第1話
文字数 331文字
知っている言葉と使える言葉がある。「脳裏に浮かぶ」という言葉は、中学校一年の私には知っていても使えない言葉だった。文章ですら2,3度しか目にしたことのない言葉だったから、彼女の口からこの言葉が飛び出したとき、はっと顔を上げたのを覚えている。顔を上げて、彼女の顔を初めてみた。夏休み前の蒸し暑い体育館のステージに立つ彼女は、1学期終了の作文があたかも与えられた仕事であるかのようにぶっきらぼうに言葉を継ぐんだ。
その青さが、かっこよく見えた。
「あの子テニス部?」
修了式が終わって体育館がざわめく中、隣の小麦肌の子に聞いてみた。
「千里、あ、作文呼んでた子でしょ?そうそう、軟式テニス」
千里、というらしい。私の知っている言葉がまた一つ増えた。熱い夏休みが始まった。
その青さが、かっこよく見えた。
「あの子テニス部?」
修了式が終わって体育館がざわめく中、隣の小麦肌の子に聞いてみた。
「千里、あ、作文呼んでた子でしょ?そうそう、軟式テニス」
千里、というらしい。私の知っている言葉がまた一つ増えた。熱い夏休みが始まった。