機具置き場やガレージとして使っていた部分がある。
壁を無くして広いスペースにすると聞いた私は、あの部屋が無くなってしまうのかとちょっと寂しいなあと感じていた。

しかし、完成してみたら、
リノベーションを決めた弟夫婦に感謝。

天井の梁は残し、エコな素材を使い
フローリングや土壁にして、
あの納屋が素敵な広い空間に生まれ変わり、地域の人にも使用して頂こうと、
コワーキングスペースとしてオープンすることになった。

「ここでお姉さんライブをしたら?」
義妹のその言葉に
実家でライブイベントなんて、そうそうできるもんじゃない!やってみる!と引き受けた私は
企画を練り、友人ミュージシャン達に声を掛け、
2020年12月、音楽イベントを主催しました。

(コロナ禍の中で色々試行錯誤しながら
万全の対策をし、完全予約の人数制限と二部制にして開催)

私は祖父母が寝ていた部屋のあった場所で
そこから見える田畑が広がる景色をバックに

この「おばあちゃんの十か条」の弾き語りをする事ができたのです。

おばあちゃんに届いたかな?

亡くなる少し前には、
既に私は夫と別居してて、
その事を知った祖母はとても心配してくれていたけど、その後正式に離婚して苦労もしたけど、

今、こんなに沢山の音楽仲間もでき、
協力してくれる友人も沢山でき、
多くの人に、この曲聴いてもらえたよ。

大好きな歌が歌えなくなった時もあったけど、
こうやって今、人前で自分の歌を披露してるよ。

私は今、とても幸せに過ごしてるよと。


「おばあちゃんの十か条」

私が結婚するとき
おばあちゃんが書いてくれた
お嫁さんになる心得の十か条

ちょっとくちゃくちゃになった
チラシの裏に書かれた
漢字もいくつか間違ってる十か条

ひとつ いつも笑顔で
ひとつ 早寝早起き
ひとつ 主人を立てる
ひとつ 知ったかぶりしない
ひとつ すぐに素直にあやまること

おばあちゃんと昔の遊んだ
百人一首が懐かしい
花の色は移りにけりな
色あせないよ あなたの言葉
おばあちゃんの十か条

ひとつ いつも火の用心
ひとつ うちはいつもきれいに
ひとつ 物は大切に
ひとつ 頼まれたことはすぐに
ひとつ 周りの人にいつも相談すること

簡単なことが意外と難しくて
守れなかったけど
我が身 世に降る ながめせしまに
大切にしてるあなたの言葉
おばあちゃんの十か条

おばあちゃんと昔の遊んだ
百人一首が懐かしい
花の色は移りにけりな
色あせないよ あなたの言葉
おばあちゃんの十か条








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